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電信畧語表

電信畧語表 写真1

右の写真は、大正8年、東京株式取引所(東株)の仲買人(現在でいう取引参加証券会社)であった林小衛兵商店が使用していた『電信畧語表』というものです。
この『電信畧語表』の左側には「  殿」とあることから、これを顧客に渡し、電信略語を使用しながら売買注文の受付などを行っていたと思われます。明治23年12月には、既に兜町では電話が使用(雑音はひどかったようです)されていましたが、この略語表は、電話がまだ普及していない地域の顧客などのために使用されていたと思われます。

この略語表では、当時の人気株であったいわゆる“新東株”(東株の新株)は「ロリ」、株数を表す“千”は「メ」、“買い”は「カ」などとなっています。

電信畧語表 写真2(写真左)、電信畧語表 写真3(写真右)

この頃の日本経済は、第一次世界大戦(大正3年)を契機に大きく景気が好転し、輸出の急増、大幅な金融緩和を背景に急速に成長し、企業が新設・拡張した時代でした。また、大戦景気が進むにつれて、懐の豊かになった投資者層が増加し、企業熱の高まりとともに、ちょっとした株式ブームに沸きました。

こうしたことから、一定の証拠金を取引員に差し入れることで取引が可能な清算取引中心であった株式市場にも、実物取引(現在でいう現物取引)が徐々に行われるようになります。実物取引は主に市場外の現物問屋の店頭で取引されることが多かったようですが、その現物問屋が地方にも増設されたことから、 “株式ブーム”は地方にも広がっていったものと思われます。

その後、実物取引の取引高は伸び悩みましたが資本の調達に応ずるような株式への投資増大がみられたことは、当時の経済発展に貢献したものと思われ、この『電信畧語表』も、それに一役買ったことでしょう。