上場会社トップインタビュー「創」

コンピュータマインド株式会社
  • コード:2452
  • 業種:情報・通信業
  • 上場日:2016/06/23
竹内 次郎(コンピュータマインド株式会社)常に上を目指してチャレンジ! 越えてみれば目前の壁はそれほど高くはない

派遣先で発見した課題から生まれた事業が大きく成長

竹内 次郎(コンピュータマインド株式会社)インタビュー写真

 今では一般的な用語として使われている「IT」。この言葉が浸透し始めたのは1990年代後半からで、それ以前は情報産業や情報サービス産業という言葉が使われていた。同産業の存在感が表面化してきたのは1970年代、80~90年代にかけて急成長を遂げ、1999年には政府も情報産業や情報サービス産業に期待を寄せる方針を打ち出した。コンピュータマインドは、IT産業の黎明期である1978年に設立、IT産業の発展と共に成長してきた。

 同社は2005年7月、従業員数15人と小規模な組織ながら、グリーンシート銘柄として株式を登録。そして2018年にグリーンシート銘柄が廃止されるという案内を受け、会社として公の場に身を置き続けるための方法を模索した結果、2016年6月、TOKYO PRO Marketに上場する。

 同社の主力事業は情報システム開発および運用支援。これだけ聞くとよくあるITサービス会社と思うかもしれないが、そうではない。同社の成長のカギを握り、他社との差別化をしてきたのは新聞製作システムである。そしてこの事業を同社のコアな事業に確立したのが、現社長の竹内次郎さんだ。

「日本工学院専門学校を卒業して、設立3年目の当社に入社しました。当時の主力事業は技術者の人材派遣。私も派遣SEとして大手ITベンダーが受注したプロジェクトに参加し経験を積んでいきました。入社2年目、私は地方のある新聞社に常駐することになりました。そこで、新聞印刷が抱えている課題を知り、ITの力でこれをなんとか解決できないかと考えて提案したのが、今の新聞製作システムなんです」

 その頃、新聞印刷は鉛版を使用した凸版輪転機を使用していた。原稿通りに職人が活字を並べて作った紙型に、鉛合金を流し込んで鉛版を作る。流し込む鉛合金の温度は300度を超える。そのため、作業に携わる職人たちにとってやけどは日常茶飯事。「輪転にはさまれて、怪我をする人も大勢いました」と、現場作業の過酷さを竹内さんは振り返る。

 大手新聞社でも、まだ本格的な新聞製作システムはできていなかったが、竹内さんは、現場の環境を改善したい一心で、大手メーカーと一緒に地方の新聞社に同システムを提案して回り、ついには8社に導入した。現在、同社は新聞製作システムに関して、企画提案からサポートまで一貫して請け負う体制を構築している。「新聞製作システムについて、当社ぐらいノウハウを持っている企業はいない」と竹内さんは胸を張る。

竹内 次郎(コンピュータマインド株式会社)インタビュー写真

社員の声に押されて社長に就任

竹内 次郎(コンピュータマインド株式会社)インタビュー写真

 SEとして実績を積み、取締役として経営にも携わっていた竹内さんが社長に就任したのは1999年だ。竹内さん39歳のときである。その背景にあったのは、当時のIT業界を取り巻く労働環境の悪さだったという。

「当時のIT業界は徹夜が当たり前。休日や夜間でも呼び出されることが頻繁にありました。私も3日間徹夜し、エレベータの中で寝込んでしまったことがあります。このような状況を変えるには、そういう働き方が当たり前の時代に生きてきたトップを変えないとダメだという社員の声に後押しされて、私が代表に就くことになりました。でも、規定を作るとか、そういうことはしませんでした。ただ自分自身が毎日、19時には帰るなどして『早く帰っても進捗通りに仕事を動かすことができるんだ』と周りに示していきました。19時に帰っても、実は自宅で仕事をしていたんですけどね(笑)」

 もちろん、姿勢を見せただけで労働環境が改善したわけではない。技術者派遣というスタイルでは、常駐する会社や所属するプロジェクトの影響を強く受け易い。そこで、竹内さんは派遣業を廃止し、自社内で開発する業務請負スタイルに変更するという英断を下した。現在、新聞系システムの開発とそのテクニカルサポートのほか、サーバやネットワーク設定などのインフラ構築業務を受注しているが、今年度の有給取得率はなんと半期で40~50%。毎月の残業時間は約10時間だという。「かなりのホワイト企業でしょう」と竹内さんは誇らしそうに笑う。

 一方で、竹内さんはもう一つのチャレンジを進行していた。それがグリーンシート銘柄申請である。

「会社の将来を考えると、もっと上を目指す何かが必要だと思いました。そんなときに教えてもらったのがグリーンシート銘柄でした。次のステップアップのために、会社を公のものにしようと決めたのです」

 しかし、竹内さんの目にはそれはかなり高い壁と映ったという。その理由を尋ねると「どんぶり勘定だったので」と竹内さんは述懐する。15人いる従業員はすべてSE。経理や財務専門の担当者はおらず、兼務でなんとかやり過ごしていたからだ。どう原価計算すればよいのか、そこからのスタートだった。しかし竹内さんは諦めなかった。それには2つの理由があった。

「第一の理由は、株主の皆さんに我々がステップアップしていく姿勢を見せたかったからです。第二に、当社と同規模のIT企業を営んでいる経営者の友人たちの“希望”になりたいと考えました。『こんな小さな会社でも公な会社になれるんだ』ということを示したかったのです。その友人たちからは、『グリーンシート銘柄への登録なんて無理じゃないか』と言われましが、そう言われると余計にやってやるという意欲がわきましたね。1年かけて書類を整え、2005年7月にグリーンシート銘柄として株式を登録しました。チャレンジしてわかったことは、思っていたほど高い壁ではなかったということですね」

第2の柱となるIT事業の種を探して

竹内 次郎(コンピュータマインド株式会社)インタビュー写真

 グリーンシート銘柄に登録したことで、毎年、有価証券報告書を開示し、事業計画も株主にアピールしていかねばならなくなった。主力の新聞系システムは事業として安定しているとはいえ、新聞自体の発行部数が年々減少するなど、これからの業界を取り巻く環境は安泰とは言い難い。インフラ構築もクラウドの活用が一般的になると、案件自体が減っていくことが考えられる。同社を支える新たな核となるビジネスを企画立案する必要に、竹内さんは迫られた。そこで目を向けたのが再生可能エネルギー分野、中でも太陽光発電だった。

 2012年から、発電した電気を電力会社が買い取る全量買取制度が始まったことや、自然エネルギーへの世間の注目の高まりにより、メガソーラーの建設があちこちで始まりつつあった。太陽光発電関連分野は将来性がある。しかもシステムのレベルはまだまだ低い。チャレンジするなら今しかないと思い、竹内さんは2014年9月、同社は再生可能エネルギー活用事業に乗り出したのだ。

 ところが、のちにTOKYO PRO Marketに上場する際、会計処理も労務も問題がなかった同社だが、この事業がネックになった。J-Adviserからどういう目的でこの事業を位置づければよいのか、きちんと株主に説明できるよう整理しなければならないと指摘が竹内さんを悩ませた。

 再生可能エネルギー活用事業に取り組むことによって、「システムの課題」を見つける環境ができる。その課題を解決することこそ、次のIT事業の種になるのだというシナリオが、竹内さんの頭の中ではできていた。2016年5月にコンピュータマインドエナジー1株式会社を子会社として設立し、太陽光発電所の建設を目指したのだが、これだけを見ると、IT事業とはあまりに異なる業態だったのだ。

「太陽光発電所を設置するプロジェクトでは、コンピュータマインドの立ち位置を明確にした契約書を作成しなければなりませんでした。一番大変だったのは、その作成にあたり、指摘される言葉の意味が理解できなかったことです。頭にすっと入ってこないので、直せといわれても、どうしたらいいのかわからない。それでも、弁護士と相談しながら、ゼロから契約書を作り直していくうちに、だんだん我々ができること、やるべきことが整理できてきました」

 現在、再生可能エネルギー活用事業は、『再生可能エネルギーシステムにおける発電量のコントロール、システム異常監視による自動復旧処理などのシステム開発、および太陽光発電に関するプロジェクト管理』と位置づけている。こうして、再生可能エネルギー活用事業の事業内容とその目的が明確になり、2016年6月、TOKYO PRO Marketへの上場を果たした。

 上場したことで、次の目標が見えてきたと竹内さんは目を輝かせる。マザーズへの上場だ。しかしそのためには現在の5~6倍の年商を上げる必要がある。そのカギになるのが、再生可能エネルギー活用事業だ。

 2017年2月、和歌山県で1.2メガワットの太陽光発電所「かつらぎソーラーパーク」での発電・売電事業が始まり、さまざまな課題がわかってきた。例えばシステムの異常監視システムの通信手段として使われているのは、第3世代移動通信システム(3G回線。ガラケーに採用されている通信規格)だが、送信されるデータのサイズは小さいため、通信品質の高い3G回線を使う必要はないのだ。今ならでIoTなど小さなデータ向けの通信技術も登場しており、それを使えば通信料が年間数百円で収まるようになる。そういう新たな通信技術を採用した監視システムの開発も考えられる。発電量を電力会社に報告する仕組みも、IT 化のターゲットだ。関西電力のサービスエリア内ではスマートメーター化がまだ進んでいない。発電所に設置されている売電メーターもアナログ式のため、わざわざ人を派遣して検針してもらっているのだ。

「売電メーターがデジタル化されるにはまだ時間がかかるでしょう。では、どうしたら人を派遣する必要がなくなるか。自動でメーターの数値の写真を撮って送るというソリューションではどうか。このように実際に発電所を運営しているからこそ、わたしたちは課題を見つけ、そのソリューションを考えることができる。こういう一つひとつのソリューションが、新聞系システムに続く新たなIT事業の柱になると思っています」

竹内 次郎(コンピュータマインド株式会社)インタビュー写真

将来的にマザーズ上場を目指す

竹内 次郎(コンピュータマインド株式会社)インタビュー写真

 同社の売上を拡大する施策はそれだけではない。もう一つが家庭のIT化へのアプローチである。今、AIが搭載されたスマートスピーカーが話題になっているが、キラーアプリは登場していない。スマートスピーカーを軸とした家庭のIT化は、これから開発の本番を迎える。だからこそ、その分野に積極的に乗り込んでいくという。

「『今日の特売は何?』とスピーカーに問いかけると、『○○スーパーで玉子が100円で売っています』と答えてくれるようなアプリがあると便利だと思いませんか。これは単純な例ですが、そういう誰もが使え、生活がより豊かになるアプリケーションの開発に取り組んでいきたいのです」

 新たな分野に乗り込んでいくには、その技術に明るい優秀な技術者が必要になる。だが、同社がこれまで蓄積してきたIT技術は新聞製作システムやエンタープライズ環境におけるインフラ構築で、コンシューマーを対象としたアプリケーション開発やAI関連の開発には土地勘はないのではないか。

「人材についてはなにも心配はしていない」と竹内さんは笑う。竹内さんの周囲には、仲間の社長が率いるIT会社がいくつもあるのだが、社長の高齢化が進んでいる。何年にもわたり事業を堅調に維持してきているが、残念ながら、その事業を受け継ぐ後継者がいない。そういう会社の事業を引き取ることで、人材を確保し、事業拡大を図っていくことを考えているという。新しいことへのチャレンジはつきることがない竹内さん。常に上を目指すそのモチベーションはどこからきているのか。

「社会に貢献したいという気持ちだけですね。とくに私を育ててくれたIT業界には貢献したい。今の若い人たちはプログラミングなどの個々の技術はあっても、ITをどう適用すると課題を解決できるのかがわかっていない人たちが多いんです。そういう人たちに私が培ってきたノウハウを教えることが、ITの未来を拓く。それが当社の将来にもつながっていくと思うんです。」

 将来的なマザーズ上場を目指し、これからも竹内さんの挑戦は続いていく。小さな会社の“希望”として、後進へメッセージをお願いした。

「何年も事業を継続している会社なら、TOKYO PRO Marketへの上場は無理なことではありません。やればできる。わたしたちのマザーズ上場も障壁は高いですが、無理だとは思っていません。」

 再生可能エネルギー活用事業とIT事業をうまく連携することと、家庭のIT化事業への進出が同社の今後のカギを握る。いずれも新しく立ち上がった分野で、竹内さんがどんな手腕をみせていくのか、期待は尽きない。

(文=中村仁美 写真=戸塚博之)2017/10/30

プロフィール

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竹内 次郎
コンピュータマインド株式会社 代表取締役社長
1960 年
富山県生まれ
1980 年
日本工学院専門学校卒業後、コンピュータマインド入社
1999 年
代表取締役就任
2014 年
再生可能エネルギー活用事業を開始

会社概要

コンピュータマインド株式会社
コンピュータマインド株式会社
  • コード:2452
  • 業種:情報・通信業
  • 上場日:2016/06/23