清算・決済制度

清算機関の主要な機能としては、債務引受け、ネッティング、決済指図、決済保証の4つがあげられます。

債務引受け

有価証券の売買が成立すると、売方には証券の引渡債務と代金の受領債権が、買方には代金の支払債務と証券の受領債権が発生します。清算機関は、売方・買方の双方から、相手方との間に発生した債務を引き受けるとともに、それに対応する債権を取得することにより、売方と買方との間に入って売買成立により発生した債権・債務の当事者となります。

清算機関が債務引受けを行うことにより、決済の相手方が原始取引相手方から清算機関に置き換わるため、各清算参加者は取引相手方の信用リスク(売買の成立後、売買相手方の破綻などにより相手方が予定どおり決済を行わず、損失を被ってしまうリスク)を意識せずに取引を行うことが可能となります。

また、決済の相手方が清算機関に一元化されることにより、清算参加者における決済事務の効率化が図られます。

ネッティング

清算機関で清算される取引の決済では、決済数量を削減するために「ネッティング」が行われます。ネッティングによって、複数の取引について売付数量と買付数量を相互に相殺(差引き計算)し、その差額を受け渡すことで、決済に必要な金額や証券の移動を最小限にすることができます。

決済指図

清算機関は、市場で成立した約定データに基づいてネッティング計算を行い、清算参加者ごとの決済数量を確定させたうえで、各清算参加者に決済数量を通知するとともに、決済機関に決済指図を行います(決済方式によっては、清算機関からの通知に基づいて清算参加者が決済指図を行うこともあります。)。

証券保管振替機構を利用した株式等の決済については、株式等の決済と資金の決済をリンクさせることにより、元本リスク(証券や代金を元本ごと取りはぐれてしまうリスク)を排除したDVP決済(Delivery Versus Payment決済:資金と証券の引渡しを相互に条件付けた決済方式)が行われています。

決済保証

市場で成立した有価証券の売買については、清算機関が債務引受けを行い債権・債務の当事者となるため、清算参加者が決済不履行を生じさせた場合でも、清算機関は他の清算参加者との決済を履行する義務があります。清算機関が決済の履行を保証することにより、市場参加者は安心して市場で取引を行うことができます。

日本証券クリアリング機構においては、清算参加者の決済不履行により損失が生じた場合は、当該決済不履行参加者が預託した清算基金等により損失を補填し、万が一不足する場合に市場による損失補償や日本証券クリアリング機構の剰余金、さらには、他の清算参加者に負担を求めるという、自己責任原則を基本にしつつ重層的な損失補償の枠組みを整備しています。