「信頼」という鎧をまとい、地味に見える裏方業界に革命を起こす

株式会社アサンテ
  • コード:6073
  • 業種:サービス
  • 上場日:2013/03/19
宗政 誠(株式会社アサンテ)トップ画面

シロアリ業者のプライドを取り戻すために

宗政 誠(株式会社アサンテ)インタビュー写真

 
 近年では、高度経済成長期に次々と作られた建造物の老朽化などが顕在化し、木造家屋の上手な再利用に注目が集まっている。その潮流中で、ちょっとしたブームになりつつある“古民家リノベーション”。
加えて総務省が5年ごとに実施する最新の「住宅・土地統計調査」によれば、日本全国に現存する築50年超の木造の古民家はざっと156万戸以上。築50年未満の物も含めれば、その数は数倍にも膨れ上がる。こうした木造家屋を影で支えているのが、専門的なメンテナンス業者だ。なかでも代表的な業種として挙げられるのが、シロアリ駆除業者である。

 日本は総じて湿気が多いにもかかわらず、地面と床下の間が非常に狭い、通風の悪い木造家屋が少なくない。
加えて、床下の通気を考慮していない設計も多く、シロアリ駆除の必要性は慢性的に高いといえるだろう。そんな状況にいちはやく着眼し、約半世紀もの間、シロアリ駆除作業という裏方に徹し、リーディングカンパニーとして成長する迄に至っているのが、株式会社アサンテだ。シロアリ駆除に対するニーズの高まりを昭和40年代に予感していたという、代表取締役社長の宗政誠さん。創業当時をこう振り返った。

 「国民が高度経済成長の波に乗って、一生懸命頑張っている時代。日本列島改造論などもあって、一気に住宅着工件数が増えた。そんな昭和40年代に、アルバイトでシロアリとかゴキブリの駆除を経験したのが、この仕事と接した最初でした。そこで感じたのは、シロアリの勢いでしたね。始めはほんの少しの発生と被害でも、どんどん繁殖し、10坪、20坪と侵食していく。私自身、九州で育ち、地元はシロアリが多い場所なんです。そんなこともあって、これだけ宅地開発が急速に進むなら、シロアリ駆除は益々、大切な仕事になっていくなと実感することになったんです。」

 昭和45年には独立を果たし、数年後には初の営業所も発足。順調に見えた会社経営だったが、昭和54年には大きな転機を迎えることになる。当時、急増したシロアリ駆除業者のずさんな仕事や詐欺まがいの契約が大きな社会問題に発展し、悪い意味で注目されてしまったんです。その煽りを受け、宗政さんの会社への発注も激減してしまう。

「大きな危機でした。でも、シロアリはそういう状況でも増え続けますし、困っているお客さんはいらっしゃるわけです。そこで感じたのは、この業種に求められる誠実性ですね。床下で作業をするものですからお客さまは私たちが何をしているかわかりませんし、出来上がりの商品をお見せできるわけでもありません。だからこそ、誠実さ、信頼感といったものが非常に大切なんです。そんな時、静岡の農協さんと組んで仕事をしてみないかとお誘いがあって、これがいいキッカケになりました。農協さんは地域社会との信頼関係をしっかり築いた組織です。その農協さんと組むことで、弊社に対する信頼感も高めよう、私たち自身も切磋琢磨足して仕事をしようという方向性が定まっていきました」

 この静岡における提携を端緒に、神奈川、千葉、東京と・・、農協との関係を拡大構築していった宗政さん。多くの顧客は、農協と組んだ同社を信用し、安心して仕事を依頼してくれた。逆風を受け続ける同業他社を尻目に、業績が上がっていったのだ。
同時に住宅メーカーとの提携を止めたことも功を奏した。当然ながら、住宅メーカーは設計、建築業務に重きを置く。従い、シロアリ駆除業者の扱いはアフターサービス的扱いで、どうしても低く見られ、利益率も高くない。質のいいサービスを提供しても、その価値を理解してくれる相手でなければ、ビジネスは軌道に乗ることは無い。自社の商品価値に絶対の自信を持っているからこそ、住宅メーカーへの安売りを良しとしなかった。思い切って農協との提携に絞ることで、作業効率向上や利益率のアップを実現することにもなったわけである。

ひとつのミスも許されない、仕事のプロセス

宗政 誠(株式会社アサンテ)インタビュー写真

 
 会社を成長させていく過程で、最も大切にしてきたのは「信頼」だと何度も口にする宗政さん。その理由について、こう説明する。

 「訪問販売という方式は非常に厳しいもの。予約をしてもらい、調査にうかがい、契約をいただき、実際の作業と、お客さまと接する機会が大変多い。そのプロセスのどこかでほんの少しでもミスがあれば、すぐにクレームへとつながってしまいます。ですからお客さまのご自宅に行き、どこに車を止めるかさえ、気を配る必要があるわけです」

 今では60を数えるアサンテの営業所だが、全国どの営業所でも同じレベルのサービスを提供できるよう、人材教育を徹底。営業の人間と、現場で作業する人間が、常に共通の認識を持って仕事に向かう姿勢を重視する。営業の社員でさえ、床下にもぐり、その住宅の状況をきちんと理解しなければならないし、シロアリ駆除にあたる社員も営業のプロセスを知る必要がある。こうした全社員の相互意識の共有が、顧客への信頼へとつながっていくと、宗政さんは信じている。

 「営業の対応も良かった。それに若い作業員が泥だらけになって床下を這いまわってくれた。それで初めて、お客さまには納得していただけるわけで、そこから口コミが広がるかもしれません。常にお客さまと接しているからこそ厳しい面もあり、きちんとした仕事をした結果、信頼が築ければ、それが大きな武器にもなっていくんです」

 人材育成の中心に据えるのが、90年に設立した総合研修所(現・三ヶ日総合研修センター)だ。ここで社員は集合研修を受け、全国どの営業所でも機能する人材へと成長していく。アサンテにとって成長持続のカギとも言える研修の中身は、一体、どのようなものなのだろうか。

 「まず必要なのは、本当に人として基本的なことです。挨拶や礼儀、これを今でも徹底しています。もちろん提供するサービスの長期的な重要性なども理解する必要はありますが、なにより、社員一人ひとりがお客さんに信頼される人間であること、ですね。社員のモチベーションを維持し、高いレベルのサービスを提供し続けるためには、社内のコミュニケーションも大変、重要だと考えています。ですから、研修所では皆で一緒に山登りをしたり、夜、食事をしながら言いたいことを言い合ったり。そのなかで、お互いが支え合う気持ちを養うとか、自分にはないものを吸収するといった効果が常に生まれていると思います」

 全国の社員がコミュニケーションを取り合うことで、アサンテとしての一体感も自然と醸成されていく。結果として、全国どの地域でも信頼できる業者として認知されてきた。そもそもシロアリ駆除は、決して華やかとは言えない業種でもある。そこに従事する社員が自分の仕事に意義を見出し、誇りを持って取り組むには、こうした研修の場が極めて大切だと語る宗政さん。定期的な研修の機会が、社員の意識向上を後押ししているのだ。

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益々高まっていく、シロアリ駆除のニーズ

宗政 誠(株式会社アサンテ)インタビュー写真


 順調に業績を重ね、13年には東京証券取引所第二部へと上場。そして14年には第一部へと指定替えを果たしたアサンテ。その効果について、宗政さんはこう話す。

 「もちろん、株主様はじめ、対外的な見え方が変化したということもありますが、なにより、社員の意識が変わったことがうれしいですね。派手でもなく、床下で汚れる仕事ですが、この会社で働いていてよかったと誇りを感じてくれたと思います。私でさえ20代の頃は、自分の仕事に疑問を持っていた時期もありました。そんな社員もきっといるでしょう。でも一部上場をしたことによって、仕事への考え方やお客様への接し方に少なからず、変化があったはずです。これまで頑張ってきてくれた社員に対し、会社としても上場という形で答えられたのは、私自身、感慨深いですね」

 人材育成や社員のモチベーション向上をとりわけ重視してきたこれまで。その方針は今後も変わらない。さらに、これからの50年をひとつの区切りと考え、新たな人材登用の施策を軌道に乗せていく予定だ。男性では61歳以上の営業マンを積極的に育成。一般家庭が顧客であることから営業部門には女性社員の登用も急速に進めていく。こうした取り組みの結果、全国の営業所数を益々、増やしていきたいと宗政さんは意気込む。

 「これからの50年でしっかりと全国制覇を果たしていきたい。まずは20年までに、各県で最低でも3つ程度の営業所を設置しながら、九州まで進出したいですね」

 大きな目標を掲げる背景には、日本人のシロアリ対策に関する意識の低さがある。たとえばアメリカでは建物を販売する際、州によってはシロアリ対策を講じる義務が生じる。もちろん日本では義務化されておらず、任意での対応だ。これだけ湿度が高く、木造家屋が多いにもかかわらず、である。

 「土地柄に関係なく。日本の木造住宅にはシロアリが必ずいます。そして環境的な条件が合致した時、シロアリは必ず、家を蝕みます。ですから一度、対策を講じればよいというわけでもなく、継続的な駆除や保守管理が求められるのです。きっと、日本でも今後、シロアリの調査や駆除が義務付けられる時がくるでしょう。人口減少にともなって、空き家対策も深刻ですし、古い神社仏閣にしてもお申し込みは増えています。今後益々、シロアリ駆除へのニーズは、高まってくるでしょうね」

自然との共生、という壮大な目標

宗政 誠(株式会社アサンテ)インタビュー写真


 50年近くもの間、シロアリと格闘し続けてきた宗政さん。その脅威について改めて尋ねると、少し意外な答えが返ってきた。シロアリは決して「敵」ではないというのだ。

 「歴史的に、地球上で最も強いのはシロアリとゴキブリだと言っていいでしょう。でも人類にとって敵である、という言い方には語弊があると思います。シロアリは木材を食べますが、それは自然界で必要な作業。そもそも人間は自然のなかに住まわせてもらっているわけですから、共存という考え方を忘れてはいけないでしょう。もちろんシロアリは薬剤で殺すわけですが、自然のなかに生きることや、環境保全について私たちはもっと大きな視野で考える必要があると感じています」

 言葉通り、アサンテの業務はシロアリ駆除にとどまらない。今では、地震対策やリフォーム、太陽光発電などにも注力し、総合的に暮らしをバックアップする企業へと成長を遂げている。その前提となるのは、自然との共存という思想。同社が掲げるのは、木造家屋を可能な限り持続させることで、過度の森林伐採を抑制するという大きな目的である。

 「私たちのやるべきことはまだまだたくさんあります。事業を通じて、木造家屋に住み続けたいというみなさんの要望に応えていきたいですし、結果として地球環境の保全に少しでも貢献できればと考えているんです」

宗政 誠(株式会社アサンテ)インタビュー写真


 まだまだ成長の勢いを止めないアサンテだが、船頭である宗政さんはどのように自身の体調、精神をコントロールしているのだろう。アイデアが湧き出る源泉、オンとオフの切り替えなどについて聞いてみた。

 「健康のためにも、ひとりで歩くという時間を作っていますね。そういう時に色々と考えることができ、アイデアも出てきます。ただ、プライベートが充実しているかと言えば、あまり自信はありません(笑)。古い人間ですから現場が動いていると、土日でもつい会社に出てきてしまうんです」

 あくまで自身が安心するための出勤とは言いつつも、現場の社員を気遣ってのこと。どれだけ会社が大きくなっても、大切なのは一人ひとりのやる気と向上心だと、宗政さんは理解している。社長の意思が、会社の隅々までしっかりと浸透するアサンテ。これからも同社は、顧客からの信頼度を増しながら、着実に歩を進めていくことだろう。

(文=宇都宮浩 写真=戸塚博之)2016/03/28

プロフィール

宗政 誠
株式会社アサンテ 代表取締役
1943 年
生まれ
1970 年
三洋消毒社創業
1973 年
三洋消毒(株)(現、当社)設立、代表取締役社長(現任)

会社概要

ロゴマーク
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