自主規制業務の必要性

日本取引所グループでは、傘下の東京証券取引所や大阪取引所において、株式などの現物商品や将来の株式指数などの値動きを対象とした派生商品など、様々な金融商品の取引を行っております。ここでは、取引所の役割に対する自主規制業務の必要性について説明します。

取引所の役割

価格発見機能

株式の取引が成立するためには、株式を買いたい人と株式を売りたい人がともに存在することが必要です。また、取引の成立のためには価格が重要です。
取引所は、株式の買い注文と売り注文を集めて「競り(オークション)」を行って価格を決め、取引を成立させます。こうした価格を決める機能は「価格発見機能」といい、取引所の重要な役割の一つです。

価格発見機能

株式取引についてさらに詳しく知りたい場合は、こちらをご覧ください。

現物取引 売買注文の方法

資金調達の場の提供

他方で、発行している株式が取引所での取引の対象(上場)となることは、その会社にとってもメリットがあります。

会社が事業を展開するうえで必要となる資金は、銀行などの金融機関から借入れる他に、新たに株式を発行することで得ることもできます。このとき、会社の発行する株式が上場していれば、価格が変動する可能性はあるものの、保有する株式を売却して投資回収・資金化しやすいため、投資者は比較的新株式発行に応じやすくなります。このことにより、会社は新株式発行による資金調達が行いやすくなり、事業を拡大するうえでメリットがあるといえます。

このように、取引所は株式の取引の場を提供することを通じて、株式を発行する会社の資金調達の環境を良好なものにし、資金を得た会社が事業拡大することで、経済全体が発展することに貢献しています。会社に資金調達の場を提供することも取引所の重要な使命です。

資金調達の場の提供

取引所にとっての自主規制業務の重要性

機能発揮のためのルールとその関係者

取引所では、果たすべき役割・使命を円滑・安定的に発揮するために、法令に加えて様々なルール(規則)や仕組みを定めています。
取引を成立させるための価格の決定の規則を定めることはもちろんのこと、取引所に注文を出すことができる者を、取引に参加できる資格(取引参加者資格)を有する証券会社に限定したり、株式を上場できる基準を設けたりしています。

取引所では、法令や取引所規則を十分に理解し、それを守る体制が整備されている証券会社に取引参加者資格を与え、その取引参加資格を持つ証券会社(取引参加者)にルールを守らせることを通じて、多くの投資者の取引の注文を円滑・安定的に成立させる仕組みを設けています。

また、上場株式については、その価値の源泉である会社に関する基準を設け、それに適合すると認められる会社の株式のみを上場しています(上場株式を発行する会社を上場会社といいます)。そして、上場廃止基準を設けて、上場会社が投資対象となりえない状況にあり、廃止基準に抵触していると認められれば上場廃止としています。

このように、ルールを設けてそれに沿った運用がされている、と投資者から信頼されることによって取引所の機能や使命が果たされます。

取引所に対する投資者からの信頼を損なわないために

反対に、例えば以下のような状況が放置されていれば、投資者が不測の損失を被ることになりかねず、安心して投資できなくなります。

  • 取引参加者がルールを違反している
  • 悪意を持った投資者が不正な取引を行っている
  • 上場基準を満たしていないような状態の新規上場会社が存在
  • 投資者が投資判断するうえで最も考慮する会社から開示される情報に虚偽、重要なことが開示されていない状態

取引所が投資者からの信頼を損なうようなことになれば、取引所の機能や使命を果たすことができなくなり、最終的には経済の発展に悪い影響を与えるおそれが出てきます。

こうしたことが起きないように、「品質管理」を行うことが機能や使命を発揮するうえでとても重要なことです。取引所が提供する機能の「品質管理」を自主規制業務といいます。
取引所を取り巻く環境、取引参加者や上場会社の状況は日々変化しています。そうした変化を常にチェックし、投資者に不測の事態をもたらすようなことがあれば即座に対処することが、取引所の公正性と信頼性を維持し向上させることにつながります。

このように、取引所において自主規制業務は不可欠なものとなっています。