上場会社トップインタビュー「創」

株式会社じげん
  • コード:3679
  • 業種:情報・通信業
  • 上場日:2013/11/22
平尾 丈(株式会社じげん)IT第四世代の次世代起業家“次元を超える”構想で世の中を変革する

"量質転換"の法則でスピード出世

平尾 丈(株式会社じげん)インタビュー写真

 1982年生まれ。中学・高校時代は得意のゲームで数々の大会に参加して優勝、大学時代に「在学中に1万人の著名人に会う!」と宣言して2年で達成。在学中に100を超える商売にチャレンジし、多くの学生起業家コンテストで優勝、うち2社を法人化したあと、腕試しにと行った就職活動でリクルートに口説かれ、1社を経営したまま入社。社内の賞を総なめにする実績を上げ、23歳でグループ会社の最年少取締役に、25歳でグループ最年少社長となった。

 株式会社じげん代表取締役社長・平尾丈さんの経歴は、こうした輝かしい功績で埋め尽くされている。この後も親会社からMBOして社名を「じげん」へ変更、創業以来の増収増益を果たし、MBOから3年で東証マザーズに上場…と続くわけだが、一体このスピード感は何なのだろう。これが80年代生まれの起業家というものなのだろうか。

「スピードはあまり意識したことがないですね。要領はいい方だと思いますが、20代はかなり努力しました。『1万人に会おう計画』ではアポを取るためにその人の会社の問題点を100個考えて持っていったこともありましたし、リクルート時代には実働時間だけでも世界一だと思うくらい働きましたから。この10年間の集積が30歳での上場につながったと認識しています。過去には30歳までに上場した経営者も10数名いらっしゃいますから、そこにぎりぎり、なんとか追いついたというところです」

 それにしても1万人とか100プランとか、目標設定が高すぎませんか?

「私の行動の原点には"量質転換"というのがあるんです。うちは祖父が製造業を営んでいたのですが、人がよすぎたために倒産に追い込まれて、一気に家計が逼迫したんですよ。父はお坊ちゃま育ちで頼りにならないから母が公文式の教室を始めて、子供の私はいつもひとりで留守番していました。そうすると、家に公文式のプリントしかないんです。時間を潰せる道具がそれしかないから、ひたすらプリントを解き続けて、公文式の基本である"反復練習"の癖がついてしまった。おまけに公文式には答合わせをしてはいけないというルールもあって、自力で100点を取るまでは終われないんです。間違えたら正解がわかるまで諦めずに考え続けなければならない。そういう癖が学生時代の行動にも表れて、何でも反復練習する、できなければできる方法を考え続けるということを繰り返しました。そのうちに『量をこなすと質が高まる』という量質転換の法則を実感できるようになって、それが自信と強みにつながっていったんです。もともと集中力のある方なので、これだと思ったら異常なくらいにやるんですよ。それが生き甲斐になるくらい繰り返すので、変わっていると昔からよく言われます(笑)」

 余談だが、ファミコン最盛期世代の平尾さんの家にはファミコンもなかったそうだ。ファミコンは友達の家で1日1時間。その反復練習でプロ級ゲーマーの腕を持つまでに至ったというのだから、その集中力たるや並大抵のものではない。

プラットフォーム・オン・プラットフォームという"戦わない"戦略

平尾

 若くして得た膨大な情報量と膨大な経験値。そんななか、平尾さんが一意専心の対象として選んだビジネスは「ライフメディアプラットフォーム」というものだった。

 プラットフォームビジネスとは、関連する企業の商品やサービスをひとつの場=プラットフォームに乗せることで新たな価値を生み出すビジネスのことだ。ネットの世界ではamazonや楽天、Appleの音楽配信システムなどが先発として知られている。

「最初から、プラットフォームでなければITで起業する意味はないと思っていました。プラットフォームというのはパラダイムを変えられるものだからです。ネットを軸にして市場に大きなうねりを生み出し、世の中を変えていくスパイラルを作り出す。それを衣食住、遊学働といった生活に密着するテーマでやろうと考えました。これらは人が生きる限りなくならないマーケットですし、私が事業を通じて解決したいテーマは生活における「情報の非対称性(情報が本来手にしたい人のもとにない)」という負にあるからです。私たちのビジネスで世の中の問題をどう解決できるのか。その手段としてITを使っているという感じですね」

 とはいえ2006年創業のじげんは、プラットフォームビジネスでは最後発ともいえる存在だった。そこで平尾さんは「プラットフォーム・オン・プラットフォーム」という戦略を選択した。たとえば「転職EX」でいうと、ネット上にはすでにリクナビ、マイナビ、デューダといった既存の求人サイトがひしめいている。ならばそれらのサイトが持つ情報すべてを吸い上げてデータベース化し、ユーザーが求める情報を持つサイトへ誘導する役割を担ってみたらどうだろう。そう考えて複数のプラットフォームを土台にしたプラットフォームを構築し、検索から応募までを一括してできる巨大な"場"を作ったのだ。

「求職活動をしているユーザーは、求人サイトのブランド価値には特に興味を持っていません。そこにある情報が欲しいから各社のサイトにアクセスするわけで、サイトごとに会員登録しなければならないことを面倒に感じている。つまり一度の登録で全社の情報が手に入れば理想的なわけです。でも運営企業側にはブランドこそがアイデンティティだという思いがあるので、どうしてもブランド力で集客し競合他社に勝とうという考え方になってしまう。ならば私はブランドというエゴを捨て、先行する他社と競合するのではなく、先輩方と組むことで彼らのできなかったことを一緒にやろうと考えました。元来、私は競争が好きで勝つ自信もあるのですが、戦略は戦いを略すと書きますから、『戦わない』という選択をするのもひとつの戦い方だと思うんです。先輩方の市場に数%食い込んだところで世の中を変えることにもなりません」

 プラットフォームとしては後発だが、プラットフォーム・オン・プラットフォームという領域でパイオニアとなったじげん。現在では「生活機会(より良く生きるための選択肢)の最大化」をミッションに「賃貸SMOCCA!-ex」「中古車EX」「旅行EX」など計18の分野でサイトを運営、673万人の月間ユニークユーザー数を獲得している。

カテゴリーキラーにならないことが躍進への鍵

平尾 丈(株式会社じげん)インタビュー写真

 上場から1年。第9期目に入ったじげんは、人材業界向け業務基幹システムを提供するブレインラボをはじめ3社のM&Aを行い、アジア進出への拠点として2013年にベトナムに設立した子会社の事業も順調に拡大させ、従業員数を約6倍に増やして急成長を遂げた。「この1年で使った金額は自分の歳×億よりも多い」と言う平尾さんはいま「じげんを時価総額1兆円の企業にする」というビジョンを掲げている。

「IT時代と言われて久しいのに、日本では国内市場のトップ10をいまだメーカーや総合商社が占めています。この10数年で産業間移動や序列変化などのパラダイムシフトが起きたかというと、実は全く起きていない。そこでその理由と解決策を考え、具体的な目標として1兆円という数字を挙げました。まず、なぜ兆を超える規模に育つベンチャーが出てこないのかというと、ほとんどの企業はカテゴリーキラーなんですね。ひとつの産業を深掘りして、ひとつのビジネスモデルで成長しようとする。でも、それではその産業が持つ市場規模以上には大きくなれないわけですよ。ですからじげんでは、展開領域の拡張、展開地域の拡張、事業モデルの拡張という3つの拡張を推進させる成長戦略を立てました。今後はオンラインとオフラインをさらにつなげ、M&Aや海外展開を進めて新規のサービスを創出していきます。じげんの経営理念「OVER the DIMENSION—次元を超えよ!」を実現させるため、『次元を超える事業家集団』としてさまざまなことを仕掛けていきたいと思っています」

 ブランドを否定することでプラットフォームビジネスを拡大させたじげんだが、今後は「ブランディングについても考えていく」と話す平尾さん。ただし、その視線はサービスというよりもコーポレイト、つまり"人材"に向いているようだ。

「ライフメディアプラットフォーム事業ではブランドを捨てることでゲートウェイを手に入れ、高収益の場を作ることに成功しました。ただ今後あらゆる生活分野においてプラットフォームを構築していくためには、じげんという企業に『次元を超える事業家集団』だという横串を通す必要があると思うんです。たとえば一般的な企業では社長の下で力を持つのはプロフィットセンターですが、じげんでは人事と広報を社長の直下に置いています。ここを強化することがコーポレートブランドの確立につながると思うからです」

社員は平尾丈を超え、平尾丈は孫正義を超える

平尾

 じげんには委員会制度や公募システム、社内通貨といったユニークな制度が多くあり、コーポレイトキャラクターである「じげんぶ君」というリクガメも実際に飼育されている。実に楽しそうだが、もちろん楽しいばかりではない。ほとんどの制度や事業を主体的に行うことが求められるじげんでは、究極をいえば全員が平尾丈にならなければいけないのだ。さらに、じげんは入社の難しい企業としても知られている。数年前から始めた新卒採用では、インターンシップの段階から学生に経営を体験させるらしい。

「何万もの人に会い、リクルートで人事にも携わった経験から思うのは、人というのはそう簡単には変わらないということ。ならば人材育成に手間をかけるより入口を強化した方が合理的だというのが私の考えで、面接ではその人の能力はもちろん、考え方や行動特性、根っこの部分にあるのは何かといったことを厳しくチェックします。だから社内には優秀だけど扱いづらい(笑)タイプの人や、一度起業して失敗した経験を持つ人など変わり種も少なくないんですよ。この門戸の狭さは学生の間ではもう噂になっているようで、そういう意味でのブランディングはできているかもしれませんね(笑)。事業部長以上のスタッフには短時間で人を根っこの部分で見極めるスキルも身につけさせ、社会をより良く変革する起業家や事業家集団を支えるための組織や、人事制度を作るといった試みも強化していきたいと考えています」

 合言葉は「平尾丈を倒せ!」。そして生半可では倒せるはずもなく、社内レクリエーション用に置いてあるゲームでも「大人げなく60連勝とかしている」と笑うこの社長がいま、自らの競争相手として狙いを定めているのが孫正義氏だ。

「孫さんはITの第一世代を築いた憧れの大先輩で、私は彼の後継者養成プログラムにも参加させていただいていますが、基本的に彼が打ち立てた記録は全部塗り替えなければならないと思っています。そのためにはどうするか。そんなことを考えながら、経営戦略を練ったり事業計画を立てたりするのが楽しくて仕方ないですね。ほとんど趣味の領域です (笑)」

 孫正義氏が1日1つの事業プランを考えるというエピソードを聞き、学生時代から始めた「1日に最低3つの事業プランを立てる」という反復練習も、いまだ続けているそうだ。ちなみに昨日は「宇宙をテーマに考えていた」そうである。

平尾 丈(株式会社じげん)インタビュー写真

(文=道行めぐ)2014/12/22

プロフィール

平尾 丈(株式会社じげん)プロフィール写真
平尾 丈
株式会社じげん 代表取締役社長
1982 年
東京都生まれ
2004 年
大学在学中にITベンチャー2社経営。東京都主催 学生起業家選手権 優勝
2005 年
慶應義塾大学環境情報学部卒業 SFC AWARDを受賞。在学中に立ち上げたITベンチャー1社の代表取締役を兼任したまま株式会社リクルート入社
2006 年
リクルートグループ最年少取締役に就任
2008 年
同社の代表取締役就任し、リクルートグループ最年少社長に
2010 年
MBOにより完全独立、社名を「株式会社じげん」へ変更
2012 年
「Deloitte Technology Fast50 Japan」、「Deloitte Technology Fast500 Asia Pacific」、「Great Place to Work(R) Institute Japan」働きがいのある会社ベストカンパニー など受賞
2013 年
東証マザーズ上場。「EY Entrepreneur Of The Year Japan 2013」 Challenging Spirit(チャレンジングスピリット)部門 大賞受賞

会社概要

株式会社じげん
株式会社じげん
  • コード:3679
  • 業種:情報・通信業
  • 上場日:2013/11/22