社外取締役インタビュー

JPXに対するイメージをお聞かせください。

取引所は一般的にはあまり認知されていない存在かもしれませんが、日本の企業活動に大きな影響力を持つ公共性の高い社会インフラです。直接金融市場の整備・発達が、日本の近代化と経済発展に果たした役割はとても大きいものであり、日本企業はしっかりした存在感のある取引所を通じ、大きなアドバンテージを得てきたと思います。日本企業にとって取引所に上場することは大きな夢であり、そういう意味でJPXはニューヨーク証券取引所やロンドン証券取引所に匹敵する代表的な取引所だと考えています。
 
2015年はコーポレートガバナンス・コードが策定され、企業統治改革元年と呼ばれる一年になりました。
どの企業も、自分たちの会社の経営理念や、取締役会のあり方、経営トップの後継者人事の考え方などについて改めて見直し、確立していくチャンスと捉えたのではないでしょうか。実際に最近では、企業経営に関する意思決定の迅速化、資本効率の有効性についても議論の高まりが感じられます。
 
コーポレートガバナンス・コードは、効率的な経営に関する企業統治のあり方を問うものですが、肝心な点は、その目的が攻めの経営を行い、稼ぐ力を向上させることにあるということです。今は、世界の様々な動きがすぐに日本の企業に大きな影響を及ぼす時代です。さらに、少子高齢化や情報関連技術の急速な発展などにどう対応していくか、企業のトップは緊張感をもって考えなければなりません。こうした環境の中、今後、コーポレートガバナンス・コードが実際に機能しているかどうか、内外の投資家や株主から注視されていくことでしょう。
 
コーポレートガバナンス・コードの策定を通じ、JPXは日本企業の生き残りに関し重要な役割を果たしたと考えています。今後、この役割はますます大きなものとなるはずです。

社会インフラとしての役割が大きいJPXですが、JPX自身の企業価値向上を果たすためには何が必要になるとお考えでしょうか。

企業に対する資金調達、あるいは投資家に対する資産運用の機会提供は、これから日本が豊かな社会に進むために欠かせないものです。経済活性化を担う社会インフラとして、まず、JPXの信頼性、公共性をより高めることができるかどうか、提供する商品やサービスがお客様である利用者の求める価値を提供できているかどうかを検証することが必要です。
 
次にJPXには、上場会社を魅力的で、安心して長期的な投資を行うことができる企業として育成することが求められます。投資対象として魅力のない企業には投資は行われません。コーポレートガバナンス・コードを浸透させ、上場会社が企業価値を高める後押しをしていくことが重要になるでしょう。
 
3点目は、IPOや起業を志す人へのサポートです。もちろん、上場会社の質を維持するため厳格な審査は必要ですが、上場する機会をどう増やすか、例えばもう少し上場しやすくする方法があるのではないかといった検討も収益性を高める大きな要素ではないでしょうか。
 
4点目は、個人投資家層の拡大です。日本には、個人の資産運用の活性化促進という大きなテーマがあります。足元では配当性向が上昇し、配当利回りも高水準で推移していることから、株主還元の面で投資魅力は高まっているといえます。このような投資情報を積極的に発信しながら市場を適正に整備していくことは、有効な手立てになると思います。また、投資家のリスク許容度に応じた多様な金融商品の開発も重要です。
 
最後にJPXが存在するアジアに目を向けると、アジアの企業はかつての日本企業のように大きく成長していくと考えられます。JPXはアジアの国々と長期にわたり繁栄していく関係を目指していく必要があります。そのためには、日本国内の資金供給力をアジア諸国の企業の資金需要と結びつけていくという役割を担っていかなければなりません。日本の企業、そして経済が成長してきたのには、取引所が一つの礎になっています。同じように、アジアの中でJPXが存在感を高めていくことが必要ではないでしょうか。
 
これらの取組みによって、社会にとってかけがえのないインフラとして、企業や投資家が魅力を感じる存在になる。それを実現してこそ、JPXはアジアで最も選ばれる取引所になると私は考えています。

ご自身の企業経営のご経験を踏まえて、優良な企業の条件はどのようなものとお考えでしょうか。

企業の経営者にとって、10年先、20年先を見据えながら企業を成長させ、その価値を高め、次の世代に託していくことが最も重要です。
私は、企業価値とは次の3つの総和からなると考えています。顧客価値、社会的価値、そしてその両者を高めた結果としての経済的価値です。日本に古くからある近江商人の「売り手よし、買い手よし、世間よし」の精神と通ずるものがあると思っています。
 
世の中は変化し続けており、常にお客様に必要とされる商品やサービスを提供し続けていかなければなりません。そして、地域・社会から信頼されかけがえのない存在になることが重要です。世の中から必要とされない企業はすぐ淘汰されてしまいます。さらに多様な人材を育成する風土を持っていることが事業の成長につながっていきます。
これらの要素のどれ一つ欠けることなく存続していける企業が、優良な企業といえるのではないでしょうか。