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第2回「企業編」

日時 2011年12月13日(火) 15:30~17:00

要旨

1. データでみる法人税収の状況

東京大学大学院法学政治学研究科教授 増井 良啓氏

日本の法人税収は、2008年以降ふたたび減少し、2009年度は約8.5兆円であった。法人税の確定申告データをみると、法人数と所得金額のほとんどは、株式会社(以下「会社」)が占めている。法人税率は、法人税(基本税率30%)と地方法人二税をあわせると、40%を超える。2010年12月の税制改正大綱は、5%の法人税の税率引下げと課税ベースの拡大を盛り込んだ。

2. 法人税制をとりまく理論

法人税の必要性については、個人所得税を補完するために会社段階で課税するものと説明されている。ところが、個人所得税と法人所得税を併存させると、事業形態・配当政策・資金調達などに対するバイアスが生ずる。そこで、それらのバイアスを除去するために、各国でいろいろなやり方が試みられてきた。

会社を法人税の納税義務者とするのは、会社が情報の集積点であるからである。つまり、個人株主のそれぞれに課税するよりも、執行コストが小さくなり効率的な徴収が可能になるからである。現行法上、法人税の課税ベースは、「株主の眼からみたリターン」として構成されている。そのため、株主と会社との間の取引は資本等取引とされ、損益取引から区別される。

法律上、内国法人に対しては居住地管轄に基づき全世界所得に課税し、外国法人に対しては源泉地管轄に基づき国内源泉所得に課税する。これを経済的にみれば、外国の株主との居住地国との関係で、日本の法人税法は「源泉地ベース」の課税であるということができる。

 

3. 日本の法人税制の歴史

日本における法人所得の課税は、1889年に始まった。第二次大戦後、法人税は基幹税となった。1996年の税制調査会法人課税小委員会報告は、税収中立を前提として課税ベース拡大と税率引下げを提言した。その後の15年間、法人税制は改革に次ぐ改革を経た。2010年の税制調査会専門家委員会国際課税小委員会の「論点整理」は、課税確保と通商拡大の両立が重要であるとしている。

 

4. 今後の課題

今後の課題として、国家間で税制の競争が進むことへの対応、多国籍企業のビジネス・リストラクチャリングによる無形資産の国外流出への対処、「内国法人の全世界所得課税」という原則の修正、地方法人二税の改革などがある。

  • 本要旨は、当社において作成いたしましたが、文中の意見にわたる部分については、講師の個人的見解であることをお断りいたします。
 

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