信用取引の権利処理

 

信用取引で買い付けた場合には、証券会社はその買付株券を担保として拘束し、これを他の信用取引で売付けを行う顧客に貸し付ける、あるいは証券金融会社に貸借取引で融資を受けるための担保として差し入れます。証券金融会社ではこれを他の貸株申込みのあった証券会社に貸し付けるため、信用取引で当該顧客が買い付けた株券がどれなのかを特定することができない制度となっています。同様のことから、顧客が現引きにより決済する場合に特定の株券を渡すことはできないことから、あらかじめ同種同量の株券を渡すこととしています。

信用取引で売付けを行った場合には、顧客は証券会社から借り入れた株券を売却しているのですから、借り入れた株券と同一のものが顧客の手元にあるはずがありません。このため、信用取引で売付けを行った場合においても、顧客が弁済する株券は同種同量のものでよいこととしているわけです。

ただし、同種同量の株券の授受で良いと言ってもその銘柄に帰属していた配当請求権や新株予約権等が具体的に株券から分離独立した権利として発生する場合、すなわち権利落ちとなった場合には、分離した内容が持つ利益が経済的に評価されるものであれば、その分だけ株式の評価額が低減されることとなります。このため、権利落ち以降に、信用取引で買付けていた顧客が借り入れていた資金を弁済した場合、同種同一株数の株券を渡されても権利分は既に剥離してしまっているので、買付けを行った時点のものと同種ではあっても同量のものとは言えません。したがって、この部分については何らかの補償を受ける必要があります。

また、同様に、信用取引で売付けを行った顧客が、権利落ち以降に借り入れていた株券を弁済する場合は、剥離してしまった分に相当するものを別に補償しなければ決済を完了することができません。

以上のように、信用取引を行っている銘柄について配当請求権や株式分割等に係る権利落ちが行われた場合には調整が必要であり、この調整を「信用取引の権利処理」といいます。

 

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分割比率に応じた買付(売付)数量及び買付(売付)価格の調整を行う銘柄
入札等に基づく買付(売付) 価格の調整を行う銘柄