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観光立県沖縄を彩る感動企業として、瀬長島を観光のメッカに!

WBF リゾート沖縄株式会社
兼城 賢成

WBF リゾート沖縄株式会社 兼城 賢成

兼城 賢成(WBF リゾート沖縄株式会社)インタビュー写真

ビジネスホテルと格安レンタカーを2軸として発展

兼城 賢成(WBF リゾート沖縄株式会社)インタビュー写真

 2016年、日本を訪れた海外からの旅行客は2,000万人を超え、政府は、観光を成長戦略の大きな柱に位置付けている。こうした中で、魅力的な観光地として注目されるのが沖縄である。2013年以降、沖縄を訪れる観光客数は毎年増加を記録しており、2015年には前年比10%増の約780万人(海外からの観光客約150万人[前年比約70%増])を記録した。元来持っている豊かな観光資源が、観光へのニーズの盛り上がりのなかで評価を高めた結果といえる。

 この沖縄で、WBFリゾート沖縄は、ユニークな観光事業を展開している。同社は、1990年に旅行業を営む株式会社ホワイト・ベアーファミリーのグループ会社として設立され、当初は沖縄県恩納村に建設されたリゾートマンションの販売を行っていた。マンション完売後に一時活動を休止したが、2004年に宿泊特化型のホテル事業と価格競争力のあるレンタカー事業を2軸として事業を再開し、沖縄観光の伸びを追い風として成長を果たしてきた。同社の事業展開について、代表取締役社長の兼城賢成(かねしろよしなり)さんに伺った。

「上場を経て、当社は独立した企業として経営・運営を行っていますが、ホワイト・ベアーファミリーグループの一員であることが企業としての個性になっていると思います。ホワイト・ベアーファミリー創業者の近藤康生(WBFリゾート沖縄、前社長)は学生サークルでツーリズムを企画・運営していました。当時の行き先は、冬は長野のスキー場、夏は沖縄の海だったのです。その延長線上にホワイト・ベアーファミリーの旅行業があり、当社の事業もそこから生まれました。宿泊特化型のビジネスホテル、そしてコンパクトな車を多く用意した格安レンタカーは、若い層がリーズナブルに沖縄を旅行したいというニーズに応えるものです」

 WBFリゾート沖縄は現在、ビジネスホテルを3館、後述のリゾートホテルを1館、そして格安レンタカーの『パラダイスレンタカー』を那覇市に2店舗、石垣市に2店舗設置して運営している。また、レンタカー事業としては、2015年3月に、旅先で乗ってみたいハイグレードなコンセプトカーを揃えた高級レンタカー『グレイスオキナワ』を那覇市に1店舗開業している。

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本格的な温浴施設を持つ『琉球温泉 瀬長島ホテル』を開業

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 WBFリゾート沖縄にとって大きな前進となる事業が、2012年12月にスタートした『琉球温泉 瀬長島ホテル』の運営である。同ホテルは、その名に冠されているように天然温泉に入れるリゾートホテルだ。「言われてみれば…」と気付くことだが、沖縄には温泉のあるリゾートホテルが少ない。本格的な温浴施設があることは、他のリゾートホテルに対して大きな差別化となる。
 もう一つの大きな特徴は、そのロケーションである。瀬長島は那覇空港の隣に位置する島で、本島とは橋でつながっており、陸続きの感覚で行き来できる。その島の小高い丘の上にホテルは建っているので、全室「オーシャンビュー」なのだが、そのうえ多くの部屋が「エアポートビュー」なのである。美しい海を背景に着陸・離陸する飛行機の迫力は、航空機ファンならずとも一見の価値はある。
 開発の経緯を兼城さんに伺った。

「瀬長島の大半は豊見城市の所有で、これまでも開発の話は色々あったのですが、用地指定が市街化調整区域で、加えて空港に関わる規制があり、また住民の方々の理解が得られる計画が出ていなかったので手付かずになっていました。
 その場所に、あるとき、近藤が立ち『ここでお風呂に入ったら最高だな』と思ったところから、このホテルの開発プロジェクトは始まったのです。近藤が非常に温泉好きだということもあるのですが、開発許可を得る一番の近道は結果的に温泉でした」

 その後、予測どおりに温泉が湧き出て、開発許可も下りた。開発計画は当初温浴施設だけであったが、初期の段階で温浴施設のあるリゾートホテルに変更され、プロジェクトが走り出した。
 兼城さんは、温泉と建築の責任者として計画を推進した。開発をスムーズに行い、施設を開業させるには、地元住民の理解を得ることが必要だった。

「瀬長島は歴史のある島でして、ここを大事に使うということが重要なことでした。行政からの要望は、豊見城市民が使いやすい施設であってほしいということでした。もちろん私たちも、地元に愛される施設でありたいと思いましたので、『チャンプルーリゾート』というコンセプトを掲げ、地元の人と観光にいらした方々が混ざり合って楽しめるリゾートホテルを目指そうと考えました。
 たとえば、地元の皆さんにホテルにも親しんでいただこうという考えから、ホテルと温浴施設の入口を別々にしないで、一つにしました。温浴施設だけの利用であっても、一度ホテルのドアを入って、そこから細長い廊下を通って温浴施設の受付に行くという動線をあえて作ったのです」

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 兼城さんはじめプロジェクトチームは、住民と漁業関係者への説明会なども行い、施設開発と運営への理解を浸透させ、瀬長島に新しいリゾートを創った。
 想定した通り、沖縄では珍しい本格的な温浴施設を持ったリゾートホテルは好評を博した。ホテルの104室は、年間を通して80%以上という客室稼働率を挙げている。これは、季節変動のあるリゾートホテルとしては極めて高い数字である。その背景となっているのがインターネット活用である。自社ホームページの機能・表現などを充実させ、そこからの予約獲得を目指すとともに、稼動が良くない場合にはキャンペーンなどを即座に打ち出し、宿泊獲得を行うのだ。
 ところで、海外客の伸びが著しい沖縄にあって、同ホテルでは地元客の宿泊利用にも力を入れているという。

「沖縄に海外からのお客様が増えていることは事実ですが、瀬長島ホテルでは3割未満というところです。さらに、国内のお客様については、東京からのお客様が1位ですが、2位は沖縄です。私たちは生涯顧客を数多く獲得し、リピート利用していただくことを重視しており、そのためにも地元沖縄のお客様に泊まっていただくことに力を入れています。これは今後もずっと守っていきたいと思っています」

 「お客様に選ばれ、何度もリピート利用してもらえるホテル」、これが同ホテルの目指す姿なのである。

上場で事業拡大の背景となる信用力を得る

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 WBFリゾート沖縄は、自社の行う事業を「旅行」というステージで設定しており、前述したようにホテル事業とレンタカー事業が2軸となっている。この二つはサービス業という枠組みでくくられるが、事業を行うための施設・設備・機材などハード面から見ると大きな違いがある。レンタカー事業の車はリースで確保し、古くなれば売却するという、ある程度の流動性があるのに対し、ホテル事業は大きな初期投資によってホテルという箱を建てなければビジネスができないという装置産業的な側面を持っている。
 つまり、WBFリゾート沖縄がホテル事業を拡大するためには、企業としての体力、ひいては資金調達力が求められる。その施策として私募債や、地元の方々を中心とした有料会員組織(10万円単位)などが検討されてきた。
 そうした中、2013年6月、沖縄経済界に一つのニュースが流れた。鉄板焼ステーキレストランを展開する株式会社碧のTOKYO PRO Marketへの上場である。このニュースに刺激され、WBFリゾート沖縄社内でも「そうしたマーケットがあるなら挑戦してみようか」という気運が高まり、真剣に検討が始まった。そのときの狙いについて、兼城さんは次のように説明する。

「TOKYO PRO Marketに上場することが、すぐに資金調達を実現できるわけではないことは理解していました。しかし、私たちが、いきなり東証二部やマザーズ上場を考えるステージにいるわけでもありません。まずは社内の管理体制を整備・確立してTOKYO PRO Marketに上場し、信用力を高めようと考えたのです」

 また、“人財”募集における好影響も狙いの一つとなった。サービス業は人の産業である。よいサービスを展開するには、よい“人財”を採用し、育てることが重要なのだ。しかし、現実にはサービス業の“人財”採用活動は困難に直面している。

「汚い、きつい、給料が安いなど、3K職種のように言われ“人財”を集めにくい状況は確かにあります。けれども、沖縄は観光立県です。観光業やサービス業に“人財”が集まらないことには、沖縄の未来も描けません。そこで振り返ってみると、碧さんが上場するまでは、沖縄で上場した企業では、サービス業はありませんでした。『観光立県沖縄ならば、県内の観光業に上場企業があるべきだ。碧さんが上場し、続いて私たちが上場するということができれば、雇用を求める人たちの見る目も変わってくるに違いない』・・・そういう思いもありました」

 上場チャレンジの決断後の行動は早かった。まず、上場関係業務の実務経験者を採用し、上場担当者とした。財務・会計の領域は、自社の管理部と会計事務所・監査法人とでチームを組み、J-Adviser(株式会社OKINAWA J-Adviser)に報告・相談しながら取り組んだ。そして、2週間に一度は全社でミーティングを行い、課題を解決していった。
 上場するための取り組みであったが、それを行ったことで社内が洗練され、ぐっと筋肉質になったと兼城さんは言う。

「それまで、管理部は“処理”をする仕事が多かったと思います。私たちの会社だけでなく、一般的にそういう傾向なのではないでしょうか。それが上場を目指すことをきっかけに、『生きた数字を扱って行こう』という姿勢になったのです。それには、現場がわからないといけません。本社で仕事をしていた管理部の社員が、現場に行って仕事をするようになりました。この変化は大きな進化だと思います」

 こうして、「挑戦してみよう」と発起したときから2年ほどを経て、2015年10月、WBFリゾート沖縄はTOKYO PRO Marketに上場した。「信用力を得よう」という目論みは現実のものとなり、上場後に新規の金融機関4社と取り引きが具体化した。拡大する業容に合わせた“人財”採用も順調に進んでいる。
 兼城さんは、こうした追い風を活かし、2020年までにホテルを現在の280室から800室に、パラダイスレンタカーの保有台数を600台から1,000台へと拡大する目標を立て、推進している。すでに、那覇市内に230室のホテルを賃貸で獲得し、石垣市に新たに60室のホテルを建設中であり、県外の福岡でもホテルの運営を行うことになっている。

瀬長島を沖縄観光のメッカに

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 TOKYO PRO Market上場に先んじて、2015年8月、琉球温泉 瀬長島ホテルに隣接したエリアに複合商業施設『瀬長島ウミカジテラス』がオープンした。

 ホテルの周辺開発として、地元自治体である豊見城市の宜保晴毅市長から「屋台村」の提案がなされ、それをベースにして施設開発コンサルティング会社などと検討した結果、屋台村のように夜型に特化するのではなく、昼夜稼動する小規模なテナントの集合施設が発案された。そして、約30店舗の個性ある飲食・物販テナントが出店するウミカジテラスが誕生した。

「豊見城市は、観光資源はあるのですが、お客様を呼び込むまでには至っていなかったのです。それで、ホテルに加えてインパクトのある商業施設を設け、瀬長島を観光地のメッカにしたいという思いを宜保市長は持っておられたのです。これは、地元に愛される施設になりたいという私たちの考えと合致するものです。
 ですから、ウミカジテラスの運営は私たちが勝手にやるのではなく、行政も、観光協会も、商工会も、皆様に応援していただけるスキームを作ろうということで一般社団法人瀬長島ツーリズム協会という組織を設立して、そこに私たちが運営委託するというスタイルを採っています。一般社団法人が運営しているので、豊見城市も応援できるし、地元のネットワークも活かせます」

 このウミカジテラスの開業と上場の効果も加わって、瀬長島への注目はぐっと高まった。上場に関する報道だけでなく、全国ネットのテレビ番組を含め、旅やレジャーをテーマとしたテレビや雑誌などの取材が急増したという。そうした取材にあたって、兼城さんも乞われれば積極的に対応するようにしているという。

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 「私を含め沖縄県人は恥ずかしがり屋が多いのですが、観光業として上場したからには表に出て、沖縄をもっともっとPRしなければ、と考えるようになりました。
 そして、『沖縄に観光に行ったら、ぜひ瀬長島』というメッセージも発信しています。いつか瀬長島を、450万人集客の『美ら海水族館』を超えるような観光のメッカにしたいと思っています。これは豊見城市の思いと一致しています」

 自らを「恥ずかしがり屋」といい、笑顔を絶やさない兼城さんの胸の中には、そんな大きな夢があるのである。

 取材の最後に、兼城さんは「私は社員たちにこんな話をするのですよ」と、沖縄という地域に根ざした観光人としての心得を語ってくださった。

「レンタカーを借りてくださるお客様にとって私たちは、その方が沖縄に着いて最初に出会う人なのです。ホテルも同じです。送迎バスに乗っていらっしゃって、チェックインする際に、お客様をお迎えする私たちは、その方が沖縄で出会う最初の人なのです。
 また、お客様が沖縄を後にするとき、私たちはその方をお見送りする最後の人になることが多いのではないかと思います。
 お客様が家族で沖縄旅行をする場合、実際の旅行日程の半年前から計画が始まっています。まず旅行の予算を決めて、それから、北海道か、海外か、沖縄か、家族で話し合い目的地を決めます。次に日程を決め、飛行機や宿の手配をします。さらには、訪問場所などを検討するのです。そうやって、さまざまなことを経て、旅行の当日、初めて現実として沖縄を訪れるのです。
 そのことをイメージした上で、私は社員にこう言うのです。私たちがお客様にご迷惑をおかけしたり、クレームを発生させたら、そのお客様は『二度とこのホテルには泊まらない』『二度とこのレンタカーを使わない』と思うだけでなく、『二度と沖縄には来ない』と思うだろうね、と。
 観光立県沖縄で観光の仕事をしているということは、社会貢献に直結していることなのだと自負することが大切です。そういう気持ちで仕事をすれば、言葉はもちろん、態度や姿勢にも気持ちが出てくると思うのです」

兼城 賢成(WBF リゾート沖縄株式会社)インタビュー写真

(文=志澤秀一 写真=矢嶋健吾)2016/12/13

プロフィール

兼城 賢成(WBF リゾート沖縄株式会社)プロフィール写真
兼城 賢成
WBF リゾート沖縄株式会社 代表取締役
1966 年
沖縄県生まれ
1986 年
ニッキ住設株式会社 入社
1992 年
株式会社千代田 入社
2009 年
ジオ沖縄株式会社(現WBFリゾート沖縄株式会社)入社
温浴事業部長 就任
2012 年
当社ホテル事業部担当取締役 就任
2014 年
一般社団法人瀬長島ツーリズム協会 代表理事就任(現任)
2014 年
当社代表取締役 就任(現任)

会社概要

ロゴマーク
WBF リゾート沖縄株式会社
  • コード:6179
  • 業種:サービス業
  • 上場日:2015/10/15