上場会社トップインタビュー「創」

100年成長し続ける企業を目指し、オンライン領域で新ビジネスを次々に創出

株式会社マイネット
上原 仁

上原 仁(株式会社マイネット)

上原 仁(株式会社マイネット)インタビュー写真

「経営者になる」という夢をコツコツ実現

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 スマートフォン(スマホ)の普及に伴い、インターネットの利用時間が年々増えている。10~20代は2時間以上を、スマホによるネット利用に費やしているという。用途の内訳をみると、SNSに次いで多いのがオンラインゲームだ(*1)。加えて、日本のゲームユーザーのボリュームゾーンは25歳から44歳だというレポート(*2)もあり、オンラインゲームは幅広い世代に受け容れられているということがいえる。

 ゲームアプリ市場の収益は過去2年で60%も成長しており、2018年もさらなる増加が見込まれている。そうしたスマホゲームの運営にフォーカスした事業を展開するのがマイネットである。『アヴァロンの騎士』『戦乱のサムライキングダム』など、運営するタイトル数は38タイトル(2018年6月末)を誇る。

「当社では、スマホゲームを長期にわたってお客さまに楽しんでいただけるように、メーカーからの買取や協業により仕入れたゲームを再設計したり、新機能を開発したり、あるいは魅力的なキャラクターを登場させたりして"バリューアップ"を行っています。このビジネスモデルを私たちは『ゲームサービス事業』と呼んでおり、『PARADE(パレード)』というレーベルで提供しています」

 こう語るのは、マイネット創業者の上原仁さんだ。2006年、「100年成長する会社」をスローガンに起業した。上原さんは小学5年生のときに松下幸之助さん*の伝記を読んで、「松下電器は人をつくる会社だ」という言葉に衝撃を受け、「自分は経営者になる!」と決めたという。思い込んだらまっしぐらだった。どうしたら夢が叶えられるか逆算し、思い描いた通りに高校・大学と進学した。
* 松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)創業者

「10代の後半になると経営の方法も考えるようになり、起業に興味を持ちました。そこで学生時代は、学生ベンチャーの家庭教師紹介会社でアルバイトをし、最終的には店長として、月商2億円の店舗を運営する経験をさせてもらいました。このような実体験があったので、大学卒業後に入社した日本電信電話株式会社(以下「NTT」)の販売研修で全国1位の成績をとり、希望したインターネット事業の開発に従事することができました」

 大学卒業後、すぐに起業を目指さずNTTに就職したことで、大企業の構造を知ることができ、インターネット黎明期に様々な事業やサービスに携わることができた。そして、本当の意味で社会のひとつのインフラを担う事業の矜持を植え付けてもらったことが、マイネットを東証市場第一部上場企業に成長させるための基礎となった。


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ゲームサービス事業にフォーカス

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 今でこそゲームサービスの運営会社として名を馳せているマイネットだが、創設当初はソーシャルニュースサイト『newsing(ニューシング)』の運営を軸に、さまざまなオンラインサービスを開発してビジネスを拡大していた。同社がゲーム開発事業に乗り出したのは、創業から6年目の2012年だった。

「オンラインゲームの表現がどんどんリッチになっていき、ゲームの世界の中で多くの人と人がつながることができるようになりました。ゲームこそがインターネットサービスの正当な進化形だと思い、ゲームの開発を開始しました」

 2012年9月に『ファルキューレの紋章』をリリースすると、国内Google Play人気カードゲームカテゴリーで同年11月の売上1位を獲得した。2013年2月には韓国語版をリリース。ゲーム産業で旗揚げした人間なら誰もが夢見るヒット作となった。しかし、3タイトルをリリースしたところで、上原さんはゲーム産業のビジネス構造に違和感を感じ立ち止まる。

「ゲーム産業は一部のビッグタイトルを除き、半年も経てばユーザーに飽きられ、5~8割のゲームが消えるといわれています。とくにスマホアプリはその傾向が強く、一発当てても赤字に陥ってしまうものが多い。そうなるといずれ配信が止まり世の中から消えていく。このようなビジネス構造ではクリエイターもユーザーも報われません。そこで、新しいゲームを開発するのはゲームメーカーに任せ、当社はリリースされたゲームをいかに長くお客さまに楽しんでもらえるかに特化した、『ゲームサービス事業』という新しいビジネスモデルを考えたのです」


 
 新しいビジネスモデルに変更するには、資金が必要になる。そこで上原さんは上場を決意した。2013年初夏のことだ。元々「100年成長する会社」を目指していたためビジョンは明快だ。そして管理体制についても、上原さんが大企業出身者であったことが功を奏した。

「NTTでの経験がありましたので、最初の取引から見積書、発注書、請求書はもちろん、押印記録簿も作成するなど、社内管理体制のベースはできていました。ただ公文書の保管、事業体系や労務面をさらに整備してもらうため、2013年にIPO担当者を2人採用。1人はCFOに、もう1人は財務担当に就いてもらいました」

ゲームを生き返らせ、寿命を延ばす

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 成長するネットビジネスには3つの原則があるといわれている。情報システムの設計や仕様をオープンにし、誰もがつながれるようにする「オープンアーキテクチャ」、参加者が増えれば増えるほどネットワークの価値が高まる「ネットワーク外部性」、そしてデータ保有こそが競争力だという「Data is King」だ。上原さんは、ゲームサービス事業はまさにこの3原則に則った事業だと考えた。2014年5月にゲームサービス事業をスタートさせると同時に、スマホゲーム提供企業と連携し、相互送客ネットワークの仕組みを構築した。翌年にリリースしたのが『CroPro(クロプロ)』である。

「ゲームAのユーザーをゲームBやCに送客するのです。クロプロのなかでユーザーがいくつものゲームを回遊するイメージです。BやCにとっては新たなユーザーが増えます。ユーザーが増えれば参加するゲームメーカーが増え、さらに集客量が高まり、クロプロの価値もどんどん上がっていく仕組みです」

 クロプロに参画しているゲームメーカーは98社(2018年5月末)。国内最大級の相互送客ネットワークだ。同社のタイトルもこのサービスに載せ、ネットワーク効果を享受している。

 そして、ゲームサービス事業の運営に不可欠なのが「Data is King」、ゲームユーザーのデータの蓄積だ。自社の38タイトルのゲームにおいて、どんなユーザーがどんなゲームを好むのか。どんなゲームをプレイするユーザーが、どんなキャラクターを好むのか。ユーザーデータを日々蓄積・分析して、より楽しめるゲームの開発につなげている。

「私たちには11万7,000点ものアセット(ゲームを構成する素材)があります。どのゲームにどんなアセットを注入すればユーザーにもっと楽しんでいただけるか、大量に蓄積したデータの分析結果を基にゲームを再構築するのです。例えばゲームAの人気キャラを、ゲームBやCに登場させることができるようにしています」

 ユーザー数が伸びなくなったゲームでも、マイネットに運営を任せると、寿命が延びる──。その実績が業界に伝わると、「運営を任せたい」とメーカーからゲームが持ち込まれるようになってきた。こうして後発企業が同じ仕組みをつくろうとしても容易には追いつけない盤石の体制を整え、2015年12月東証マザーズ市場に上場した。

「東証アローズで上場記念の鐘を鳴らした帰りの車で、『このまま東証一部に行こう』と上場担当の財務部長と握手を交わしてプロジェクトをスタートさせました。マザーズ上場のためのチームを解散することなく、そのまま市場変更の準備に入ってもらいました」

<参考>
(*1)「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」総務省情報通信政策研究所
(*2)「2017年アプリ市場総括レポート」App Annie

マザーズ上場で大型M&Aが可能に、さらには一部上場で社会に認められる存在に

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 マザーズに上場したことで多額の資金調達が可能になり、ゲームタイトルの買取、ゲームメーカーとのM&Aはさらに加速していった。

 上原さんが「大型のアクションが取れるようになった」と語る一例が、クルーズ株式会社のゲーム事業に関する新設分割会社「C&Mゲームス」(現 株式会社マイネットゲームス)の株式の取得だ。これによりクルーズが展開していたゲーム14タイトルがマイネットに移管され、売上高は2倍となった。

 さらに、グループ会社の事業シナジーを最大化させるために持株会社制へ移行。こうして事業拡大のための基盤を整えた同社は、大型タイトルの配信権を取得していく一方で、戦略子会社の設立などを推し進めて、マザーズ上場から2年で、東証市場第一部への市場変更を実現した。

「上場で得られた最大の効果は採用ですね。応募数が増えただけでなく、応募者層のレベルが確実に上がり、私たちが求める人材を採用できるようになりました。また、ゲームメーカーやタイトルを買収する際は、そのゲームのチームごと当社に来てもらっていますが、買収された側のメンバーの姿勢が変わりました。上場前は『なぜそんなところに買われるんだ』だったのが、マザーズで『それもありか』になり、一部上場で『バンザイ!』になりました(笑)。マザーズ上場時にも実感しましたが、本当の意味で社会から認められるというのはこういうことかと、一部に上場して改めて認識しました」

目標は「100タイトル100チーム」、そしてマーケットは世界へ

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 ゲームサービス事業の当面の目標は「100タイトル100チームへ」。その達成に向け、上原さんは歩を緩めることはない。

「私たちのビジネスが成功していることで同じようなサービスも登場していますが、私たちには先行者利益がある。さらに圧倒的なタイトル数を獲得し、ネットワーク、アセット、データという私たちの強みを生かしてバリューを最適化することができれば、この分野で私たちを負かすことはできないでしょう。いち早くそのような地位を確立したいと考えています」

 インターネットビジネスである以上、狙いは国内だけではない。ゲームメーカーも海外進出する動きが加速している。「当社も世界のマーケットで戦っていきたい」と上原さんは意気込む。

「日本のサービス能力、運営能力は、グローバルでも秀でています。たとえ同様のサービスを展開している企業があっても、十分勝算はある。すでに海外で5タイトルをローンチしており、その中には月商で数億円を売り上げるタイトルも出てきています。その状況を2回、3回と再現していくことができれば、商圏は世界に広がります。今はそのための仕込みをしているところです」

 海外ローンチを成功に導くために欠かせないのが、データ分析力の向上だ。そこで2018年3月、データ分析・AI活用サービスを提供するテクノロジーベンチャー株式会社mynet.aiを設立した。

「メンバー15人のコンピュータサイエンスの天才集団です。こんな素晴らしい人たちがきてくれたのも、東証一部に上場したからといえるかもしれません。mynet.aiでは蓄積された大量のデータを活用するためのAIエンジンや分析フレームワークなどの開発、大量データの分析による事業施策の提案という役割を担ってもらいます」

 当面は社内のビジネスで活用するための技術開発に注力するが、いずれは外販もしたい考えだ。

100年成長するための新規事業の創出

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 快進撃を続けるマイネットの攻めの姿勢は海外展開だけではない。スマホゲーム向けのマーケティング領域で新規事業を創出していくことを考えている。2017年2月に設立した株式会社ネクストマーケティングでは、2018年は、同社が開発する次世代マーケティングソリューション開発に積極的に投資。さらなる新規事業の創出を狙って、この分野でもゲームサービス事業同様、他社が追いつくことのできない地位の確立を目指す。

 さらに2018年4月にはマイネットグループのゲームサービス事業会社4社を合併し、ゲームサービス事業を担うリソース・経営資源をひとつに集結した株式会社マイネットゲームスを設立した。マイネットは社員600人超、傘下に7社を抱える企業に成長したが、上原さんの思いはそこにとどまってはいない。オンライン化社会ではNo.1以外は生き残れないと、領域No.1の成長事業を複数持つ年商500億円のメガベンチャーになるというビジョンを掲げている。

「ITベンチャーのなかには、規模を大きくすることを望まない企業もたくさんあります。しかし私は起業当初から社員がたくさんいる会社にしたいと考えていました。それは前職のNTTが20万人近い従業員の会社だったということ、そして私が経営者になりたいと思うきっかけを作ったのが松下幸之助さんだったからでしょうね」

 上原さんの人生は順風満帆、設計通りにステップアップしてきたように見えるが、「設計ミスだらけです」と笑う。事業譲渡して得た3億5,000万円を計画に反して半年で使い果たしてしまったこともあれば、会社がつぶれそうになったとき先輩経営者に助けてもらってなんとか会社をつないだ経験もある。今、若い経営者に相談されると「サバイブしようぜ!」と声をかけるそうだ。やり始めるときに持っていた信念を持ち続けていればなんとかなる。折れない心があれば次の道が必ず拓けると。

(文=中村仁美 写真=高橋真一 編集責任=上場推進部"創"編集チーム)2018/04/19

プロフィール

上原 仁(株式会社マイネット)
上原 仁
株式会社マイネット 代表取締役社長
1974 年
滋賀県生まれ
1998 年
神戸大学経営学部卒業後、日本電信電話株式会社入社
2006 年
株式会社マイネット・ジャパン創業
2013 年
株式会社マイネットへ社名変更

会社概要

株式会社マイネット
株式会社マイネット
  • コード:3928
  • 業種:情報・通信
  • 上場日:2015/12/21