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飲食業を通じて社会に多大なる貢献を

株式会社エー・ピーカンパニー
米山 久

居酒屋から生販直結型ビジネスへ

米山 久(株式会社エー・ピーカンパニー)インタビュー写真

 2001年の設立以来、破竹の勢いでファンを増やしてきたエー・ピーカンパニーの居酒屋チェーン。業界平均のリピート率が約30%という中、同社のリピート率は55%と飛び抜けて高いのが特徴だ。現在、128の店舗網を向こう8年で400店舗に増加させる計画も進行中と、その勢いは衰えを知らない。売上高はここ2年、既存店だけでも前年比103%で推移。群雄割拠の市場で確かな歩みを進めている。

 同社が運営する『塚田農場』『四十八漁場』といった人気居酒屋チェーンに共通するのは「生販直結型」のビジネスモデルだ。卸売業者から食材を買い入れるのではなく、自社で農場や加工場、漁船までを所有し、生産から販売までを一括して行う。第一次産業から第三次産業まで、全てを手掛けることで圧倒的なコストカットを実現。九州・宮崎の地鶏生産者や漁師と組み、現地直送の新鮮な食材を驚くほどの価格で提供できるシステムが強味だ。このようなビジネスを確立するに至った経緯について、米山久社長はこう説明する。

「居酒屋をスタートさせた時は、どう利益を上げていくかということだけを考えていました。だから当初は、通常の半値で料理を提供して、まずはお客様を呼ぼうと思った。予想通り人気は出てきたものの、利益は上がらない。そこで考えたのがとにかく安く仕入れようということです。
でもここまでは誰でも考えることですよね。案の定、仕入れ価格を下げてもらう交渉は思うようにいかない。それなら、自分で生産にも関わってしまえばいいだろうと考えるようになったのが始まりです」

 この発案を起点に生産者から直接、食材を買い付けるビジネスモデルを実践。徹底的な利益追求と生産性の向上を動機付けとして会社は順調に成長していく。だが、年商15億円を突破した頃、米山さんの胸中に突如、パラダイムシフトが起こった。

「それなりに充実感はありましたが、何か物足りない自分に気付いた。これ以上会社を成長させるには何か強烈な原動力が必要だと思うようになったのです。そこで行き着いたのが"社会性"というキーワードだった」

社会に貢献してこそ真の企業だ

  居酒屋チェーンを軌道に乗せる以前、米山さんは複数の起業を経験していた。不動産業、ウェディングプロデュース業、ダーツバーの運営など、どれもそこそこの成功を収めてはいたが、大成功と呼べる結果を残せないでいた。

「これまでの事業で感じていたのは、単発で大きな利益を上げる時期はあっても、それが持続して大きな成長に結びついていかないという一種のフラストレーション。ひたすら利益だけを追求しても限界があるということにようやく気付いたのです。じゃあ、なぜ今までは会社を真の意味で発展させ、継続していくことができなかったのか。そこに欠けていたのは"社会性"なんじゃないかって。社会と密接にリンクし、社会に貢献するという理念がなければ事業は発展しないと」

 それまでは、とにかく売上げを伸ばして全員でハッピーになろうと旗を振り続けていたが、スタッフのモチベーションに物足りなさを感じてもいた。ところが、事業を通じて"社会に貢献する"というミッションを掲げるようになって以来、全員の眼の色が変わっていったのだ。

「それまで会社で行ってきたことによって、どんな結果が生み出されてきたかを改めて考えてみました。仲介業者を通さないことで僕たちが安く食材を手に入れられるだけでなく、生産者側からすれば食材が高く売れるというメリットも生まれていた。更に加工場や処理施設を現地に作ったことで、例えば人口5万7,000人の宮崎・日南には100人の雇用も生まれていた。もちろん、店舗ではお客様に新鮮で安価な料理を提供できるというメリットも生んでいる。つまり、僕たちの事業の拡大が、実は社会に貢献することにもつながっている。この事実をスタッフに認識してもらい、ミッションとして明確に示したことで、会社全体のモチベーションがグンとアップした。社会に貢献してこそ真の企業なんだと、僕自身がつくづく感じるようになったのです」

米山 久(株式会社エー・ピーカンパニー)インタビュー写真

伝えたいのは、お皿に乗るまでのリアリティのあるストーリー

米山 久(株式会社エー・ピーカンパニー)インタビュー写真

 エー・ピーカンパニーの居酒屋チェーンが評価を得ている最大の理由は、顧客へのプレゼンテーション能力だ。キーワードは「生産者の思いを熱く伝える」こと。米山さんが大切にしているのは、お皿に乗るまでのリアリティのあるストーリーである。

「99%の飲食店は、お皿の上の商品開発に留まっていて、よくても食材の産地を表示するくらい。卸売業者から仕入れる従来のプロセスでは、そんなものです。でも、僕たちは誰の手で、どんな工夫を持って食材が生産され、それが料理としてどうお皿の上に表現されているかを、お客様に伝えることにこだわり、それをプレゼンテーションしています」

 メニューには、生産者の思いが伝わるような写真やストーリーを掲載している。どのような生産現場から食材が運ばれてくるかを熟知した店舗スタッフは、顧客からの質問に迅速に、そして生き生きと受け答えをする。

「年に2回の全社イベントでは、社員、800人を超えるアルバイトさんを集め、生産者の方々に、日々、どのように農業や漁業を行っているかを語っていただき、その思いを共有します。丹精込めてひな鶏を育てる話や、荒波の中を漁に出て行く苦労話を聞いて、僕たちはその食材の大切さや希少性、おいしさを知る。また、現場に出向いて生産者の苦労を知った若手社員が、アルバイトさんに生産の実態やおいしさの秘密を伝える機会もあります。こういう風土こそが会社全体のミッションへの共感を高め、エネルギーを生んでいる。事業の中心はここにあると全てのスタッフが自覚している。みんなが使命感によって突き動かされているのを感じます」

密なコミュニケーションから生まれる新しいアイデア

米山 久(株式会社エー・ピーカンパニー)インタビュー写真

 エー・ピーカンパニーの事業が拡大するにつれ、地方の雇用は増大し、生産者のモチベーションも向上していった。

「僕たちと同様、生産者の方々のモチベーションもお金だけで上がるものではありません。そして、彼らはただ生産して売るだけを繰り返すことに疲弊していました。僕たちは生産者へのフィードバックを大切にしていて、どんな料理が喜ばれているかとか、次に求められるのはこういう食材かもしれないなど、現場のニーズを提供しています。それによって、生産者の方々からやりがいが高まったという声をよく聞きます。僕たちと契約をしてから『これならやっていける』と、子供が継いでくれたといううれしい話もあります」

 生産者とコミュニケーションを密に取ることで、「アイデア」という重要な副産物も生まれるようになった。

「ある時、地鶏農家から『この周辺の産地で柚子も作れるんだけど、何かできないか』という提案がありました。『じゃあ、自家製の柚子胡椒を作ろう』とアイデアが展開して、今、同じ場所で育てた地鶏と柚子胡椒を、一つの料理として提供しています。こういう発想は、普通は出ないでしょ。おいしい料理の新しい提案が店舗からも生産者からも生まれる。これがうちのブランド力になっています」

 シンガポールを皮切りに海外へも進出。益々血気盛んな米山さんに、今、思い描く夢を尋ねるとこんな答えが返ってきた。

「社会に貢献するという使命感を得てからは自分の夢なんてことを考えなくなりました。今、僕が見ているのは、日本の食産業を変えるという大きな方向性です。まずはいち早く売上げ1,000億円を突破して世の中への影響力を持つこと。そして僕たちのビジネスモデルをより多くの人に知ってもらい、業界内外でこの手法をモデリングしてもらって、みんなで世の中を良い方向に変えていきたい」

 ゴールはおろか、まだスタートラインに立ったばかりだという米山さん。趣味で続けているトライアスロン同様、全力で前進する日々が続いていく。

(文=宇都宮浩)2013/02/21

プロフィール

米山 久(株式会社エー・ピーカンパニー)プロフィール写真
米山 久
株式会社エー・ピーカンパニー  代表取締役社長
2001 年
エー・ピーカンパニーを設立
無国籍創作料理を出すダーツバーを経営
2004 年
地鶏専門店「わが家」を開店
2006 年
宮崎県日南市に自社養鶏場開設
2007 年
地鶏専門店「塚田農場」開店
2011 年
自社漁船での定置網漁を開始
2012 年
東証マザーズに上場

会社概要

株式会社エー・ピーカンパニー
株式会社エー・ピーカンパニー
  • コード:3175
  • 業種:小売業
  • 上場日:2012/09/25