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株式会社global bridge HOLDINGS
  • コード:6557
  • 業種:サービス業
  • 上場日:2017/10/17
貞松 成(株式会社global bridge HOLDINGS)

保育ロボット『VEVO(ヴィーボ)』の開発

貞松 成(株式会社global bridge HOLDINGS)インタビュー写真

 株式会社global bridge HOLDINGSは、保育施設『あい・あい保育園』を中心に、介護やデイサービスなど高齢者や障がい者向けの施設を運営する株式会社global bridgeと、ICT事業を専門に担う株式会社social solutionsの2社を合わせたグループの持株会社として設立された。

 事業の中核を担う保育事業及び介護事業は、千葉から東京、神奈川、そして大阪まで広がり、2018年10月現在、認可保育園を43施設、障がい福祉サービス施設『にじ』を14施設、サービス付き高齢者向け住宅1施設。創業11年目にして計58施設を有する。

 本社のエントランスに入ると、保育園児ほどの大きさの可愛いロボットに出迎えられた。同社で開発した保育ロボット『VEVO(ヴィーボ)』だ。今年から一部の保育園に導入して実証実験を進めている。VEVOは、園児や保護者に話しかけられるとそれに返答する。保護者には、お迎え時にVEVOから給食の献立や、我が子の午睡の時間といった情報が得られるのが好評だ。

「保育事業をスタートしたときから保育ロボットの漠然としたイメージはありました。今のところ試験導入ですが、あいさつや簡単な会話、登園・降園のチェックを行い、園児に専用のセンサーを着けることで体温や呼吸、午睡の時間や寝返りの回数などのデータを取ることができます」

 VEVOを前に語るのは、創業者の貞松成さんだ。ようやく実用化の目処がつき、来年度から順次、同社の保育園に設置していく予定だという。

「評価の高い保育士は、経験が豊富だったり勘やセンスが良かったりします。しかし、いつまでも経験や勘だけに頼っているわけにはいきません。これからはしっかりしたデータ解析のもとで、子ども一人ひとりに最適な保育を進めていく時代だと思います。また、保育士たちを保育園の煩雑な作業から解放して、できるだけ子どもと向き合う時間を確保していくことが大事です。そういったことを考えて行き着いたのがVEVOです」

大胆な発想で業界に新たな可能性を見出す

貞松 成(株式会社global bridge HOLDINGS)インタビュー写真

 貞松さんが株式会社global bridgeを立ち上げたのは2007年。学生時代から人口問題に関連する分野で社会の役に立つ事業を起こしたいと考えていた貞松さんは、若干25歳で千葉県のビルの一室に『あい・あい保育園 幕張園』を開設した。社名の「global bridge」は福祉という名の虹を世界にかけることをイメージし、「あい・あい」は保護者と保育者の子どもたちに対する二つの愛を示す。

「興味のあった分野で起業を想定してみたとき、将来のイメージが思い描けたのが保育でした。でもヒト・モノ・カネがまったくありませんでしたので、まず就職しようと。就職先に選んだ大手飲食店の先輩が独立することになり、その居酒屋の開業を手伝ったのが非常にうまくいき、保育園の開園資金をとして500万円を用意できました」

 2年目には千葉県にデイサービス『やすらぎ家 鎌ケ谷亭』を開設し、介護事業に参入した。ここから当分は介護事業の比重が大きくなり、そして2010年、世代間交流を可能とする介護と保育の融合施設を立ち上げた。

「反応は良かったですね。実際、子どもも高齢者も間違いなく元気に、明るくなります。立ち上げには苦労も多かったのですが、介護と保育の施設を別々に建設するより一緒にできる施設として建設したほうが建設費や家賃が3割安くなり、売上は2倍になるので経済合理性は非常に高いのです」

 しかし、前例のない業態だったため自治体から許可を得るのは簡単ではなかった。介護は介護保険課、保育は子育て支援課と担当が違うので、認可を下ろすタイミングも予算の取り方も違うためだ。貞松さんは、自治体と粘り強く交渉し、道を切り拓いていった。

 チャレンジングな取り組みは同社の特徴だ。手書きが当たり前だった保育士のシフト表を貞松さん自らが表計算ソフトで管理をはじめたことから、保育園の運営管理システム『Child Care System(CCS)』も誕生した。創業4年目の2011年に直営保育園に導入し、職員のシフトや出退勤管理、園児の登園降園管理の効率化を図った。さらに、現場の要望に応じて検温結果やアレルギー情報の管理など機能が増えていき、2014年にはNTT東日本のサポートを受け外部の保育園に向けてサービスを開始した。現在その機能は38種類にもなり、保育者の労働環境を改善し、園内の安全・安心度を高めている。

保育士の能力を育てる教育制度

貞松 成(株式会社global bridge HOLDINGS)インタビュー写真

 世代間交流施設の職員には、単一の施設で働く職員と比較して、より高いマネジメント力やその他多くの専門的な能力が要求される。そこで、同社は人材教育に力を入れた。

「たとえば保育では就学前の発達心理から保健衛生、食や栄養、幼児教育、社会福祉全般に対する理解、施設のマネジメントに至るまで、かなり高い専門性が求められます。しかし、多くの保育士は、養成学校で資格は取りますが、そこまでの専門性を持つに至っていません。現場において何かひとつでも専門性を身に付けてほしいと思い、社内の教育制度を考案しました」

 そのひとつが保育・介護の施設長のライセンス制度だ。マネジメント力向上を目的としてプレゼンテーション力、コミュニケーション力、数値・係数管理力の3つの試験と、役職者との面接を行う。さらに継続的に専門性の向上を図る仕組みとして、施設長ライセンスは2年任期とし、ライセンス更新には論文の学会提出を義務付ける『Progression in Quality(PIQ)』制度を設けた。PIQは人材確保にも役立てられている。2018年から『園長総選挙』と名付けた就職フェアを行い、園長自らが学生に対して研究発表を行うのだ。

「PIQに取り組む施設長は、自分の施設での課題がそのまま研究課題になり、フィールドワーク的に調査研究が行えます。しかもその成果が自分の職場の運営や質の向上に直結します。これらの教育制度を導入してから職員の定着率が向上し、いい意味での競争意識や意欲の向上、全員で問題解決を図ろうという意識が出てきました。PIQは新卒採用にも、有用でした。就職を決める学生は園長を見ていますから、『園長総選挙』で発表する研究内容に興味を持つ優秀な保育士が採用できるようになりました」

 貞松さんは毎月、社員宛にメッセージを届けている。10周年記念に、そのメッセージを社員手帳(写真左)として一冊にまとめた。新入社員に渡す『入社一年目の教科書』(写真右)でも、「夢に向かって成長し続けよう」という経営理念や、保育業界の将来に対する考え方を共有している。職員一人ひとりにglobal bridgeが歩む道をしっかり指し示しているからこそ、職員も視線を高くして前に進めるのだろう。

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選ばれる企業を目指し上場へ

貞松 成(株式会社global bridge HOLDINGS)インタビュー写真

 保育事業は自治体の認可保育園や認証保育園になると補助金が交付され、税制も優遇される。しかし、無認可だと収入は保護者からの利用料だけなので、園児が集まるまで経営は厳しい。貞松さんも『あい・あい保育園 幕張園』の開園から1年は、人件費節約のために自ら保育をし、アルバイトもして運営費に充当した。体力的にも大変だったと当時を振り返るが、次々に施設を増やし、事業拡大に向けて奔走してきたのはなぜだろう。

「開園して1年後に、幕張園が千葉市の認証保育園になることができて、やっと現場を離れ、いわゆる社長業ができるようになりました。赤字のときにもう1園つくっていますが、その頃は、とにかく施設をつくり続けることが大事だったのです。曲がり角では、バイクもエンジンを吹かして力を出さなければ立ち上がらないですよね。起業したからには、成長を続けていかなければならないと思っています」

 創業7年目となる2014年は、貞松さんがそれまで取り組んできた様々な物事が結実した年といえる。保育と高齢者の介護に続き、障がいのある児童の居場所として『放課後等デイサービス・にじ 百合ヶ丘』を神奈川県に開設し、10月には3年間の準備を経て大阪に小規模保育施設を6カ所開設した。保育園の運営管理システム『Child Care System(CCS)』をNTT東日本と業務提携して全国へリリースしたのもこの年で、CCS及び「介護と保育の融合事業」のレイアウト設計で特許も取得した。その翌年の2015年、貞松さんは上場を決意する。

「一般に企業が上場する目的の1つとして資金調達があると思いますが、保育園建設なら銀行からの融資が十分に受けられるので、それは求めていませんでした。上場する目的として期待していたのは、上場企業という信用力の獲得でした」

 同社は千葉県内で実績を積み重ね、県内の保育事業者としては最大手となった。例えば船橋市では、幼稚園協会と保育所協会をまとめても同社の規模のほうがもはや大きく、同市の新1年生概ね50人に1人が同社の卒園生だという。県や各自治体からの信頼も厚い。

「当社は、千葉では一定の認知度がありましたが、東京や神奈川ではまだ無名です。上場を考えたのは、上場企業という信用が施設運営に必要な人材の確保と、地主さんから選ばれる際、優位になると思ったからです。同じ会社でも、上場していない会社と上場している会社と比べたら、上場しているほうを選ぶでしょう」

TOKYO PRO Marketへの上場

貞松 成(株式会社global bridge HOLDINGS)インタビュー写真

 当初は2017年のマザーズ上場をめざして準備をスタートさせたという。取締役CFOの樽見伸二さんに話を聞いた。

「上場企業になるためには、成長できる企業であることが前提になります。当社はビジネス的には成長していましたが、組織として手薄なところがありましたので、それを整えるのに大変苦労しました。社外役員や監査役を決め、監査法人の会計監査を始めるなど、非常に濃い1年半でした」

 着々と準備が進む一方で、マザーズ上場は早計ではないかと懸念する声が上がった。マザーズの流通株式数が25%以上という要件を考えると、当時の事業規模では株価が過小評価され適切ではないと判断したのが2017年2月、その1ヶ月後にTOKYO PRO Marketへ上場市場を変更することが決まった。そして10月、TOKYO PRO Marketへ上場を果たす。貞松さんは上場の効果を次のように実感している。

「期待していた効果があったと思います。人材確保は特に本社管理部門の採用面で以前よりも進んでいますし、銀行や地主さんの対応も良くなりました。上場してからは、保育園として不動産を活用したい地主さんは、当社を第一候補としてくださっていると実感しています」

 TOKYO PRO Marketへの上場は、同社の業績と同じように、信用度と認知度も右肩上がりにした。上場後、東証一部上場企業から育児情報サイト『イクシル』を譲り受け、さらに保育園や介護施設を運営する同業の株式会社東京ライフケアを子会社化し、着実に事業を拡大させている。今後の事業展開について樽見さんに尋ねた。

「現状のまま既存事業を展開するだけでは、当社の成長スピードが限定されてしまいます。保育業界も介護業界も今後更なる成熟が見込まれ、様々な形態での再編が起こることでしょう。今回のTOKYO PRO Marketへの上場効果により当社へのM&Aや事業承継などの案件紹介が非常に増えています。それらの機会を有効に活用し、更なる事業拡大につなげていきたいと考えています」

人口問題を解決する保育と教育

貞松 成(株式会社global bridge HOLDINGS)インタビュー写真

 将来、とてつもない可能性を秘めているのは、CCSやVEVOから収集するデータを活用した事業である。CCSを導入する500カ所の保育園に所属する園児は全国で約3万人。パターン認識やディープラーニングで分析された結果を活用し、子ども一人ひとりの成長を手助けする保育や教育の実現を目指していく。

「日本の人口問題のひとつである労働力不足は、一人ひとりの生産性を上げることで解決できると私は考えています。また、教育効果は未就学児のときのほうが高いと証明されていますから、これからは一人ひとりの成長・発達に合わせ、子どもの能力を最大限に引き出す保育や教育が求められるようになるでしょう。
 
 VEVOが子どもたちに『今週はこれができるようになったから、次はこういうことができるようになるよ』と、次の一歩を踏み出す勇気を与え、保育士がそれをサポートします。現在、3万人の子どものデータが収集でき、それを解析してより良い保育に活用できるのは当社しかないと思います」

 現場では「システムでは保育はできない」という関係者もまだまだ多い。2019年度からVEVOを直営保育園に準じ導入していくが、社外への普及は時間がかかるだろうという見立てだ。しかし、CCSの導入実績をみれば、VEVOが全国各地で受け入れられる日はそう遠くないのではないか。VEVOが持つ幼児教育の可能性はAIの発展とともにどんどん広がる。人口問題を解決したいという貞松さんの夢も加速度をつけて実現に向かっていくだろう。

(文=中田充樹 写真=高橋慎一 編集責任=上場推進部TOKYO PRO Market"創"編集チーム)2018/10/25

プロフィール

貞松 成(株式会社global bridge HOLDINGS)
貞松 成
株式会社global bridge HOLDINGS 代表取締役CEO
早稲田大学大学院・政治学研修科修了
1981 年
長崎県生まれ
2007 年
株式会社global bridge(当社子会社・保育/介護事業)設立
同社代表取締役に就任(現任)
2013 年
一般社団法人日本事業所内保育団体連合会設立
同会代表理事に就任(現任)
2015 年
株式会社social solutions(当社子会社・ICT事業)の代表取締役就任(現任)
2017 年
東京証券取引所TOKYO PRO Market上場

会社概要

株式会社global bridge HOLDINGS
株式会社global bridge HOLDINGS
  • コード:6557
  • 業種:サービス業
  • 上場日:2017/10/17