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創業者の背中を見ながら成長、幼いころの将来の夢は“会社に貢献する!!”

竹本容器株式会社
竹本 笑子

竹本容器株式会社 竹本 笑子

竹本  笑子(竹本容器株式会社)インタビュー写真

開発提案型の営業を支える“挑戦なくして進化なし”

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 竹本容器は化粧品や食品、日用雑貨などの容器の製造販売を行っている。創業者は現代表取締役社長の竹本笑子さんの祖父にあたる茂さんで、1950年に使用後のガラスびんを回収して再生して販売する事業を起こし、続いて1953年に竹本容器株式会社を設立した。そして1963年に、現在の竹本容器の主力商材であるプラスチック容器(スタンダードボトル)の製造・販売をスタートさせている。

 一般に、メーカーが独自の容器を製造するときは、自社で金型の製作費用を負担し、金型の成形会社に設計と製造を発注する。この方法では納品までに数ヶ月を要し、かつ新製品を出すたびに金型の製造費用がかかってしまう。
 竹本容器は、この金型を多数自社で製作・所有しており、メーカーの注文に応じて容器を製造・加飾して提供している。メーカーは、竹本容器が持つ金型を利用すれば開発コストを抑えることができ、納期の短縮を図ることもできる。新製品をいち早く市場に出し、差別化を図りたいメーカーにとっては朗報だ。
 そして、竹本容器にとっては、50年以上にわたって、容器の金型を作り続けてきたこのスタンダードボトルは業界随一を誇る強力な資産となっており、2016年9月末時点で2,998型の金型を保有し、うち、1,300種類は在庫の状態で在庫し、即時に出荷可能だ。
 
 3代目社長の竹本さんに、その強みについて伺った。
「当社のスタンダードボトルはユニークなビジネスモデルで、業界内ではパイオニア的な位置にいると思います。スタンダードボトルの金型が当社の資産であることに間違いはありません。お客様にとっては、当社が保有している金型の数だけ選択肢があり、もし希望の容器がなくても我が社に要望すれば、時間はかかりますが、オーダーメイドで新しい金型を製作することも期待できるということです」。

 竹本容器ではメーカーからの要望に応じた色や柄などの表面加工なども受けているため、既存の金型を使ってもオリジナリティの高い容器を製造することが可能だ。

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 「私たちには、お客様のリクエストがなくても自分たちが考えた容器をどんどん作っていけるという面白さがあります。注文を待つのではなく、社会を見渡してより良いものを作って提供していく“攻め”の開発ができるところが魅力です」。

 たとえば、内容量が減るにつれ、ねじれて小さくなる容器や、セキュリティを重視した開封が明らかにわかりやすいキャップ、ユニバーサルデザインとして開けやすさを重視したキャップなどがある。同社では社会のニーズを自らが先行して、キャッチアップする“攻め”の開発により、提案型の営業をしている。お客様が金型費用を負担するカスタムボトルの製造もそうだ。

 「以前はスタンダードボトル対カスタムボトルという捉え方をし、それぞれを独立した事業と考えていました。しかし、ここ数年、私たちがスタンダードボトルという資産をカスタムボトルに活かすことができるのではないかと考えるようになりました」。今に甘んじることなく、現状を見直し、つねに前進を心がける竹本さんの姿勢が見えてくる。

 “挑戦なくして進化なし”が竹本容器の基本姿勢のひとつ。会社は成熟していくと成功例に囚われる、なにかに縛られてしまうと竹本さんは言う。
「挑戦すれば失敗もありますが、失敗を恐れてはいけません。失敗してもOK。その理由を分析して、次につなげればいいのです」。この “分析して次につなげる”という姿勢は、彼女の経験の中で培われた部分でもある。

結果の数値は大切。しかしその数値ができ上がるまでのプロセスにもっと関わりたい

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 大学を卒業後、すぐに家業に入るのではなく、一度外に出て修業をするつもりで証券会社に入社する。銀行でも商社でもなく証券会社だったのは、ゆくゆくは上場を考えていた父の勧めだった。配属先は投資部門。ここで会社の業績が数値化され、分析されていくことを目の当たりにした。その数値がいろいろな指標になること、数値を分析することでさまざまなものが見えてくることなどから、数値の大切さというものを実感する。

 「でも、そうした数値そのものよりも、数値ができ上がるまでのプロセスをもっと知りたい、もっと関わりたいという気持ちが芽生えてきたのす」。
 その欲求が、実際に製品を企画し、営業し、製造するという現場の流れに身を置きたいと決意することにつながった。現在に生きる貴重な経験だったと話す。

 竹本さんは小さい頃から創業者である祖父から、折りに触れて経営の苦労話を聞いていた。「資金繰りの話とか不渡りの話とか、内容はかなりシビアなんですけど、楽しそうに話しているのが印象的でした」。次第に、大変そうだけど面白そうだなと思ったという。いつしか自分も自社に入って役に立つのだと意識するようになり、小学校の卒業文集には「副社長になりたい」と書いていたそうだ。なぜ副社長なのかと尋ねると、「祖母が副社長だったからです」と笑う。ただ、妹も祖父と父の背中を見て、同じようなことを感じていたとあとで知り、とても驚いたという。

 証券会社を1年足らずで退社し、そのまま竹本容器に入社する。「このとき入社してよかったんです。この1年後に祖父が急逝してしまいまして。少なくとも1年間、創業者である祖父と一緒に会社の空気を感じ、内側から会社を見ることができましたから」。

 そして1年ほど経理を経験したあと、合併した工場の再建役として白羽の矢を立てられる。赤字のうえ、残業が多く社員は疲弊していた。そこで真っ先に取り組んだのが数値の分析だった。
「納期に間に合わせようと作業を早く進める。それで不良品が増える。不良品検査のために残業が発生する。これでは生産性が上がるはずはありません」。竹本さんは、一つひとつの仕事を無理せず、規定の就業時間内に確実に行い、不良品ロスを減らすことで事態は好転すると考えた。
 分析したら、次は行動に落とし込む。そこで全従業員に出したのが、“残業禁止令”だ。納期に応えなくてもいい、生産量を落としてもいいからと、残業ゼロを厳命した。

 とても大胆な策だが、なぜこんな手を打つことができたのだろうか。
「悪循環を好循環に反転させるためには、とてつもないエネルギーが必要です。力づくでも一度ストップをかけなければ、逆回転はしないのです」。そう考えて打った楔だった。
 しかし、そのときの竹本さんには強い自信を持てる程の経営経験はない。いくばくかの不安を打ち消し、この英断の助けになったのは父・雅英さんのとても短い助言だったという。
「父に話したら“やってみろ”というひと言でした。父の決断力と胆力には、驚かされます」。

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29歳で3代目女性社長に経営のバトンタッチ!育児から得た「子は親の鏡、社員は社長の鏡」

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 父・雅英さんから社長のバトンを渡されたのは、2004年。雅英さんが59歳、竹本さんが29歳のときだ。

 「父は以前から55歳で誰かにバトンタッチすると言っていましたが、叔父がいたのできっと彼が継ぐのだろうと思っていたんです」。小学校の卒業文集に「副社長になりたい」とは書いたけれど、社長になるとは思っていなかったそうだ。
 それでも直に社長交代の申し出があったとき、「あ、そうなんだ」と自然に受け入れていたと竹本さんは言う。「若いときって何も知らないからできるというところがありますよね。そんな気持ちで、“はい”と言ったんだと思います」。

 でも、実際に社長の椅子に座ってみると大変さが身にしみたという。
 社長就任から12年経って、今はどんなことを感じているだろうか。

 「会社のことは、全て社長の責任です。子どもを育ててみて実感できたことなのですが、子どもが親の鏡であるように、社員も社長の鏡なんです。社員の言動は私の言動を映し出しています。私は、互いに学び続けて、成長していくことが大切なんだなと思うようになりました。日々の中につねに学びの芽はあるし、学ぶことに終わりはありません。私が学ぶことで自分の器が大きくなれば、社員のみなさんも成長し、会社の器も大きくなると思います」。
 この想いは、“ともに育み、ともに成長する”という意味を込めた「共育共成」という言葉で社是に掲げられている。

 同社では、この“学び”を促進する目的もあって、近年、社内の発表会や交流会などを頻繁に開催するようになった。
「できるだけ楽しく、相互コミュニケーションを図ることができる雰囲気づくりをしています。発表するために資料を作ったり、意見を交換したりする中で、少しでも気づきや学びを得る機会になればと思っています」。

上場で一番変わったのは、「私自身かもしれない」

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 竹本さんが社長に就任してから10年目の2014年、竹本容器は東京証券取引所第二部に上場を果たした。前述したように、前社長の雅英さんには2000年前後にはすでに上場の意欲があったという。

 「父からは社長を引き継いだとき、上場するかどうかは自由に決めていいと言われました。私は上場のための社内管理体制の整備は、会社の経営体質を強めるために必要なことばかりだと思いましたから、そのまま引き継いで進めることにしたのです。結局10年という時間を準備に費やすことになりましたが、私たちにとっては必要な期間だったし、いいタイミングだったのだと思います」。
 必要な期間だったというのは、上場のために必要だからという理由で体制を整えたわけではなく、自分たちにとって何故必要なのかを一つひとつ理解し、納得して進めてきたからだという。

「何より会社としてのビジョンが明らかでなければ、上場する意味がないと思います」と竹本さん。竹本容器のビジョンは、「日本だけでなく海外でも事業を展開し、世界のパッケージ文化の成長に貢献する」というものだ。

 今後、竹本容器が世界のパッケージ業界の中で認められていくためには、環境に対する配慮は欠かせないと言う。「容器は作ります。でもこれからは単に作るだけではだめなんです。使い捨てにならない容器開発をする、消費に留まらない容器を作る。私はこれを実現するために生まれてきたんだと思うとワクワクします」と話した。

 上場したことによる社内の一番の変化は何かと問うと、「私自身かもしれません」と竹本さんは微笑んだ。
「IR活動などをする中で、私たちに要求されているものは何か、私たちがすべきことは何かなどをより深く考えるようになり、発言するようにもなりました。海外展開を加速させることが上場の目的の一つでしたが、積極的に働きかけることで海外のお客様とのつながりも増えてきました」。

 中国・上海に上海竹本容器包装有限公司を設立したのが1996年。竹本さんが社長に就任して以降は、2005年にアメリカにTAKEMOTO PACKAGING INC.を設立、2011年には中国・広州にも進出、2013年にはタイに駐在員事務所を開設と海外展開をしてきた。そして上場翌年の2015年にはオランダ、2016年にはタイとインドに会社を設立するなど、宣言通りに海外展開を加速させている。

「世界の竹本になる、その意識を社員にも強くもってほしい」と語る竹本さんは、中国・上海の開業から20周年にあたる2016年に、初めて日本と中国と合同で経営計画発表会を開いた。日本からは60名ほどが参加し、賑やかに交流したという。

 また、2016年3月より、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行。監査等委員である社外取締役を4名とし、コーポレート・ガバナンスの強化にも努めた。「経験豊かな方々に取締役として参加してもらいました。いろいろな助言をしていただける一方、厳しい指摘もいただきます。いろいろな気づきを得ることが増えましたね」。

女性がどんどん力を発揮できる場面を作りたい

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 20代で3代目社長となり丸12年経った。若き女性実業家として、女性の働き方についてはどのように考えているのだろうか。
「当社では大勢の女性が働いています。とくに営業職は、化粧品や食品メーカーなどに出向くことが多いので、取引先から『女性を』と要望されることも少なくありません。出産を期に、営業部門から開発部門へ異動して働き続けてくれる社員もいます。第二子出産後も育児とのバランスを取りながら、退職することなく継続して勤務している女性もいますよ。
 
 女性の力は、会社を変える原動力になると思っています。ただ、当社の場合、まだまだ十分に引き出せているとは言えません。もっと女性が得意な分野で、どんどん力を発揮できるような仕組みなり、機会なりを作らなくてはいけないなと思っています」。
 単にポストを用意して肩書を与えるということではなく、自由に発言できる場を作ることこそが大切だと話す。

 では、一番の経営課題はと尋ねると、「次の社長をいかに作り出すかです」ときっぱり言い切った。
「会社の社長は、多様な情報を得ることができ、さまざまな経験をする機会が多いですから、長く経験すればするほど成長するものだと思います。でも、成長する分だけ、社員とのギャップが広がるのも否めないのです」。それでは会社が成長しにくくなる。次の事業承継の準備をしっかりしていこうと考えているという。
もちろんバトンタッチはまだ先の話です。会社の成長と事業承継。それが私に課せられた課題だと思っています。そして、一端引き継いだら口を出さないことが肝心。これは父の姿を見て学んだことです」。

 最後に趣味は何ですかと聞くと、「趣味は持たないことにしたんです」と笑った。
「子どもが生まれる前はゴルフやサーフィンをしていたのですけど、家族という尊い存在を得て、仕事にも没頭したいとなったら、もう自分の時間はいらないなと思ったんです」。
 今は仕事が楽しくて仕方がないし、何かストレスに感じることがあっても一晩寝れば忘れてしまうという。「子どもと過ごす時間がリフレッシュの時間になっていますね」と少し母親の顔を覗かせて話してくれた。

(文=佐藤紀子 写真=イシワタフミアキ)2016/12/19

プロフィール

竹本 笑子
竹本容器株式会社 代表取締役社長
1998 年
国際証券株式会社(現三菱UFJモルガンスタンレー証券株式会社) 入社
1999 年
竹本容器株式会社 入社
2001 年
竹本容器株式会社 営業本部副本部長
2004 年
竹本容器株式会社 取締役
2004 年
竹本容器株式会社 代表取締役社長 (現任)

会社概要

ロゴマーク
竹本容器株式会社
  • コード:4248
  • 業種:化学
  • 上場日:2014/12/17