ゼロの電力こそが世界に無限の「動力」を生む

株式会社動力
  • コード:1432
  • 業種:建設
  • 上場日:2015/08/18
鈴木 竜宏(株式会社動力)トップ画面

“努力”を続けることで“動力”になる

鈴木 竜宏(株式会社動力)インタビュー写真

 株式会社動力は2016年4月から“動力”になった。社名を『スズキ太陽技術』から『動力』に変更したのである。スズキ太陽技術は太陽光発電システム用の取付架台や部材の開発・販売を主事業とし、協力会社2社・子会社1社とタッグを組んで住宅用・産業用太陽光発電システムの普及に取り組んできた。
 協力会社の一つは、全国に営業所を持つ太陽光発電システムや住宅用エネルギー機器の販売会社、もう一つは電気・通信設備工事を行う施工会社で、子会社は蓄電池の販売・施工会社だった。スズキ太陽技術は、この協力会社2社の株式を取得して子会社化し、元の子会社と合わせて、2016年2月、3社を吸収合併した。

 経営統合により、太陽光発電システムの部材や部品の開発・販売、太陽光発電システムの販売・施工、エネルギー機器関連の販売・施工に至る一貫した組織体制ができ上がった。代表取締役の鈴木竜宏さんは、統合の意義を次のように語る。

 「たとえば、これまではスズキ太陽技術と協力会社で名古屋にそれぞれの営業所を持っていました。これを1カ所に集約するだけでも、相当の効率化が図れます。設備面でも同じ機能で重なる部分があるので、これも集約。かなりのコスト削減が見込めるうえ、販売網は協力会社が擁していた営業所も含め、仙台、東京、静岡、名古屋、広島、福岡へと全国に広がるので、事業は一挙に拡大します」

 経営基盤を格段に強化したうえでの社名変更である。株式会社動力は、旧スズキ太陽技術時代に設置していた子会社と同じ社名だ。鈴木さんは、統合を考えたときにはすでに新社名を動力にしようと決めていた。

 「太陽光発電だけでなく、エネルギー全般を扱う企業であることを知っていただくことが一つ。そして動力の英文表記はDORYOKU、努力(DORYOKU)を続けることで社会の動力になろう、という意味も込めています」

 おしゃれでスマートな社名が増える中で、“動力”はいかにも素朴で力強い。行動理念とする企業憲章は、旧スズキ太陽技術時代のものをそのまま受け継いだ。冒頭の第一節は『常に、お天道様に顔向けできる商品やサービスを開発する』とし、『企業情報公開や取引は、お日様のごとく公正明大に行う』と続く。太陽光発電事業のイメージを色濃く残しながらも、鈴木さんはこの語り口にこだわる。

 「あえて、スマートな言い回しにはならないようにしました。老若男女誰もがわかりやすく、地道で泥臭いほうがいいと思いまして(笑)」

屋根を熟知した太陽光発電のスペシャリスト

鈴木 竜宏(株式会社動力)インタビュー写真

 動力の前身となるスズキ太陽技術の設立は2008年、屋根部材メーカーに10年間勤務し、太陽光発電の部材開発に携わっていた鈴木さんが脱サラして立ち上げた。起業のきっかけは、2006年から中断されていた住宅用太陽光発電・補助金制度の復活である。普及拡大の波に乗れると判断した。

 「2009年1月から補助金制度が復活するというので、そのタイミングに合わせて会社を設立しました。資金は自己資金300万円だけ。当初は自宅の一室から一人でスタートしました。太陽光発電の取り付けサービスを受注し、昼夜なくCADを使って図面をつくる毎日です。幸い、大手建材商社から業務委託契約をいただいたので、仕事は順調に拡大していきました」

 日本家屋の屋根は、さまざまな形状をした瓦やスレートにあふれ、太陽光パネルを適切に取り付けることは相当の技術を要する。鈴木さんたちは太陽光パネルを屋根に設置する際の架台や部材、部品を自ら開発し、これを実際の施工に活用していった。

 「それまで他社の施工したものを見て感じていたことは、太陽光パネルを設置するための部品点数が多過ぎることでした。これでは作業者に負担がかかり、作業中の安全性も確保できないし、納期も遅くなってしまう。そこで、部品点数を減らして、作業者の負荷を減らし、なおかつ安全性を高めるための部材・部品の開発を進めました」

 とくに2011年、大手建材商社と共同開発した『スマートラック』は画期的な架台として、同社を大きく飛躍させる。従来の架台は作業者が太陽光パネルの上に乗っての作業を必要としたが、スマートラックはパネルの上に乗らず、手軽に設置できるのが特徴だ。作業者の安全を確保するとともに、部品点数を大幅に削減し、工期は2割も短縮した。当然のことながら顧客のコストダウンにもつながる。

 「屋根の形状に合わせた架台や部材をつくれることは、当社の大きな強み。太陽光発電の設置に関わる費用の10%程度は架台となります。架台は競争の少ないニッチな部分で、ほとんど価格競争に陥ることもありません。しかも部品点数が少なく、工期が2割も短縮できるのですから、お客様に選ばれるチャンスは確実に高まります」

 日本の屋根を知り尽くしたスズキ太陽技術のものづくりが、協力会社の販売力と連携しながら全国で実績を上げていく。その研究開発の拠点となってきたのが、本社内にある「人材開発センター」だ。
 大きな模擬屋根を配置し、新製品の開発を進めるとともに、強度や防水などの施工テストを実施する。さらに、社員のスキルアップのために実践的な研修や各メーカー指定の施工IDに関する研修も行い、多くの太陽光発電施工認定者を育成してきた。ものづくりの拠点でありながら、人づくりの拠点でもあるのだ。

 現在、同センターで開発に取り組んでいるのはシート型太陽光パネルである。従来の太陽光パネルのほとんどはガラス状だが、シート(布)状の太陽光パネルをつくろうという試みだ。
 「これまでの太陽光パネルに比べて、重量が5分の1から6分の1になり、施工のしやすさ、作業の安全性、お客様宅の屋根にかかる負担など、どれをとってもまったく異なってきます」
 新製品として世に出れば、これまでの太陽光パネルの概念が変わるほど、大きなインパクトを与えることになるはずだ。

鈴木 竜宏(株式会社動力)インタビュー写真

TOKYO PRO Market上場が雇用の安定感を生む

鈴木 竜宏(株式会社動力)インタビュー写真

 旧スズキ太陽技術を中心とした経営統合や動力への社名変更は、TOKYO PRO Market上場をきっかけとした経営基盤強化の一環として進められてきた。スズキ太陽技術がTOKYO PRO Marketに上場したのは2015年8月。上場を決意したのは、その1年前になる。

 「セミナーでJ-Adviserの方の話を聞いて、これだ!と思いました。というのは、当社は2008年設立からの5年計画を立て、5年目で売上10億円、帝国データバンクの評点は60点以上という目標を設定していました。この5年間、全社一丸となって取り組んできた結果、これらの目標はすべてクリアしました。次の目標をどうすべきか、みんなで考えていたときだったのです」

 2014年7月、上場に向けてのキックオフ。会社全体で管理運営の仕組みづくりなどを進め、上場までの1年を通じて鈴木さんが最も感じたのは、社員の意識変化だった。
 「上場の最大の目的は、社会的信用を高めること。故に日々の行動のハードルが高くなるのは当然です。基本として、私たちは適正なものを適正な価格で販売し、さらに付加価値を見出す、そして社会に役立つ会社であることをしっかり知っていただく。その基本の質をしっかり高めてこそ、上場企業として認められます。そのモチベーションはより鮮明になってきています」

 かつてISO9001や14001を取得したときも、全社員が高いモチベーションを持って取り組んだ。しかし、それはあくまで「品質」や「環境」などの部分であったが、今回の上場は、「会社の倫理」という側面で社員の意識が変わったという。

「仕事のモチベーションアップはもちろんですが、上場企業の社員として、社会に対する責任感や倫理観が確実に向上していますね。仕事だけではなく、オフタイムの立ち居振る舞いにもそれを感じます(笑)」

 上場後には、社員の家族から「鈴木さんの会社に入れてもらえて、本当によかった!」という、うれしい声も届けられた。さらにTOKYO PRO Market上場のメリットとして、社員の長期雇用に言及する。
 「上場企業としての看板を上げた以上、雇用を守ることも社会的責任です。会社を設立したときから社員には長期にわたって安定的に活躍してほしいと願ってきましたし、社員も同じ気持ちでしょう。上場会社でも1万人を超えるような大企業は別ですが、私どものような小さな会社は、雇用の安定感が大きくなれば、自分の裁量を発揮して会社を伸ばしていこうと思う人が増えることは十分に期待できます」

 雇用の安定感が人材面でのパワーアップを生み、今後の事業拡大にもつながっていくというのが同社の考えだ。TOKYO PRO Marketは株主数や流通株式に関する形式基準を持たないことから、上場後もオーナーシップを維持しやすいため、最初の上場市場として選んだが、今期の状況を見てから上場のステップアップも検討する。

会社をさらに強靭に。東南アジアへの展開も目指す

鈴木 竜宏(株式会社動力)インタビュー写真

 経営統合を機にまず目指すのは、旧3社のシナジー効果だ。開発力、施工力、販売力など総合力が発揮できる体制ができたうえに、営業所や設備の効率向上を実現、さらにお互いのネットワーク共有によって新規顧客開拓の幅も広がった。

 「今後は、次世代のゼロ・エネルギー住宅に不可欠なあらゆる設備の販売・施工管理に取り組んでいきます。太陽光発電システムの設備はもちろん、HEMS(家庭で使うエネルギーを節約するための管理システム)やスマートメーター、LED製品、蓄電池などの販売・施工を通して、創エネ・省エネ・蓄エネに幅広く取り組んでいきます。そういう意味でも3社の合併は大きかった」

 住宅向け事業の伸びが期待できる一方で、これまで進めてきた産業用太陽光発電システムの受注は厳しさを見せている。しかし、ニーズの発生する場所さえしっかり見据えていれば、産業用の仕事も続くという。

 「確かに売電を主事業とするための産業用は減少傾向ですが、各産業の工場ではまだまだ省エネや創エネのニーズがあります。自社工場のエネルギーを独立電源にしたいと思う経営者は数多くいると思うし、海外でも太陽光発電システムを欲しがっている工場はたくさんあります」

 同社の平均年齢は30歳前半。鈴木さんは、この若さも同社の大きな強みと確信している。ゼロ・エネルギー住宅を実現するためのあらゆる製品開発を進めるとともに、若いときから視野を広げ、世界へ勇躍していってほしいと期待する。

 「長期的には、国内で蓄積した太陽光発電システムの施工をはじめとする創エネ・省エネ・蓄エネの技術を、東南アジアへも展開したいと思っています。たとえばODA事業がありますが、それを獲得するためには、日本として海外に出しても恥ずかしくない立派な企業に成長していなければならない。今回のTOKYO PRO Market上場は、将来の海外進出のためにも大きな第一歩となっています」

 ゼロの電力で、無限の動力を。同社のスローガンだ。限られた資源を効率よく使い、消費電力をゼロに近づけることで、世界で使える動力を無限に増やす。地球規模での人々の幸せは、私たちの大いなる夢でもある。

(文=中田充樹 写真=高木志帆)2016/04/05

プロフィール

鈴木 竜宏(株式会社動力)プロフィール写真
鈴木 竜宏
株式会社動力 代表取締役
1971 年
愛知県生まれ
1994 年
株式会社サンリオ(現・株式会社エスアンドビー)に入社
1998 年
株式会社屋根技術研究所に入社
2008 年
株式会社スズキ太陽技術を設立、代表取締役社長に就任
2015 年
TOKYO PRO Marketに株式上場
2016 年
協力会社を吸収合併。社名を「動力」に変更

会社概要

ロゴマーク
株式会社動力
  • コード:1432
  • 業種:建設
  • 上場日:2015/08/18