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消費者を守るセカンドオピニオンが 地盤業界に革命を起こす

地盤ネット株式会社(2014年10月1日より地盤ネットホールディングス株式会社に商号変更)
山本 強

「地盤業界を変えたい」という使命感で起業

山本 強(地盤ネット株式会社)インタビュー写真

 「住宅品質確保促進法」が2000年に施行され、新築住宅の建築では、建設前に地盤調査を行うことが実質的に義務づけられた。工務店が地盤調査会社に調査を依頼し、その結果によって、必要なら地盤改良工事をすることになる。改良工事にかかる費用は40~200万円、負担するのは施主。その改良工事の約70%は「不要である」と判定して注目を浴びているのが、業界唯一の地盤解析専門会社である地盤ネット株式会社だ。

 地盤ネットは、「地盤改良工事が必要」と判断された施主や工務店の依頼を受けて、第三者の立場で地盤を再解析し、改良工事の判定や工法、金額などの妥当性についてセカンドオピニオンを提供する。過剰な改良工事を減らしていくことで、「地盤業界からは煙たがられるが、工務店や消費者からは喜ばれる会社」を自負している。

 代表取締役社長の山本強さんがこの事業を起こしたのは、子供の誕生がきっかけだった。

「独立を決断したのは、今のままでは子供に胸を張って『お父さんはこんな仕事をしているんだよ』と言えないと思ったからです」

 大学を卒業後、証券会社を経て勤務したハウスメーカーから、山本さんは子会社の地盤調査会社に異動になった。

「欠陥住宅問題を背景に地盤調査会社ができたばかりの頃で、せっかく建てた家が傾いてしまったというお客様の相談にのる毎日でした。心まで病んでしまったお客様もいましたから、仕事の重要性を痛感し、やり甲斐もありました。ところが、地盤会社が増えてくると、改良工事の必要性や料金が不透明になっていったのです」

山本 強(地盤ネット株式会社)インタビュー写真

 1990年代半ばにはほとんどなかった一般住宅向けの地盤会社が、2006年頃には約300社にまで増えた。調査が目的で誕生した地盤調査会社だが、過当競争によって調査費が赤字になり、それを改良工事も請け負うことで補い、儲けるようになっていった。

「地盤については専門性が非常に高いため、工事が本当に必要なのか、料金が妥当なのかを疑問に思っても、誰も異を唱えることができない。地盤業界は、自分たちにとって都合の良い商売をしていたと思います。消費者のことを考えた商売ではないことに、私は違和感を感じていました。

 子供の誕生で親になるのをきっかけに、ずっと違和感を感じていた不透明な部分にメスを入れ、業界が発展する仕事をしたいという使命感を強く感じたのです。子供に勇気づけられたようなものですね」

工務店と施主のニーズをつかみ、創業4年半で上場へ

山本 強(地盤ネット株式会社)インタビュー写真

 証券マン時代にバブル崩壊を経験した山本さんは、多くの銘柄が暴落する中でも、「業界から煙たがられる消費者目線の会社」の株価が堅調なことを発見していた。自営業を営んでいた両親の影響で起業を夢見ていた山本さんは、"消費者目線"で地盤業界の不透明さを是正したいと考え、2008年に地盤ネットを創業。社名には、インターネット、ネットワーク、そして「セーフティーネット」(ユーザーの安全網)という意味を込めた。

 コア事業として開始した『地盤セカンドオピニオン®』は、過剰な地盤改良工事を防ぐために、地盤調査データを第三者の立場で公正にチェックするサービスだ。しかし、地盤業界のバッシングが強く、サービスが売れない苦しい状況が続いた。退路を断って都内に事務所を移転した頃、全国の工務店を組織化している建築関連会社がサービスを採用してくれた。これが転機となる。

 施主の住宅建築費の上限は決まっているから、過剰な地盤改良工事をしない分、より満足度の高い家を建てることができる。工務店、そして戸建分譲事業者などに、地盤ネットのサービスが歓迎され、評判が評判を呼ぶ形で利用者が増えていった。

「『地盤セカンドオピニオン®』は無料でご利用いただけます。では、どこで収益をあげるか。8万4,000円で発行する『地盤品質証明書』です。これは、業界では画期的な補償サービスで、大手損保と契約し、2010年10月より自社で地盤品質の10年補償(最大5,000万円)をつけられるようになりました。損保会社の担当者が、この事業は社会正義だと役員を説得してくれて実現しました」

山本 強(地盤ネット株式会社)インタビュー写真

 『地盤セカンドオピニオン®』で、改良工事が不要と判定された施主は、『地盤品質証明書』を申し込む。工事をすることを考えれば断然安く、安心と補償を手に入れられるわけだ。

 セカンドオピニオンで消費者の信頼を獲得し、いわばファーストオピニオンの事業『地盤安心住宅®システム』のニーズも増えた。地盤調査から解析、対策提案、品質証明書の発行に至るまで一貫したサービスを提供するが、地盤改良工事は請け負わない。地盤改良工事が必要かどうか、あくまでも第三者として見極める立場を、多角化する事業でも貫く。

 こうして工務店と施主のニーズをつかみ取り、驚くべき推移で業績を伸ばし、2012年12月、地盤ネットは東証マザーズ上場を果たしたのである。

目指すのは400%成長と国内40%シェア

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 地盤ネットは設立以来、4期連続で増収増益を達成している。売上高、経常利益ともに100%成長を続け、2013年3月期の売上高は13億9,000万円、経常利益は3億5,800万円に達した。その後も高い成長率を維持し、2016年3月期には売上高54億8,600万円、経常利益18億7,200万円に到達する計画だ。

 『地盤セカンドオピニオン®』で知名度をアップし、現在は、地盤の解析・調査事業が伸び、国内住宅着工戸数に対するシェアが順調に拡大している。2013年3月期のシェアは、持家・分譲戸建47万戸に対して6.3%だが、2015年3月期に18.1%を、最終的に40%以上を目指している。

 シェア40%という目標を達成するために、社内では「400%成長」という数字が日常的に飛び交う。山本さんは「うちの四半期は、普通の会社の1年分だ」と社員にハッパをかける。

「ただ一生懸命やっても400%成長は達成できません。仕事のやり方を見直し、普通の会社の4倍の効率性を追求することが重要です」

 仕事の効率化には人材育成も欠かせない。今年から、新規採用者の研修プログラムも始まっている。

 2015年までの中期経営計画には、海外への展開も盛り込まれている。ベトナムや中国、インドネシア、フィリピンといった日本以外の地震国でも、潜在的な需要はあると山本さんは確信しているからだ。東南アジアを手がかりに、世界に誇る日本の地盤技術を広げていくのが夢だという。

 その手始めとして、3年前からベトナムに足を運んで事業展開を模索している。ベトナムの現地企業へデータ入力業務のアウトソーシングを行うなど徐々に足元を固め、最近ではベトナムに進出している日本企業へのサービス提供も始まった。
 そして、2013年6月、ベトナム子会社を設立。日本とはまったく環境の違うアジアで、サービスをどう展開するか、住宅地盤関連情報の収集と各種マーケティング活動を推進していく。

セカンドオピニオンの多角化で住宅革命を!

山本 強(地盤ネット株式会社)インタビュー写真

 山本さんの夢は地盤業界にとどまらない。「セカンドオピニオンが必要なのは地盤だけではない」として、事業のさらなる多角化を目指す。

「戸建住宅を建築する場合、ハウスメーカーは地元の工務店と比べて3〜4割、価格が高くなってしまうのが当たり前です。本来なら、地元の工務店で発注すればいいのですが、良い工務店を見つけたくても情報が限られていて難しい。結局、消費者は、安心料を大手ハウスメーカーのブランド力に支払っているというのが実情です」

 この他にリフォームなどについても、「消費者に向けた情報が少ないために、適正料金がわかりにくく不透明さを感じている」と、山本さんは業界の専門家が消費者の味方になり、業界にメスを入れていく必要性を説く。

「弊社がシェア40%を目指しているのは、住宅業界全体における発言権を得たいからです。それだけのシェアをとってステータスを築かなければ、何を言っても聞いてもらえないでしょう。圧倒的なシェアを握った上で、地盤だけでなく住宅の革命を起こしたいと思っています。

 住宅地盤は住宅の一部に過ぎません。地盤業界の透明性が高まったとしても、消費者の不安がすべて解消されることにはならない。やはり、住宅本体まで含めたところを改善したいと考えています。目指すのは『住生活エージェント』です」

 山本さんの400%成長への情熱を支えているのは、「消費者目線」へのこだわりに他ならない。

「業界では通常何らかの系列がありますから、問題点に気づいていても改革に取り組むことが難しい。弊社は独立系だからこそ、消費者目線で大胆な改革を進められる。もちろん、それができるのは、投資家のみなさんに支えられているからこそです。

 投資家のみなさんは消費者でもあります。投資家からのサポートは、消費者からの強力なサポートと同じ。投資家のみなさんの応援がある限り、地盤革命、住宅革命という夢に取り組んでいきたいと思っています」

山本 強(地盤ネット株式会社)インタビュー写真

(文=宮島理)2013/07/12

プロフィール

山本 強(地盤ネット株式会社)プロフィール写真
山本 強
地盤ネット株式会社(2014年10月1日より地盤ネットホールディングス株式会社に商号変更)  代表取締役
1990 年
関西学院大学法学部卒業
証券会社、ハウスメーカー、地盤調査会社を経て、
2008 年
地盤ネット株式会社を設立
2012 年
東証マザーズ上場

会社概要

地盤ネット株式会社
地盤ネット株式会社(2014年10月1日より地盤ネットホールディングス株式会社に商号変更)
  • コード:6072
  • 業種:サービス業
  • 上場日:2012/12/21