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プットオプションの買い戦略 (その2)

個人投資家が手掛けやすいオプショントレードとして、まずはプットオプションの買いを検討しているわけですが、オプションの買いは文字通り、「お金を支払って」、いわゆる日経平均を売る「権利」を「買う」ことになります。株と異なるのは、オプションには存在できる期間(取引できる期間)に限りがあり、満期において保有していたポジションは精算されることになる点です。


前回お話ししたように、プットオプションは満期において日経平均が自分の選択した権利行使価格よりも下にあった場合に、権利行使価格とSQ値(満期における日経平均の特別な精算価格)との差分の受け渡しをする商品ですから、買い手にとっては、当初に支払った金額以上に受取がなければ利益とはなりません。ということは、買い手にとっては、最初の支払いが小さければ、利益となるために必要な日経平均の下落率は小さくてよい(精算時の受取額が小さくてよい)ことになります。そこで、前回みました買い手の願い、「②できるだけオプションの購入代金を小さくしたい」ということを検討していきたいと思います。

オプションの購入代金が小さくて済むということは、損益分岐点に到達するだけの相場の変動率(ボラティリティ)が小さくて済むことを意味します。

たとえば、日経平均が20,000円のときに残り1週間のP19500が100円で取引されているのと、200円で取引されているというような場合、もちろん前者の方が損益分岐点は近くなります。前者は600円の下落で足りますが、後者は700円下げなければなりません。

この場合、後者の方が、オプション価格は高いと言えるわけです。つまり、市場参加者が原資産である日経平均の変動率をどのように予想しているかによって、オプション価格が変わるわけです。

市場参加者の相場変動率(ボラティリティ)の予想(見積もり)がオプション価格に反映されているとすれば、オプション価格から市場参加者が予想しているボラティリティを逆算できることになるはずです。このオプション価格に反映されている市場参加者の予想するボラティリティのことを「インプライドボラティリティ(IV)」といい、このIVの値は、オプション価格が高いか安いかを調べる一つのファクターとなっています。この日経225オプション価格から逆算的に算出されるIVを指数化したものに、「日経ボラティリティーインデックス(日経VI)」というものがあり、これを見れば現状のオプション価格が相対的に高いのか安いのかを調べることができます。【図表1】は日経VIの日足チャートです。

日経VIの値をみると、おおむね15あたりは低い水準、30を超える場面は高い水準にあると言えそうです。【図表1】の期間内ではありますが、低い水準と言い得る15あたりのときは、相対的にオプション価格が安いといえるのではないかということです。
もちろんオプションの取引価格は買い手と売り手の相場観の鬩ぎあいにより決定されたものです。

残り1週間しかなくても、1日で400~500円も乱高下する相場であれば、もしかしたら1週間で1,000円も下げる可能性があると考える人も出てくるでしょうから、売り買いの思惑が拮抗し結果として300円と値が付くこともありましょうし、1日あたり100円程度の動きしかなく、1週間でどんなに動いても500円前後の下落でとまるだろうと考える人多く、このラインで拮抗してプットオプションが例えば50円前後で取引される、といったことになる場合もあるでしょう。

相場つき次第で、市場参加者が300円を妥当だと判断しているのであって、それは、それだけ相場が動く可能性が高いと市場参加者が考えていることを意味するのであり、また市場参加者が30円を妥当だと判断しているのであれば、やはり相場の動きをその程度であるという市場参加者のコンセンサスがあるわけです。

つまりIVが高いときはやはり相場の変動が大きく、低いときはそれなりしかないというのであれば、IVが低いとき、すなわちオプション価格が相対的に安いときに、安く買ったからといって、それは相場が動かないだろうという、市場としては安いだけの理由があるだけのことでありそこに優位性があるわけではありません。


しかし、市場参加者も間違えることはあります。予想もしないことが起こることもあります。現にIVの動きをみると、15以下の水準からドーンと30を超えているような場面が観測されるのですが、これは市場参加者が思ってもみなかった相場変動(相場の暴落)に翻弄されていることを示しています。

私たち個人投資家が小さなお金で大きなリターンを得ようと思えば、市場参加者があまり動かないと思っているとき(=オプション価格が相対的に安いとき)に、市場参加者の予想が外れて、あるいは思ってもみなかったような大きな変動が起こるところを狙うという戦い方が考えられます。ここで、同時期の日経平均のチャートと見比べてみましょう。

先の日経VIのチャートと見比べると、相場の上昇でIVは低下していき、相場が崩れるとIVは上昇していくという逆相関の関係が見て取れます。IVの上昇はオプション価格の上昇と同義だとすれば、なるほど相場の下落の場面で保険としてのプットオプションの需要が増し、プットオプションが買われることにより、買い需要の増加で相対的にオプション価格が上昇する=IVが上昇するというわけです。保険としてのプットオプションを保有することはコストがかかりますので、相場が安定し上昇気流に乗ってくると、これを解約したいと思う人も増えてきます。よってプットオプションの需要が低下し売られますので、次第にオプション価格は相対的に低下する=IVが低下することになるのです。

とすれば、相場が上昇していく過程で、IVが逆相関的に低下し、ついには15を割り込んで、日経平均はわが世の春を謳歌しているかのように目先高値圏にあるその時こそ、プットオプションを安く仕入れることができ、かつ高いところからの速い・大きな下落を享受できる可能性のあるタイミングということになるのです(なお、過去のIVの様子を観察すれば、定期的にIVの急上昇が起こってはおりますが、現在IVが低いからといって、その後必ずIVが急上昇するような相場の崩れが起こる必然的・論理的な関係はありません)。

もちろん、天井がどこかがわかれば苦労しません。わかるなら、そこで日経225先物をダイレクトに売ればいいのです。しかし、天井だと思ったけれど、さらに上がっていくということは日常茶飯であり、日経225先物を売ってさらに上昇すれば損失は限定されていませんから、怖くなって損切りしたとき、それが本当の天井だった、なんていうことは個人投資家「あるある」の一つです。 オプション買いの場合は、当初に支払った金額が最大損失額。それ以上に損をすることはありません。その最大損失額を許容できるのであれば、相場の上げ下げのノイズに一喜一憂しないですむはずです。



以上の検討から、日経VIが15(~20)ポイント前後の水準で(①)、自分の信じるテクニカル分析やファンダメンタルズ分析により天井を示唆しているとき(②)、自己の許容できる最大損失額で買えるプットオプションを買ってみる、というアイデアが出てくるわけです。

このような視点で先の事例を見てみましょう。【図表1】【図表2】をご覧ください。2018年2月2日(金)は、24,000円を超えた水準が天井であったと感じさせる場面(②)でしたし、IVも原資産たる日経平均が24,000円を超えていた場面の15ポイントあたりから少しだけ上昇をしていた場面でした(①)。まさにプットオプションを仕込むよいタイミングだったわけです。使えるお金が10,000円ぐらいとすれば、10,000円で買えるプットオプションを探してみるのです。

かくして、先の例でP22125(プットオプション権利行使価格22,125円を表します。)あたりを買ってみた結果が前に掲げた以下の【図表4】です。

次回はかような利益の出るメカニズムをオプションの世界に踏み込んで詳しく解説したいと思います。お楽しみに!



<講師紹介>
守屋 史章 氏
オプショントレード普及協会 代表理事
宮崎県出身。慶應義塾大学法学部法律学科卒、同法学研究科修士課程修了。個人投資家として企業数社に投資し、ビジネスオーナーを務める傍ら、証券などへの投資をも手掛ける。投資におけるオプション取引を普及させることを目的に、金守遼太氏と共同でオプショントレード普及協会を設立。短期トレーディングから長期運用まで幅広い投資ニーズをかなえる資産運用を研究している。「オプションについて話せる仲間が見つからない」という孤独になりがちな投資の研究と意見交換を行える会員制のメンバーシップを中心に、個人投資家目線だからこその目からウロコの独創的アイデアと分かりやすい解説で、「わかる」「できる」をサポートする。