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『証券』創刊号

『証券』創刊号

右の写真は、昭和24年11月10日、東京証券取引所調査関係の月刊誌として発刊された『証券』創刊号です。この『証券』を開いてみますと、「ポンド切り下げと日本經濟」「法律解説 外地及び外國人株主の新株引受權について」「産業講座 合成纖維工業」などがあり、それらを含め96ページにわたる力作となっています。ちなみに定価80円(送料6円)です。

小林初代理事長(当時)は、この『証券』の「証券の發刊に際して」の中で、「本所は刻々に移りゆく世界經濟の動向とそれらを反映して躍動を續ける證券市場の生態に對し、絶えず調査、研究を怠らず、それによって得た資料をこゝに提供して證券投資についての指針とし又參考としようとするのが本誌發刊の根本趣旨である」と述べています。

創刊当初は、主として、証券市場に関する解説、海外における証券市場制度の紹介などが中心でしたが、昭和30年以降の証券市場の飛躍的な発展とともに、企業の資本構成是正問題、ADR、外債の発行に関する諸問題、店頭市場の組織化問題、公社債市場の育成問題、昭和39年から昭和40年の証券不況期には、証券対策と証券市場再編成問題、その後は、公社債市場正常化、証券市場国際化、ディスクロージャー、相場報道機械化など時代とともに、主要テーマも変わっていきます。

小林理事長は、「わが經濟は連合軍の占領下に、着々と復興の道を歩んでいる。經濟九原則、ドッジ案の強行は、いうまでもなく自立經濟への過程であり、これに伴う苦難こそわれわれに與えられた試練である。全國民が常に反省し、窮乏に耐え、ひたすら發奮、努力を致すならば、國際經濟への復歸は遠い將來のことではないと確信する。經濟のバロメーターとしての證券市場の重要性はわれわれのこの念願が逹成された曉こそ一段とクローズアップされるわけで本誌もそのときに備えて努力精進しなければならない」とも述べています。

戦後日本は、サンフランシスコ平和条約の締結(昭和26年)を契機として着々と国際社会への復帰を果たしていきますが、そんな「念願」を込めて、この『証券』は発刊されたようです。