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株式会社やまぜんホームズ
  • コード:1440
  • 業種:建設業
  • 上場日:2017/03/03
前野 一馬(株式会社やまぜんホームズ)

家づくりのこだわりが成長を支える

前野 一馬(株式会社やまぜんホームズ)インタビュー写真

 「衣食住足りて礼節を知る」という故事が表すように、人が人らしく生きていくためには「衣食住」が不可欠である。この人らしく生きていくための食と住、中でも「住」に注力し、着実に成長を遂げてきたのが三重県桑名市に本社を構えるやまぜんホームズである。

 同社が主戦場としているのは戸建て住宅市場。実はこの市場、世帯数の減少や住宅の長寿命化などにより新設住宅着工戸数が減少するなど、年々厳しさが増している。そんな状況下でも同社は、商圏とする三重・愛知・岐阜・滋賀で順調に業績を伸ばしている。

 キャッチフレーズ『十年先もお宅でお会いしましょう』は、丈夫で快適な家づくりと丁寧なアフターサービスをお客さまに提供するという同社の約束でもある。木造建築の安全性を決める基礎工事や構造を、施工現場の見学という機会を設けてお客さまに開示する「『ぱくっと』まるわかりバスツアー」は、その約束を果たす施策のひとつだ。

 バスツアーは家ができる工事の流れに沿って、床下となる基礎工事の現場見学からスタートする。コンクリートを流し込む前の配筋などを見たあとは、外装工事前の木の骨組み、そして完成した家としてモデルハウスを見学する。

「施工現場をご覧いただくだけが目的ではありません。それぞれの現場で、現場監督や職人、大工の棟梁、設計士から、工事の目的やこだわりについてお話しさせていただいています。どんな人が、どんな思いでお客さまの家づくりに関わっているのかということをお伝えしたい。ときには、すでに家にお住まいの施主さま宅におじゃまして、実際の住み心地を話していただくこともあります。スタッフやお客さまをふくめた人と人とのつながりを大事にしていることを実感いただけることが、高い成約率につながっているのだと思います」

 月1回のバスツアーは参加者の口コミで評判になり、今ではマイクロバス3台分の定員が毎回満員になるため、「バスを4台に増やすことも考えている」と前野さんは意気込む。

 このバスツアー、評判になるのにはもうひとつポイントがある。昼食サービスがあるのだ。お客さまにとって家を建てることは一大事だが、まずは家族みんなで行楽気分で参加して「家づくりを幸せの思い出づくりにしていただきたい」という前野さんのはからいでもある。だが、それだけではない。

「昼食をとっていただくのはうちが経営する飲食店です。私はずっと『住』にこだわって仕事をしてきましたが、あるとき『食』の大事さに気づき、2010年に外食産業に参入しました。和食にこだわり、愛のあるメニューの開発、店舗運営に注力していますが、それをわかってもらうには、来店いただくしかありません。住宅事業も飲食事業もとにかく当社を知ってもらうことが大事なので、バスツアーの昼食サービスは販促の一環として捉えています。楽しければお客様が口コミで広げてくれますからね。私はモノを売りたいのならまずお客さまの胃袋をつかめと言っているぐらいなんですよ(笑)」

売上50億円を目指し上場を決意

前野 一馬(株式会社やまぜんホームズ)インタビュー写真

 同社には、税抜き1,500万円の定額で、間取りを完全に自由に設計できる『わんこパック』という商品がある。前野社長が、注文住宅で一番陥りやすい予算オーバーの心配なしに家づくりを楽しめるようにと開発した人気商品だ。

 次々とユニークな事業を考え出す前野さんは、農家の長男として生まれた。戦争で身体を壊した父の代わりに家族を支えるため、中学卒業後、昼は鉄工所で働き、夜は定時制の工業高校で勉学に励んだ。1日も欠席せず高校を卒業したあとは、鉄骨屋に就職してコツコツと懸命に働きながら「30歳までには独立する」という夢を育んだ。

 そして1978年、29歳のときに、リフォームを請け負う同社の前身であるやまぜん開発を創業した。1985年に株式会社化し、従業員も増やして事業を拡大していく。2003年に現在の社名に改称すると同時に、事業を住宅業に絞り、木造建築を主流とした注文住宅メーカーとして地位を確立していった。

「個人事業主には売上3億、5億、10億の壁があると言われています。10億になると資金繰りが大変になります。経理は妻が担当していたのですが、心労は相当なものでした。10億になる前に経理を他人に預けないと夫婦の危機が訪れると判断し、人を雇いました。次は30億の壁です。私の目の届く範囲だけでやっていては壁を越えられないと、安心して仕事を任せられる人を育てることにしました。30億の壁の前では5年ほど立ち止まりましたが、そのとき会社としての組織ができていきました」

 売上が30億円を超えたのは10年前。従業員は60人近くなっていた。50億を目指すにはさらなる資金調達が必要だと、前野さんは上場しようと行動に出た。

夢への第一歩としてTOKYO PRO Marketに上場

前野 一馬(株式会社やまぜんホームズ)インタビュー写真

 前野さんは29歳で会社を設立したときから、いつかは上場したいと考えていた。10年前、いよいよそのときだと大手の経営コンサルタントに指導を仰ぐが、このときは上場に至ることができなかった。

「コンサルタントは就業規則をつくらなければいけないとかすべきことは教えてくれますが、それをどうやってやるのか、基本的なことは教えてくれなかったのです。なぜなら、そのコンサルタントがこれまで主に担当してきたのは大手企業。コンサルタントはまさかそこから指導する必要があるとは思っていなかったのでしょう。私たちもまた、それを実施できる体制づくりからやらなくてはいけないと気づいていませんでした」

 苦い挫折を経験してから8年ほど経った2015年、愛知県で住宅ビジネスを展開する株式会社TSONがTOKYO PRO Marketに上場したとニュースで知った。

 興味が湧き、同市場について調べた前野さんは、TOKYO PRO Marketは一般市場に向けての登竜門的な位置づけで、上場の数値基準がなく、上場適格性の判断や上場までの一連の手続きなどを指導してくれるJ-Adviser制度があることを知る。

「TSONの上場は大いに刺激になりましたね。まずはこの市場に上場し、ステップアップしていこうと考えました。今回は失敗するわけにはいきませんから、IPOの経験者を2人雇いました」

 一人は財務、もう一人は労務管理の経験者を雇用し、J-Adviserのアドバイスに従い内部統制や管理体制などを整備していった。そして2017年3月、TOKYO PRO Marketに上場を果たす。

「上場して一番変わったのは"自分自身"だ」と前野さんはいう。社会的な責務をこれまで以上に感じ、人と話すのも、運転するのも慎重になった。「上場は経営者の意識を変える」、その意味においても利便性の高いTOKYO PRO Marketの存在意義は大きく、チャレンジしがいのある市場と捉えている。

 社員にも、人として成長を促すようなキャリアパスを用意したいと、社員教育の充実を図っている。また、東証上場を示すロゴマークは、お客さまに更なる信頼と安心感を与え、東証上場のステータスは、ミャンマーに拠点を構える際にも有効に働いた。
 
「売上100億円を目指して事業を展開していますが、それを実現するには最低でも20~30億円の投資が必要です。そのための資金調達を目的にできるだけ早く一般市場へ上場したいと思っています。その準備として、本部制から事業部制にして、執行役員制度に変更することで経営をスリム化しました」

日本の文化を海外へ。海外の文化を日本へ

前野 一馬(株式会社やまぜんホームズ)インタビュー写真

 将来の展開として、事業拡大のために海外展開を視野に入れている。そのひとつは、ミャンマーやフィリピン、インドネシアなどの開発途上国の支援をすること。3年前から海外の実習生を受け入れ、日本の技術、文化、社会のあり方などを伝えている。今年は、ミャンマーに設けた拠点から、インフラ整備を推進するコンサルティング事業を展開していく予定だ。

「ミャンマーはまだまだ発展途上で、停電もあるし、上下水道が発展していないため水道の水を飲むことができません。そうした問題を解決する手伝いをしていきたいのです。ASEANの人口は6.4億人。日本と比べると6倍のマーケットがあるということです。これを見逃す手はありません。私たちにはこれまで地域に根ざした街づくりをしてきた経験があります。この知見を生かして、ASEANの国々の発展に貢献するビジネスを推進し、当社の成長につなげたいですね」

 趣味は海外旅行で、とくに欧州の町並みが好きで「欧州の国々の7割は巡った」と笑う前野さん。夢の翼はますます大きく広がっている。

「わびやさびが感じられる庭園や茶室といった日本の木造建築のすばらしさを、海外の人にも味わってもらいたいのです。それで、海外にハウジングセンターを建設したらどうだろうと考えています。また、米ハリウッドに、マリリン・モンローの墓もある、広大な公園の中に形成された霊園『フォレスト・ローン・メモリアル・パーク・セメタリ』を去年、視察してきました。これを日本につくりたい。実現するためにも資金は必要です。何としても一般市場に上場し、この夢を実現させたいですね」

(文=中村仁美 写真=黒柳正美 編集責任=上場推進部TOKYO PRO Market"創"編集チーム)2018/04/10

プロフィール

前野 一馬(株式会社やまぜんホームズ)
前野 一馬
株式会社やまぜんホームズ 代表取締役社長
1949 年
三重県生まれ
1968 年
阿倉川工業所入社
1976 年
やまぜん開発を設立
1987 年
株式会社やまぜん開発設立、代表取締役就任
2003 年
株式会社やまぜんホームズ設立、代表取締役就任

会社概要

株式会社やまぜんホームズ
株式会社やまぜんホームズ
  • コード:1440
  • 業種:建設業
  • 上場日:2017/03/03