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筑波精工株式会社
  • コード:6596
  • 業種:電気機器
  • 上場日:2018/11/28
傅 寶莱(筑波精工株式会社)インタビュー写真

半導体ウェハーを吸着する独自の技術を武器に

傅 寶莱(筑波精工株式会社)インタビュー写真

 あらゆるモノ、ヒト、コトがつながっていくIoTの時代。今、爆発的な進化を求められているキーテクノロジーの最右翼が半導体である。とりわけ注目を集める開発テーマは、より薄型化が進む半導体ウェハーをその製造プロセスにおいてどう補強していくかということ。筑波精工が半導体関連業界において存在感を示すようになったのも、この課題に対して最適解を提供しうる企業だと認められたからである。

 筑波精工の事業の中核を成すのは、対象物とベースプレートを吸着させる「静電チャックHPTS」の技術である。静電チャックそのものは他社でも用いる技術だが、同社が有するのは電極と対象物間に生じる、互いに吸引するクーロン力を利用した世界で唯一の特許を保有するノウハウ。

 同社は薄物部材を確実、正確に吸着させる最先端技術によって、半導体の製造プロセスを根本的に変えていこうとしているのである。
 
 1997年から東京大学博士課程で研究開発を開始したという社長の傅寶莱(ポー・フォライ)さんは、同社の近未来についてこう話す。

「2007年頃、ある半導体メーカーの方と、これからの半導体は必然的にどんどん薄くなっていくという話題について語り合いました。その時、薄型化が急激に進捗する半導体関連業界において、薄物部材を固定して割れを防止するには接着剤を用いた従来の製造技術では限界があるということに気づいたのです。そこで接着剤に変わる静電チャックHPTSの技術を確立しようと決めました。将来、この市場は数千億円レベルになると確信がありました。昨今、電気自動車の普及につれて半導体の薄型化がまた一気に加速しています。筑波精工の目標は、このように拡大していく市場において、まずは1,000億円の売上高をクリアすることです。しかもこれは電気自動車の市場だけを見据えた目標にすぎず、自動車以外の分野においても薄型半導体のニーズが爆発的に増えていくことは間違いないと考えています」

 今後、益々、進化したAIや超高速の量子コンピュータとつながっていく半導体に、さらなる高集積化と薄型化が求められるのは誰の目にも明らか。この大きなうねりの中で主導権を握るべく、2018年11月、同社はTOKYO PRO Marketへの株式上場を果たした。

今、上場しなければ明日はない

傅 寶莱(筑波精工株式会社)インタビュー写真

 もちろん、同社が上場を企図した背景には、資金調達という主たる目的があった。しかしなぜ、いわゆるプロ投資家だけが参加するTOKYO PRO Marketをその舞台に選んだのか。傅さんはその経緯をこう説明する。

「半導体関連の業界は日々、技術が進化し、状況が変化していくスピーディな世界です。ウェハーサポーターという新商品をいよいよ量産化して攻めに出るためには、早急に資金が必要でした。そこで思い至ったのが、TOKYO PRO Marketへの上場です。マザーズの上場申請には、2期間分の監査証明を揃えなければいけませんが、TOKYO PRO Marketは1期間分であり、よりスピーディに上場できる。資金調達額の目標は、海外に広がり続ける顧客サポートのための営業スタッフの採用・配置に2億円、生産設備の増強に2億円、その他運転資金に1億円強で、最低でも合計5億円に設定しました」

 当初、同社の取締役会ではこの計画に反対する声が多かった。TOKYO PRO Marketで上場時に資金調達をした実績が6年超もなかったからだ。しかし、傅さんは早期に上場し、資金調達ができれば、半導体市場の勝者になれると確信していた。

 そこで、資金調達にチャレンジする場合と、しない場合のシミュレーションを取締役会に提示し、この上場が同社にとって唯一、大きく飛躍できる手段なのだと熱心に説いた。

 2018年11月、同社は8億6,000万円超の資金調達を実現。TOKYO PRO Market上場までのプロセスをサポートするJ-Adviserである(株)アイ・アールジャパンやリーディング証券(株)の手厚いサポートもあって、TOKYO PRO Marketでは前例のない大規模な資金調達が実現した。

 長年、傅さんと歩みを共にし、同社の筆頭株主として影になり日向になり同社を支えてきた(株)TNPオンザロードの代表取締役社長山下勝博さんはこう話す。

「筑波精工が有する技術は世界を変えるレベルのものだという100%の確信が、私にはありました。その一方で、資金調達のタイミングを逃せばこの技術が埋もれてしまうという危惧も抱いていました。上場までのスピードを最大のメリットとし、より自由度の高い上場基準で設計されたTOKYO PRO Marketは、同社にとって必然の選択でした。TOKYO PRO Marketで資金を集めた前例がないといっても、ここに集まるプロ投資家なら、半導体関連の市場がこれから飛躍的に拡大していくことや、この市場のキープレイヤーとなるためにどんな技術が必要かを理解し、同社の高い技術を評価できるはずだと信じていました」

日本のベンチャー投資環境が、変革期に突入

山下勝博(株式会社TNPオンザロード)インタビュー写真

 つまり、目利きのプロ投資家による市場だということも、TOKYO PRO Marketを選択する重要な判断材料になったということだ。その見立てが間違っていなかったのは、事業法人6社、個人投資家17名という上場時における資金調達の割当者の内訳を見ても明らかであろう。

 TOKYO PRO Marketでは、個人投資家でも3億円以上の純資産及び金融資産を保有していることが見込まれ、かつ、1年以上の投資経験があれば、プロ投資家とみなして参加することができる。17名もの個人投資家を動かしたこの事例が、日本の投資家やベンチャー企業に与えたインパクトは大きいと山下さんも認める。

「日本でも、目に見えない知財をきちんと評価し、リスクをとって投資していこうという機運が少しずつ感じられるようになってきました。挑戦心を持ってベンチャーを育てなければいけないという市場全体の自覚を、筑波精工の上場から感じ取った投資家は多いはずです」

 今後、ベンチャー企業への注目度向上、とりわけ、研究開発型テクノロジーへの投資意欲向上は、日本全体の成長において大きなテーマであり、先導役としてのTOKYO PRO Marketの役割は極めて大きいと言えるだろう。

「ナンバーワンという尺度ではなく、その技術やアイデアが世界においてオンリーワンであることこそが重要。自分たちにオンリーワンだという確信があれば、躊躇なく世界に打って出ればいい。アクションすればそれを評価してくれる人がきっといるし、資金も集まる。このような市場が日本でも徐々に育っていくでしょう」と数多くの研究開発型ベンチャー企業を支援している山下さんはTOKYO PRO Marketのポテンシャルに期待を寄せている。

 嬉々とした表情が終始、印象的だった傅さん。大切に育てた唯一無比の技術は、既に多くの業界から引く手あまただ。次世代静電チャックで未来を創る筑波精工が今後どんな一手を打ってくるのか。その動向に、世界の注目が集まっている。

(文=宇都宮浩 写真=高橋慎一 編集責任=上場推進部TOKYO PRO Market"創"編集チーム)2018/12/25

プロフィール

傅 寶莱(筑波精工株式会社)
傅 寶莱(ポー・フォライ)
筑波精工株式会社 代表取締役社長
1969 年
マレーシア生まれ
2000 年
東京大学大学院工学系研究科精密工学博士課程修了
2001 年
三洋シリコン電子株式会社入社
2004 年
筑波精工株式会社入社 取締役技術部長
2012 年
同社 代表取締役社長(現任)

会社概要

筑波精工株式会社
筑波精工株式会社
  • コード:6596
  • 業種:電気機器
  • 上場日:2018/11/28