上場会社トップインタビュー「創」

株式会社レノバ
  • コード:9519
  • 業種:電気・ガス
  • 上場日:2017/02/23
木南 陽介(株式会社レノバ)

日本の証券市場唯一の再エネ専門会社

木南 陽介(株式会社レノバ)インタビュー写真

 皆さんは、日本のエネルギー自給率をご存知だろうか。日本の自給率はわずか8%。なんと92%を輸入でまかなっている。そのほとんどが石炭、原油、天然ガスといった化石燃料で、それらの埋蔵量が尽きるのはそれほど遠い将来のことではないといわれている。

 そこで人類の頼みは水力、風力、太陽光、バイオマスの再生可能エネルギーだ。CO2削減とも相まって、各国は再エネへの転換に力を入れている。日本も同様だと言いたいところだが、「日本の政策は10年遅れている」と株式会社レノバ 代表取締役社長 CEOの木南陽介さんは語る。

「たとえばドイツは早くから固定価格買取制度(以下、FIT)*1を取り入れて、国が積極的に再エネに取り組んできました。それだけ事業環境が整っていて、ドイツやイギリスの再エネ率は30%を超えています。日本はいま水力発電を含めて15.3%で、国策として2030年までに22%~24%にすると言っています。目標値としては意欲的とは言えず、欧州に大きく遅れをとっているという感触を持っています」

 木南さん率いる株式会社レノバは、現時点で日本の証券市場に上場している唯一の再生可能エネルギー発電の専門会社だ。売上数兆円の再エネ企業がしのぎを削る欧米に比べると寂しい限りだが、それゆえにレノバにかかる期待は大きい。昨今、世界的に「ESG」「SDGs」*2への注目が高まるなか、2017年2月にマザーズ上場、2018年2月に東証一部銘柄に指定されたニューフェースに、機関投資家、個人投資家、銀行や生命保険会社、開発を進める地元の人々まで応援団が増え続けている。

「東証一部になって開催した初の株主総会では、質問の半分以上が応援メッセージに聞こえました。『再エネ事業は、間違いなくいい事業だからできる限り進めてくれ』『もっと大きいことをやってくれ』といったものです。こんなに応援されていると、もう全力でやるしかないですね(笑)」

環境事業に向かうきっかけ

木南 陽介(株式会社レノバ)インタビュー写真

 エネルギー事業は設備に莫大な資金を要するが、木南さんは家業を継いだわけでも環境事業の大手会社に勤めていたわけでもない。「志」と「戦略」でゼロから事業を伸ばしてきた。その生い立ちを追ってみよう。

 兵庫県神戸市、六甲山の麓で木南さんは育った。1974年生まれの木南さんは、ジャパン・アズ・ナンバーワンの時代に幼少期を過ごした。

「神戸港を見下ろすと、どんどん海が埋め立てられてポートアイランド、六甲アイランドができていきました。豊かになっていくのだけれど、遊び場にダムができたり、神戸の港に赤潮が発生して魚釣りができなくなったり、自然と人間がせめぎあっていることを感じて、なんでこうなるのかなと疑問に思っていました」

 大学は京都大学で、新設されたばかりの「総合人間学部」を選んだ。人間と文明と自然の結びつきに新たな次元を確立する為に、人類が直面する問題を再考し、解決していくという学部だ。木南さんの主専攻は『環境政策』、副専攻は『物質環境論』。今のFITにつながるような環境問題を修正していくための社会利益の研究から、CO2の溶存酸素量から海の環境適応能力を議論する化学まで様々な角度から環境を学んだ。

一方、大学3年の時には友人と会社をつくり、木南さんが社長となってホームページ制作やデータベース解析を行う事業を展開。経営の面白さを知った。こうして環境と経営が結びつき、「環境問題を解決するための事業」を考えるようになっていった。

「大きな事業を展開するにはどうしたらいいのだろう?」と考える木南さんに、外資系のコンサルティング会社に入った友人が「戦略が必要だよ」と言う。勉強のつもりでインターンに行くと、これが非常に面白い。そこで戦略の組み立て方を学ぶために経営コンサルティング会社への入社を決めた。入社後、1年半ほど経った頃から同僚と環境ビジネスの研究を始め、2000年5月、株式会社リサイクルワン(2013年に株式会社レノバに商号変更)を立ち上げた。

あきらめなかった再生可能エネルギー事業

木南 陽介(株式会社レノバ)インタビュー写真

 リサイクルワンは、排出企業とリサイクル事業者のマッチングや土壌汚染対策などのサービスを展開。2006年にはリサイクル工場も稼働させ、年商20億円を突破。順調に業績を伸ばす中、木南さんは再生可能エネルギーの研究も続けていた。

「私は環境の分野は『資源問題』と『エネルギー問題』の2軸と捉えていて、どちらからのアプローチもあると考えていました。当時、再エネのマーケットはほぼなくて、資源問題はリサイクル法が成立して土台ができましたので、まずはリサイクル事業から参入しました。その後、2007年頃から、アジアや太平洋の離島で再エネ事業が出てきたんです。離島は燃料が高いなどの問題があるため、太陽光などの自然エネルギーの要望が高いんですね。離島で巨大な発電所を造る場合の投資額の算出などかなり研究しました。その他、インドネシアでの小水力発電の普及やフィリピンでのバイオマス発電などの研究に関与して世界の状況を見ていました」

 日本でも、バイオマス発電のレポートやデューデリジェンスの仕事も受けていたそうだ。しかしそのほとんどが「採算が取れないからやめたほうがいい」という残念な結果だった。こうしてエネルギー事業の考察を深める中、転機は東日本大震災で訪れた。

「震災が起こって、原子力発電が主軸ではまずいとなった時、日本では再生可能エネルギーは全く普及していないことが明らかになりました。そこで政策が大きく転換して、2011年8月に『再生可能エネルギー特別措置法』が成立してFITの導入が決められた。それで我々も一気にチャレンジしようと決断し、再エネの開発に着手しました」

 2011年秋には、太陽光発電にふさわしい土地の調査を始めた。他社より半年早いスタートだ。何年分もの蓄積があったので、再エネビジネスのイメージができていた。

「地震など何かが起こってから再エネ事業を始めようとしても、市場のイメージがわかないですよね。我々は、再エネはものすごい装置産業で、自然の太陽光、自然の風でどのくらい事業が成立するか理解していました。その時点での日本で最大の太陽光発電所はどういうコスト構造なのかも研究していましたので、あとは有望な場所を探すだけという準備ができていたんです」

 日本のFIT制度の詳細が見えてきたのは2012年4月。再エネ事業を考える多くの会社が買取金額の決定を待つ中、レノバは先んじて有望な土地を開拓し、ブルーオーシャンを切り拓いていた。

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*1 FIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)
再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度。電力会社が買い取る費用の一部を電気利用者から集め、まだ日本ではコストの高い再生可能エネルギーの導入を支えている。

*2 ESG
環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったもので、今日、企業の長期的な成長のためには、ESGが示す3つの観点が必要だという考え方が世界的に広まっている。

*2 SDGs(持続可能な開発目標)
2015年の国連サミットで採択された2016年から2030年までの国際目標。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない」と誓っている。全ての国が普遍的に取り組むものであり、日本も積極的に取り組んでいる。

再エネ事業の肝は地域との「共存共栄」

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 2013年、木南さんは再生可能エネルギー事業へ専念することを決め、商号をリサイクルワンからレノバに変更。本社も千代田区大手町に移転した。(注:2018年10月1日に中央区京橋へ移転)

 現在レノバは、エネルギー事業戦略として太陽光、バイオマス、風力、地熱のマルチ電源開発を進めている。稼働中のメガソーラー7カ所とバイオマス発電所、これに建設中5カ所、開発中10カ所を合わせると1.5GW、約150万世帯をカバーする電力供給が実現する。

 これらの電源開発は自然豊かな地方で進められている。ゆえに地元の人たちの理解が必須であり、個々に異なる自然環境の地域と発電事業が「共存共栄」できる絵が描けるかどうかが鍵となる。

「地元の方は、エネルギー事業だけでは喜んで受け入れてくださらないですよ。それは我々も深く理解していて、エネルギー事業プラスαの価値が非常に重要です。例えば新しい雇用が生まれる、観光客が増える、学校の教材で使えるなど、プラスαの内容は各地で異なりますから、それはよくよく地元の方の話を聞いて提案していかなくてはなりません。地元の方の想像通りではダメで、それを少し超えるぐらいの提案を出さないといけないんですね。そこにはすごく時間を使います」

 一例を挙げると、現在、秋田県の沖合で開発を進めている洋上風力発電は、長さ30キロメートルの洋上に70~90基の風車を並べる計画だ。これが完成すると、洋上風力発電では世界有数の規模となるが、漁業へ何らかのマイナスの影響も懸念されるのではないだろうか。

「普通はそうイメージされると思いますが、マイナスの影響ばかりでもありません。たとえば、風車を建てると、海中では風車のタワーが漁礁のようになって貝がいっぱいつきます。そこに魚が集まって産卵場になることがある。うまくいけば漁獲量が増加するし、もしかしたら釣り船の需要も増えるかもしれない。風車の観光用に船の傭船も増えるかもしれない。それは、「新しく生まれる仕事」となるわけです。秋田の漁協さんとは、もう2年半ぐらいどうすれば風車が漁業にプラスになるかご相談をしています。当初、お前たちは何者だ?と思われていたと思いますが、『私たちは共存共栄を提案したくて来ましたので話を聞いてください』と、何度も足を運び、お話ししてやっとこれは意味があると思っていただけたわけです。地方に行くと、一次産業は年々衰退してすごい危機感を持っています。農業でも林業でもこのまま息子に継がせていいのかと悩む事業者さんは多いですから、そこで我々は再エネを鍵に、新しい産業や社会をつくっていきましょうと提案して、ともに歩んでいくことが仕事なのだと思っています」

 地域に変化する勇気を与えるレノバ の再エネ事業は「地方創生」そのものだ。再エネと共存共栄する未来は、地方の希望ともなるだろう。

木南 陽介(株式会社レノバ)インタビュー写真

                       秋田県の漁業関係者から木南さんに送られた書

上場後の飛躍のためにガバナンスを強化

木南 陽介(株式会社レノバ)インタビュー写真

 2017年、マザーズに上場後、レノバは大幅なコーポレート・ガバナンスの強化を図った。取締役8人のうち6人を社外取締役とし、監査役も4名のうち3名を社外とした。現場でのプロジェクト運営を司る執行役員に大きく権限委譲する一方、中長期視点に立った経営の方向性は多様な価値観を持つボードメンバーで議論する。経営と執行の機能を明確に分離する、まさに欧米流の統治体制だ。

「ここから、すごく大きな事業を実現しようと考えていましたので、そのためには客観性が必要だと思いました。大胆に投資するときは社会的インパクトや事業リスクも大きくなるので、客観性を強められると安心なんです」

 それまでの組織は攻める方に力点があり、8割から9割新しい事業に目が向いていたそうだ。そこに客観性の重要性を説いたのは、第二電電、イー・モバイルなど通信事業に変革をもたらした千本倖生さんだった。レノバは2014年に千本さんを社外取締役に迎え、2015年には代表取締役会長として選任した。

「社外取締役の人数と割合は、指名委員会で徹底的に議論をしました。社外取締役の有用性について、社外取締役の立場でアメリカのベンチャー企業の経営にかかわり、時価総額が200億円から2兆円になったような千本会長の体験に基づいた意見は、すごく迫力がありました」

 しかし、25歳から自分の力で会社を大きくしてきた木南さんは、外から口出しをされたくないと思わなかったのだろうか。

「CEOを評価するのは大事なことだと思いますよ。私は自分を評価する人がいないのは気持ち悪かったですから。次に向けて今年はどうだったかというレビューは必要で、そこから学ばないと伸びないですよね。学ぶためには一人ではなくいろいろ違う人から見てもらうのが有効だと思います。そのフィードバックは私だけでなく執行役員全員になされるべきで、執行役員の成長にも役立っていると思います」

 マザーズに上場して1年後、2018年2月にレノバ は東証一部上場銘柄となった。

「再エネはとにかく圧倒的な投資が必要ですので、社会的に信頼の高い東証一部上場は絶対必要だと思っていました。今年2月に一部上場企業になって以降、外部から受ける信頼の厚さが違うと感じています。あと大きな変化は人材採用面にも表れていて、黎明期である再エネ分野はまだ専門人材が少なく、経験者は火力や水力など大手電力会社や大手メーカーの方になるわけですが、そうしたエスタブリッシュな会社からも志を持って来てくださる方が増えています」

より高い山を目指して

木南 陽介(株式会社レノバ)インタビュー写真

 千本会長からは、「大きく考えよ。バウンダリーをつくるな」ともアドバイスを受けている。人を巻き込む熱量とガバナンスの客観性、その両面が必要という教えだ。

「私たちレノバは、経営理念で『社会的課題を解決する』と宣言しています。この社会的課題はつまり環境問題でありまして、これを解決するためには大きなスケールでの事業展開を考えていく必要があります。私たちのような規模の会社が大きなスケールで事業展開を考えるには、それに見合う投資規模も大きくしていく必要があります。私自身は投資については慎重に準備をし、そして大胆にチャレンジし続けるというスタイルを取っています。これは、私の趣味である山登りと同様なのですが、山は、着実に登ることがまず大事で、そのための準備やトレーニングが必須です。でも一つ大きな山に登るともっと高い山に登りたくなります。100億円の事業に成功すると500億円の事業をやりたくなるし、次は5,000億円の事業をやりたくなる(笑)。決して歩みを止めず次の山を目指す、そういうドライバーはもともと自分の中にあると思います」

 木南さんの目には、いくつもの山が見えているのだろう。レノバは経営の根幹にSDGs(持続可能な開発目標)を掲げ、個別の地域課題に根ざした再生可能エネルギーの開発に取り組んでいる。『再生エネルギーを主力電源に』という日本の政策に呼応して、バイオマス発電で2,000億円、洋上風力発電で4,000億円を投資する予定だ。応援団が増えるのも当然だろう。レノバは、日本の未来のエネルギーシステムをつくる若き力なのだ。ESGとSDGsという地球規模の要請に後押しされ、レノバの事業はどんどん拡大している。

 さて、そんな時代のメインストリームにいる木南さんに最近、楽しい山登りの仲間ができた。

「子供が3歳と6歳で大きくなってきたので、一緒に登れるようになってきました(笑)」

 荷物を背負って、慎重に、粘り強く歩んでいくことを教えているのだろうか。お子様たちにはまだわからないと思うが、12年後の2030年までに、お父さんの会社は単独で1,000万tのCO2削減を社会に約束している。

「おそらくこの目標は上げることになると思います。環境問題の解決のためには、そのぐらいやっていくべきだと思っていますので」

 レノバ が登る山はアジアに続く。『日本とアジアにおけるエネルギー変革のリーディング・カンパニー』を目指して、木南さん率いるパーティは「環境問題の解決」というとてつもなく大きな山に挑んでいる。

木南 陽介(株式会社レノバ)インタビュー写真

(文=江川裕子 写真=戸塚博之 編集責任=上場推進部"創"編集チーム)2018/09/07

プロフィール

木南 陽介(株式会社レノバ)
木南 陽介
株式会社レノバ 代表取締役社長CEO
1974 年
兵庫県神戸市生まれ
1998 年
京都大学総合人間学部人間学科卒業
卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパン入社
2000 年
株式会社リサイクルワン(現 株式会社レノバ)設立、代表取締役社長に就任
2012 年
再生可能エネルギー事業に参入
2013 年
株式会社レノバに商号変更
2016 年
株式会社レノバ 代表取締役社長CEOに就任(現任)
2017 年
東証マザーズ上場
2018 年
東証市場第一部へ市場変更

会社概要

株式会社レノバ
株式会社レノバ
  • コード:9519
  • 業種:電気・ガス
  • 上場日:2017/02/23