成長の原動力は、「内部成長」と「外部成長」の両輪

成長の原動力は、「内部成長」と「外部成長」の両輪

株式会社トライアンフコーポレーション
小澤 勝

目の前のお客さまに、結果以上の満足を感じていただく

小澤 勝(株式会社トライアンフコーポレーション)インタビュー写真

 IT投資が企業の業績を大きく左右する時代。ITパートナーの選択は、企業の優位性を決定する極めて重要な要因のひとつだ。そのIT化を牽引するソフトウェア業界は、日進月歩で技術革新が進み、AIの研究開発からレガシーシステムの保守まで様々なプレイヤーが群雄割拠している。実際、国内のソフトウェア会社は現在約22,000社も存在する(平成27年特定サービス産業実態調査確定値)。

 このような市場において、近年、急速にプレゼンスを高めている企業がトライアンフコーポレーションだ。同社グループは、コンピュータシステムの開発、保守などの委託業務を請け負うシステム・サービス・ビジネス及び自社ソフトウェア製品の開発、販売、保守を行うシステム・プロダクト・ビジネスで高い収益を上げる。前者は、同社グループ連結売上高の大部分を占める主力ビジネスであり、後者においては、全国約1,500社への販売実績を誇る中堅企業向け基幹業務アプリケーション「みまさか」シリーズが象徴的な存在になっている。

 熾烈な競争が繰り広げられているソフトウェア業界でいかに差別化を図っているのか、代表取締役の小澤勝さんに話を聞いた。
「差別化には、一般に、特定の技術や業種に特化する道があります。しかし、数千もあるソフトウェアハウスの中では、中途半端な選択と集中では顕著な差別化を図ることはできません。そこで私達が行き着いたのは、サービス業としての普遍的な理念を追究し、目の前のお客様に対する満足度を徹底的に向上させることでした。どんな仕事でもプロフェッショナルの立場から責任をもって果たし、特定のお客様にとって不可欠な存在となること。そうすることで、ニッチ市場で強い競争力を得られると考えました」

 システムエンジニア(SE)の経験を持つ小澤さんは、顧客の満足度は、問題解決の結果だけでなく、その過程の良し悪しが大きく影響すると考えてきた。例えば納期までにバグが無いソフトウェアを完成させるなど、プロとして出来て当然のことについて、顧客はいちいち褒めてくれない。差がつくのは、サービスの現場において、高いレベルのサービス力で接し続けることができるかどうかなのだ。そこで、小澤さんは新人SEの教育に充分な時間をかけ、技術力ばかりでなくサービス力を向上させることに力を入れてきた。顧客からフィードバックを収集し、何年もかけてサービス提供のプロセスを改善。プロフェッショナル集団としての力を蓄えてきたのだ。技術力のレベルアップばかりに注目しがちなソフトウェア業界において、こうした手法は確かに功を奏し、トライアンフコーポレーションは従業員1名の創業から10期で売上高10億円超に到達した。

M&Aという武器でスピーディな成長を目指す

小澤 勝(株式会社トライアンフコーポレーション)インタビュー写真

 トライアンフコーポレーションは、M&Aを重要な経営戦略のひとつに位置付けている。同社は情報技術事業の他にも、機器製造、不動産など多様な事業を営む関係会社を有する純粋持株会社だが、その多くは株式の取得や合併によって取得してきた。

「創業から10期となる2008年までは順調に成長してきましたが、いわゆるリーマンショックによって2009年から2010年にかけて売上高がピーク時の半分以下にまで下落しました。そこでどうしたら再生できるか、そして将来再び不況があっても業績を安定化する工夫ができないか試行錯誤したのです。その中で最も成功したのがM&Aでした。当時、不況で傷ついた会社は沢山ありましたので、それらを買収して連結売上規模を大きくし、企業グループ全体の力によって業績回復の早期化を目指すことにしました」

 2011年、トライアンフコーポレーションは、事業の全てを子会社であるインフォメーションサービスフォース株式会社へ譲渡して純粋持株会社となった。同時に、株式会社ユース(前述の「みまさか」の開発、販売元企業。2010年にトライアンフコーポレーションが株式取得により完全子会社化)をインフォメーションサービスフォースに吸収分割し、経営管理の効率化も図った結果、同社グループの情報技術事業は大きく成長し、同社にとって最初の本格的なM&Aの成功事例となった。この買収を端緒にトライアンフコーポレーションは翌年以降もM&Aを繰り返しているが、その狙いを小澤さんは次のように語る。

「ユースは創業30周年を迎える老舗企業で、自社開発したソフトウェアプロダクトを保有していた一方、インフォメーションサービスフォースはサービスに特化していました。また両社の平均年齢もユースが37歳、インフォメーションサービスフォースが27歳と離れており、ユースには経験豊富な人材がいる一方、若さと勢いにおいてはインフォメーションサービスフォースの人材に大きなポテンシャルがあった。これら多くの違いがある2社を従業員や取引先の理解を得ながら合併させるのはとても苦労しましたが、それを成功させたことで、インフォメーションサービスフォースはその後のM&Aの受け皿として重要な役割を担えるようになったと思います」

 その後も、2013年に株式会社アプライドテクノの事業を買収、翌2014年には株式会社エム・プランニングと合併。また同社のM&Aは情報技術事業の例だけに留まらない。2013年に子会社化した「エコン」は、「パワートロン」という位相制御型ソフト始動器を主力製品とする機器製造事業だ。これはモーターの始動制御装置で、主に船舶のプロペラのモーターのスターターに採用されている。こうしたM&Aの結果、トライアンフコーポレーションの連結売上高は、2014年および2015年の2期連続で創業以来過去最高を更新した。

「私たちは、偉業を志す企業連合(United Enterprises of Triumph)を編成することを目指しています。その目的は、企業経営の永続と企業価値の最大化です。一社ではできないことをグループで実現し、一個人では成し得ない偉業(Triumph)を残すことが、弊社の経営理念なのです」

 サービス力の向上などによる既存事業の内部成長に加え、M&Aによる経営資源の調達とその合理化による外部成長。これら両輪によって急速に成長し続けるトライアンフコーポレーション。同社は情報通信に分類されているが、実際にはハンズオン・スタイルのプライベートエクイティのような存在で、とてもユニークだ。

小澤 勝(株式会社トライアンフコーポレーション)インタビュー写真

上場による経営の透明化が飛躍の分岐点に

小澤 勝(株式会社トライアンフコーポレーション)インタビュー写真

 トライアンフコーポレーションがM&Aによって成長し続けられた背景に、「株式公開」というキーワードは欠かせない。同社は、2011年にグリーンシート銘柄の指定を受けたのに続き、昨年11月にはTOKYO PRO Marketでの株式上場を果たした。戦略的に株式市場との対話を試みてきた目的について、小澤さんはこう説明する。

「M&Aの動きを本格化させた頃、日本のオーナー経営者の特殊なマインドに気付きました。欧米のオーナー経営者は、会社を売却した後のことは何も気にしません。ところが日本のオーナー経営者は、自分が手塩にかけて育てた従業員がどうなるか、懇意にしている取引先がどうなるのかといったことを心配する方が多いのです。そこで、企業経営の透明性を高めるため、株式公開を目指すことにしました」

 最初に選択したのは、未公開企業の株式流通市場であるグリーンシート銘柄の指定。多額の資金調達にこだわらず、企業経営の透明性向上や信頼度向上を優先した。実際、M&Aでは売り手の態度が明らかに変化。2013年には一年間で5社の買収を成約。中でも前述のエコンは複数の会社が買収希望の意向表明をし、コンペによってトライアンフコーポレーションが独占交渉の権利を取得した。グリーンシート指定企業として買収後も公平な経営が期待できることから、エコン側に歓迎されたという。

 その後、同社はTOKYO PRO Marketへ上場。同市場は市場第一部やマザーズ等と異なり、上場基準として株主数や利益等に係る数値基準がなく、取引所に代わって上場審査を行うJ-Adviserが上場適格性を柔軟に判断するため、準備にかかる時間もコストも比較的少なくて済む。また既にグリーンシートにおいて開示体制や内部管理体制等を整備していたため、本格的な準備開始から半年強で上場承認を得ることができた。

「TOKYO PRO Marketに上場した直後から、金融機関からの評価が大きく変化しました。取引金融機関が増え、社債発行など資金調達の方法が広がり、金利が有利になり、財務上の制約が大きく変わりました。優秀な人材の応募も増えていますし、従業員のモチベーションも上がっています。今後のM&Aにおいても成果に繋がると確信しています。一方で、TOKYO PRO Market は個人投資家が売買できないので流動性が低く、証券会社は公募増資の引受に消極的です。そうしたことから、ノンファイナンス上場に対して批判的な人は少なくありません。しかし、流動性の問題を除けば、上場会社としての実質的なアドバンテージに全く違いはありません。だから、TOKYO PRO Marketは、ファイナンス以外のメリットをリーズナブルに享受したいと思う会社に向いている市場だと思います。弊社の場合、グリーンシート制度の廃止後も企業経営の透明性を維持することが最大の目的だったので、TOKYO PRO Market の選択に迷いはありませんでした。今は、1日も早い市場変更を達成して、TOKYO PRO Market市場から本則市場へ出世する最初の事例となることを目指しています。そんな『偉業』を達成することが、市場関係者への恩返しになるのではないでしょうか」

常に長期的な視点に立って最大限のコミットメントを

小澤 勝(株式会社トライアンフコーポレーション)インタビュー写真

 10歳の頃に通っていた塾でコンピュータに出会って以来、プログラミングに夢中になり、SEとしてキャリアをスタートさせた小澤さん。創業後に、経営学を体系的に学ぶために一年間会社を休んで大学院へ通い、MBAを取得したという。経営のプロフェッショナルとして、企業経営には何が重要かを改めて聞くと、「継続」という答えが即座に返ってきた。

「会社はステークホルダーに生かされている存在です。よくある、会社は誰のものか、という議論に対して、私なら『会社に継続して貢献しているステークホルダー』と答えます。株主でも経営者でも従業員でも、組織に大きな貢献をするためには、継続的な関係が求められるものです。だから、会社は短期間で売買する株主よりも長期間保有する株主の意見を優先すべきだし、仕事をステップアップの場所程度に考えている従業員よりも一生の職場として考えている従業員を優遇すべきです。
 一企業にできる社会貢献には限界があります。当然のことですが、株主や従業員の数、売上高や利益の額を超えて貢献することはできないのです。ですから、より大きな社会貢献を目指すには、ステークホルダーの数を増やすこと、売上高や利益の額を大きくすること。そしてそのためには継続することが何より重要なのです。弊社グループは、中長期の事業計画として、上場後5年以内に連結売上高100億円の到達を目指しています。私は、この計画の立案者として最大限のコミットメントをしていますが、株主、役員、従業員、取引先などあらゆる立場から一人でも多くの人に参加して頂きたいと思っています。私一人では絶対に達成できない『偉業』ですから」

 今年3月、新たに不動産事業もスタートしたトライアンフコーポレーション。内部成長と外部成長の両輪による成長は、上場後も日々加速している。10年後どのような事業ポートフォリオになっているかという問いに、「その時の経営環境によるのでわからない」と小澤さんは答えるが、果てのない企業価値最大化の旅が継続していることだけは疑い無い。

(文=江川裕子 写真=高橋慎一)2016/08/22

プロフィール

小澤 勝(株式会社トライアンフコーポレーション)プロフィール写真
小澤 勝
株式会社トライアンフコーポレーション 代表取締役社長
1998 年
合資会社トライアンフコーポレーション設立 無限責任社員
1999 年
当社設立 代表取締役就任(現任)
2007 年
産業能率大学 経営情報学部 卒業
2009 年
早稲田大学大学院 商学研究科マネージメント専修 卒業
2009 年
インフォメーションサービスフォース株式会社 代表取締役就任(現任)
2013 年
エコン株式会社 代表取締役就任(現任)
2016 年
株式会社トライアンフアセットマネージメント 代表取締役就任(現任)

会社概要

ロゴマーク
株式会社トライアンフコーポレーション
  • コード:3651
  • 業種:情報技術事業及び機器製造事業
  • 上場日:2015/11/25