「仕方ない」の思い込みをビジネスへ変えていく発想力と技術力を武器に

「仕方ない」の思い込みをビジネスへ変えていく発想力と技術力を武器に

株式会社ファインデックス
相原 輝夫

知人の病院長に頼まれて医療機関用システム開発の世界へ

相原輝夫(株式会社ファインデックス)インタビュー写真

 ファインデックスは、自社開発による医療システムを病院に提供し成長してきた。常に高い安全性と安定性の求められる医療システムの分野において、同社のシステムは大学病院を中心に、圧倒的なシェアを誇っている。
 ファインデックス代表取締役社長の相原輝夫さんは、大学卒業後に大手電機メーカーの系列会社でシステムエンジニアとして開発を担当した後、起業を目指して地元の松山市で準備をはじめた。そんなとき、知り合いの病院長から「院内のシステムを見てほしい」と相談された。これが、医療分野のプログラムを手がけるきっかけになった。

 当時、大型コンピュータによるレセプト(診療報酬明細書)システムを導入する病院は増えていたが、レセプト以外にはまったく使われていなかった。病院長に話を聞くうちに、院内では単純な事務作業が多いことがわかり、それらをコンピュータで処理することを相原さんは思いつく。「こんなシステムをつくってみた」と業務改善のための提案を次々に行い、現場の職員に大歓迎された。
 そのうち、松山市医師会から「おもしろいことをやっているね」と声がかかり、評判は愛媛県医師会へと広がっていった。そして、オリジナルのレセプトシステム(ORCA)をつくろうとしていた日本医師会から、プロジェクトメンバーの一員に指名された。

 取引先が拡大していったのには、誰もが「不便だけど仕方ない」と思っていることを発見し、それを打開する新しいシステムを開発することこそが、同社のプレゼンスなのだという考え方にあるだろう。そして、一連のシステムの中で大ヒットしたのが、2003年にリリースした医療用データマネージメントシステムの「Claio」(クライオ)だ。

コンサル力を磨き、付加価値にして成長

相原輝夫(株式会社ファインデックス)インタビュー写真

 大きな病院ほど、エコーや内視鏡といった検査機器を数多く備えている。それらの検査データはパソコンで確認できるが、各検査機器メーカーの専用システムで管理されるのが普通だった。つまり、ある患者の検査結果を見るとき、エコーの検査結果は、エコーのシステムにログインして患者番号を入力、内視鏡の結果もまた、内視鏡のシステムにログインして患者番号を入力しなければならないといった具合だ。
 面倒極まりないが、「メーカーが違うのだから仕方ない」と、誰もがその不便さを諦めていて、それをおかしいことだとは思っていなかったという。
 相原さんは、ここに目をつけた。

「検査機器メーカーの専用システムでなければ管理できないと、システム会社も、病院も、みんなが思い込んでいたんです。でも、検査データをデジタル化することが可能なのだから、技術さえあれば1つのシステムで、複数の検査データを管理することが絶対にできるはずだと考えたんです。」
 
 こうしてClaioが誕生した。
 ある患者のカルテを開けば、エコーの画像も内視鏡の画像も、Claioですべてを見ることができるようになった。これは革新的なシステムだった。
 病院経営の面からもメリットが多かった。10種類の検査機器があれば、10台のサーバがあり、10人のシステムエンジニアが出入りするのが当然だったのが、Claioで一元管理すればサーバは1台、システム管理も1社だけになる。コストが3分の1程度に圧縮できたのだ。
 Claioの評判が評判を呼び、病院間でファインデックス(当時、株式会社ピーエスシー)の知名度は大規模病院を中心に高まっていった。

「病院とは、医療現場のことも、システムのこともわかっている社員が『コンサルタント』として関わっています。病院が何に困っているのかを聞き出し、我々が何を提供し、それをどう解決できるかをきちんと提案する。病院から見れば、『わかっているな、いい提案をしてくれるな』となる。病院と対等に話せるという強みがあるのです」

 コンサルタントとして病院の相談にのるなかで、「どうすればもっと効率的に業務が進められるのか」「どのようなデータを集約しておけば経営改善にいかせるのか」といった現場の「不便」や「不満」をいち早く発見し、それをシステム化して解決していくことで同社はリーディングカンパニーに成長した。Claioは、現在、国立大学病院への導入で全国の7割以上のシェアを誇る。

上場は、責任ある企業に成長するために不可欠だった

相原輝夫(株式会社ファインデックス)インタビュー写真

 ファインデックス(当時、株式会社ピーエスシー)が、大阪証券取引所JASDAQ(スタンダード)に上場したのは、2011年3月のことだ。その3年後に、東京証券取引所市場第一部に市場変更し、社名も現在の「株式会社ファインデックス」に変更した。
 起業当初は「上場することなど、まったく考えていなかった」という相原さん。では、どうして上場を目指したのだろうか。

 「当時の目的は非常にシンプルでした。まずひとつには、上場すれば、社会的な信頼が得られるということ。我々は、公益性の高い医療機関を支える仕事をしているので、信頼は大切です。もうひとつは、優秀な人材を採用するためです。だから、そのときは『上場もありだな』というくらいの気持ちでした」

 しかし、その道は想像以上に険しかった。

 「上場するのがこんなに大変だとは思いませんでした。というのも、我々の会社は、上場を意識するまでは、大学のサークルのような雰囲気だったんです。夜遅くまで車座になって、あれをやろう、これをやるとおもしろそうだとかワイワイやって。だから、熱心な社員が、『調査したいことがあるから、今晩は残っていいですか?』と言えば、『いいよ』と言う。でも、上場を目指すなかで、それが許されなくなりました。労働基準法で残業時間の上限が決まっているし、社員が望まなくとも夜10時以降は割増しの残業代が発生する」

 上場審査に向かう過程で、サークルのような楽しい雰囲気もなくなってくると、「こんなふうにがんじがらめになるなら、もう上場なんてしなくていいのではないか」という声が社員からあがったという。
 
 社員と一緒に苦労を乗り越えて上場を果たした今、当初の目的とはまったく違った効果が得られたという。

 「振り返って見ると、絶対にやっておいてよかったと思います。日本中の医療機関を支えるという仕事をする上で、コンプライアンスやガバナンスは絶対に必要なんです。会社は成長しているのに、あのままサークルのノリで続けていたら、絶対にどこかで取り返しのつかない事故を起こしていたはずです。だから『上場』というのは、我々のような会社が、本当の意味で責任ある企業になっていくために、どうしても避けられない勉強でした」

 上場とともに、社員の意識も変わったと相原さんは言う。

 「初期のころは、仕事が好きでしょうがない、プライベートも必要ない、といったタイプの人しか会社に残れなかったんです。プライベートも大切にしたいという人も当然いるわけですが、そういう人にとっては居心地がよくなかったかもしれません。
 労働基準法を厳密に守らなくてはいけなくなり、社員同士でみると『たくさん残業している人がえらい』という雰囲気の会社だったのが、『会社に労働を提供するのは一定の時間ですよ。それ以外はプライベートに使いましょう』という会社からのメッセージを明確にしたことで、みんなが働きやすい会社に変わることができたと思っています」

 上場によるメリットはまだある。

 「次に何か大きなことをやりたいと思っても、上場前は、金融機関から資金を借りるしかなかったのです。でも、東証というマーケットがあることで、出資者を募って資金を集めることができる。今までは、幸い、自分たちの持っている資金で回してこられたけれど、次に大きな一手を打ちたいと思ったときに、投資家のみなさんにご理解いただければ、それができるわけです。我々が頑張れば、株価も上がっていき、投資してくださったみなさんにも恩返しができる。そういう楽しみもありますね」

医療分野で培った文書作成管理システムを他業種に展開

相原輝夫(株式会社ファインデックス)インタビュー写真

 多くの医療機関向けシステムを開発しているファインデックスの製品で、Claioと並んで注目されているのが、2010年にリリースした病院内でのドキュメント/データ管理システム「DocuMaker」(ドキュメーカー)だ。
 手書きカルテがすべて電子カルテに置き換わったとしても、病院内で、紙文書がなくなることはない。それならば、その紙文書や、様々なフォーマットのデジタル文書を一元管理し、さらにデータベース化することで二次的用途にも利用することを可能にした。

 「病院内では、ワードで文書を作成し、プリントアウト。原本を保存すると同時に、その控えを患者のファイルに保存するといった煩雑な事務作業がいっぱいありました。DocuMakerは、院内で必要な書類がすべて書けますし、過去のデータの再利用や分析が可能になります。このシステムも好評で、多くの病院で採用されています」

 そして、ベッド数500床以上の大規模病院の半数が顧客となると、ファインデックスは医療以外の業種へ目を向ける。それが、他業種でも使える「DocuMaker Office」だ。
 2015年の電子帳簿保存法の改正によって、契約書などのデジタル化に拍車がかかった。とはいえ、なかなか紙の書類や契約書はなくならない業種も多い。例えば不動産業や建設業など、そして最たるものが自治体だ。これらの業種への導入はすでに始まり、その他の業種からの問い合わせも多いという。長年、医療業界の信頼に応えてきたファインデックスへの信頼は厚く、このDocuMaker Officeでの成長が大いに期待されている。

 2017年1月、ファインデックスは本社機能を東京に集約した。相原さんに、地方で起業するということについて伺った。

 「小さな規模であれば、地方は起業しやすいと思います。優秀な人材を少数集めるということでは地方のほうが有利ですし、通勤時間が短くて、労働環境がよいというのも地方のメリットですね。
 ただ、会社の規模が大きくなると、優秀な労働力を集めにくくなります。お客様についても同じです。お客様の層は大都市圏を中心に広がっていますし、東京は時間距離が圧倒的に近い。そういうことで、我々は東京に本社を移さないといけないステージになったのだと判断しました」
 
 プライベートの楽しみを相原さんに尋ねると、「ビジネスが一番の楽しみ」だという。「プライベートは、子どもと過ごす時間がいちばん長いですね。たまには一緒に勉強をしたり」と話す相原さんの眼差しに柔和な光が差したのが印象的だった。上場によってプライベートの時間を大切にするようになったのは、社員だけではなく相原さんも同じなのかもしれない。

(文=川崎純子 写真=イシワタフミアキ)2017/02/24

プロフィール

相原 輝夫
株式会社ファインデックス 代表取締役社長
1966 年
愛媛県松山市生まれ
1990 年
愛媛大学卒業 四国日本電気ソフトウェア株式会社に入社
1993 年
起業及び事業を法人化(株式会社化)
1994 年
代表取締役社長に就任、現在に至る

会社概要

ロゴマーク
株式会社ファインデックス
  • コード:3649
  • 業種:情報・通信
  • 上場日:2011/03/23