上場会社トップインタビュー「創」

株式会社歯愛メディカル
  • コード:3540
  • 業種:卸売業
  • 上場日:2016/06/17
清水 清人(株式会社歯愛メディカル)トップ画面

歯科材料のコストダウンに挑戦し、圧倒的なシェアを獲得

清水 清人(株式会社歯愛メディカル)インタビュー写真

 歯愛メディカルの「歯愛(しいあい)」は、文字通り、歯を愛するという意味だ。歯科医だった清水清人さんが2000年に歯愛メディカルを設立、歯科医院向けの総合通販サイト『Ciモール』をスタートした。現在、オーラルケア用品や医薬品、歯科技工用の材料、白衣やサンダルなどの歯科材料全般を取り扱い、そのアイテム数は約4万点にも及ぶ。2016年度の年商は203億円。歯科系通販業界では紛れもなく国内トップ企業だ。
 さらに今日では、歯科医院向けだけでなく、動物病院や介護施設、一般医科クリニックを対象としている。

「歯科医院に向けて販売していたガーゼやグローブ、マスクなどは、歯科だけでなく、動物病院や介護、医科クリニックにでも共通して使えるものです。医療系通販をさらに深掘りして、この分野ではどこにも負けない体制をつくっていくつもりです」

 そもそも歯科医だった清水さんがなぜ会社経営に乗り出したのか。歯科医院の運営で痛感したことは、歯科医院向けのオーラルケア用品がことごとく高価だということだった。

「患者さんのために、治療後のメンテナンスの重要性をお話しするアフターフォローなどを診療時間外に行っていました。そこで患者さんと対面するうち、『オーラルケア用品が、もっと使いやすい性能と価格で提供できたらいいのに』という思いを強く持つようになりました」

 そんな折、東京の講習会の帰りに浅草の玩具の問屋街を通った際に、玩具が非常に安価で販売されていることに驚く。最低購入単位数が多かったので、一緒にいた歯科医の仲間と共同購入して分け合ったことで、商品を割安で購入するためのヒントを得た。そして38歳の時、大学の同窓会報で「四十にして惑うな、逆に今だったら惑ってもいいのかな?」という先輩の投稿を読み、“惑うこと”を決断する。歯科医を続けながらの会社設立だった。
 清水さんが最優先したことは、自身の歯科医としての経験と、患者と向き合ってきた体験から、「売れる商品」を越えるユーザーサイドの「欲しかった商品」の開発だ。

「歯科衛生士や技工士と協力しながら、徹底してユーザーサイドの視点に立った開発とコストダウンを進めました。たとえば、歯ブラシの製造も素材から組み立て、包装に至るまで数社のメーカーが参画してコストダウンの検討を行いました」

 歯ブラシや紙コップなど消耗品を中心に、「こんな商品がこんな価格であったらいいな」というお客様の声を聞き、お客様の目線に立ちながら、高品質ながら低価格の商品を開発、販売形態は中間コストのかからない通信販売とした。その結果、歯科医や患者などユーザー志向の商品は圧倒的な支持を得て、全国歯科医院7万軒のうち6万軒が同社の商品を購入するまでになる。

ベーシックな商品・サービス開発にこだわる

清水 清人(株式会社歯愛メディカル)インタビュー写真

 歯科医院向けの消耗品の通販から始まり、物販点数を徐々に増やすとともに、医療系通販ではこれまでになかった新サービスの提供にも取り組んできた。とりわけユニークなのが、太陽光発電(自然再生可能エネルギー)を活用した電力事業である。本社やロジスティクスセンターに太陽光パネルを巡らせ、地域の電力会社に対する売電事業を2015年2月に開始し、また歯科医院等取引先への電力供給(小売)を目的として電力小売取次事業「Ci電たる」を2016年4月より開始している。

「私たちが力を入れているのは、『ベーシック』に強みを持つことです。ピラミッドで例えれば、頂点の圧倒的な先端技術や商品を狙うのではなく、底辺の広いところで誰もが利用する商品やサービスの提供です。そのほうがたくさんのお客様に喜んでいただけますから。
 電力も、どこの歯科医院も使うベーシックなものです。当社は200Vにも対応していて、歯科医院向けにはベストな料金体系だと思っています。現在、電力の契約は4,000件超で解約は0件です。1合目に上らなければ2合目が見えないように、どんな事業として発展するかは実行してみなければわかりません。電力も売れることがわかったので、次の展開が見えてきました」

 その他にも、歯科ホームページの無料制作や低価格での運営管理サービス『デンタルモール』、予約システムサービス、CAD/CAMセンターでの技工物提供など、ITを駆使してさまざまな角度から歯科経営の支援サービスを展開している。すべてのサービスでスピード感とローコストを実現するために、システムづくりからコールセンター、ロジスティックに至るまで、そのほとんどを自社で人材を確保し育成してきた。

「一般的にホームページを制作する場合、地域の制作会社に発注するでしょう。当社は、歯科医院向けに複数のテンプレートを用意することで、制作料金をリーズナブルに抑えています。全国に数多くのお客様がいるので、これまで1,000件以上のお客様に活用いただいています。
 内部制作するのは、お客様のご意見・ご要望の声を直接聞いて、サービスの改善や開発に迅速・的確に対応していくことが大きな目的です。何かを改善するにしても、おそらくアウトソーシングした場合の半分以下の時間で対応できていると思います」

 コールセンターは年末年始以外の毎日20時まで、歯科通販では国内で唯一、日・祝日も18時まで営業しているので、遠隔地の医院が週末にオーダーしたものも週初めに迅速に届けることができる。自社で対応することが結束を強め、業務の効率化も実現する。

「社内の動きとしては、商品開発のアイデアを出し合ったり、意見を交換したりするランチミーティングの開催をしています。月に1回、売上・利益・問題点など、ガラス張りで双方向の社員会議も行い、風通しのよい風土づくりを意識して進めています」

 これから実施するサービスに『歯科医院向け文書保管サービス』がある。「カルテと歯の石こう模型が増え続け、保管場所に困っている」「増床せずに新規医療器具を導入したい」「従来の保管サービスに不安を持っている」「1箱からでも預かって欲しい」などの悩みや要望に応えようというもの。ロジスティックセンターを自社物件として持っていることを強みに、安価でサービス提供する予定だ。

清水 清人(株式会社歯愛メディカル)インタビュー写真

チャレンジ風土に合っているTOKYO PRO Market

清水 清人(株式会社歯愛メディカル)インタビュー写真

 将来、会社を継承することに考えを巡らしてきた清水さんは、かなり以前から上場を意識していた。「もう少し経営が安定してから」と時期を見計らっていたところ、TOKYO PRO Marketのプロモーションを受け、決断した。

「私どもはずっとチャレンジを続けてきましたので、チャレンジングなマーケットであるTOKYO PRO Marketは当社の社風に合っていると思いました。また、不特定多数の株主ではなく、一定のオーナーシップを維持することができるマーケットであること、コスト的にもメリットを感じました。さらに日本の中小企業の新しいスタイルを実現するマーケットではないかとも思いました。会社の知名度アップにもつながります」

 清水さんが言うところの「日本の中小企業の新しいスタイル」とは何か。家業で代々事業を継続していくのは、時代状況も若者の心情も変わっていて、難しくなっている。会社を次の時代にスムーズにバトンタッチしていくためには、上場して一定の知名度や信用度を得ていたほうが人材も集まりやすいということだ。そのための最適なツールとして上場を選択。
 そして2016年6月、歯愛メディカルはTOKYO PRO Marketに上場。その効果を実感したのは、まず海外企業からの反応だった。

「当社の製品の半分以上が海外で生産されています。当初、国内で生産・供給してくれる企業が少なかったための選択でした。上場を、海外の取引先の方々はとても喜んでくださいましたし、ビジネスもこれまで以上に有利になったと思っています。以前は私一人が背伸びをしながら駆けずり回っていた状態でしたが、会社としての信用力を高めることができました」

 上場によって、地元紙が決算発表を取り上げてくれるようにもなり、知名度は確実に上がってきた。リクルートも有利になった。何よりも企業同士のコラボレーションがよりやりやすくなったことを実感している。

上場がきっかけで大手企業と資本提携へ

清水 清人(株式会社歯愛メディカル)インタビュー写真

 上場も間もない2016年10月、歯愛メディカルはエア・ウォーター株式会社と資本業務提携をした。エア・ウォーター社は、医療用ガス、病院設備工事などのサービス、医療機器、在宅医療など高度医療分野から在宅医療までトータルで医療現場をサポートする、東証1部の大手企業だ。BtoBビジネスを中心に近年は歯科関連事業にも進出している。
 業務提携の内容は、①歯科関連事業、医療関連事業ならびに生活関連事業における相互支援、②合理化・コストダウンの施設・設備の相互利用、③両者の人員・販路の相互活用ならびに人事交流、の3つである。

「エア・ウォーター社は医療関連のグループ企業も持っていますし、施設・設備も多いので、当社が新たな拠点を設けていくときにアシストしてもらえます。逆に、当社は歯科をはじめ医療関連のマーケットを持っているので、エア・ウォーター社の販路開発にご協力できるでしょう」
 
より生活者に密着したサービスを開発し、BtoC領域で事業を拡大したいエア・ウォーター社と、医科・介護関連を拡大したい歯愛メディカル双方に高いシナジー効果が期待できるというわけだ。歯愛メディカルとの資本業務提携を発表したエア・ウォーター社のニュース・リリースでは、歯愛メディカルを「歯科医院・歯科技工所のみならず生活者のニーズを的確にとらえた商品開発力と通信販売ノウハウのビジネスモデルにおいて圧倒的な実績を有する」と評している。

「資本業務提携は、TOKYO PRO Marketへの上場後にエア・ウォーター社から具体的なアプローチをいただきました。上場したことにより、会社としての信用力、財務情報の信頼性や透明性が高まり、株式の価値もクリアになっていたので、互いの不安要素は取り除かれ、提携交渉をスムーズに進めることができました。
 実は、昨今、世界一の外資系歯科商社が日本市場に参入してきたので、歯科ディーラーはかなり厳しい状況に立たされています。私たちはこれから一層お客様のために努力し、大手企業の対抗勢力としての存在感を示していきたいと考えています」

 歯愛メディカルは、レントゲン装置や歯科技工物を製造するCAD/CAMマシン、3Dプリンターなどの販売事業にも積極的に取り組んでおり、とくにCAD/CAMマシンの販売実績では国内最大手となっている。今後は、エア・ウォーター社との資本業務提携を生かし、医療・介護分野の事業を拡大し、さらには再生医療にも取り組んでいく予定だ。国内ユーザーに圧倒的支持を得て、日本の雄になるべく強い使命感を持って世界一に立ち向かっていく。

(文=中田充樹 写真=中西優)2017/02/27

プロフィール

清水 清人(株式会社歯愛メディカル)プロフィール写真
清水 清人
株式会社歯愛メディカル 代表取締役社長
1960 年
石川県生まれ
1985 年
岐阜歯科大学歯学部卒業
1987 年
歯科医院を開業
2000 年
株式会社歯愛メディカル設立

会社概要

ロゴマーク
株式会社歯愛メディカル
  • コード:3540
  • 業種:卸売業
  • 上場日:2016/06/17