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個人投資家による個人投資家のための
  オプション取引講座

クレジットスプレッドとコンドル

オプションの売り買いポジションで「受け取り」の状態

株やFX、日経225先物などは今から上がるのか下がるのかをしっかり当てないと利益にはなりません。しかしオプションを利用することで、「多少上昇しても、この水準を超えることはないだろう」「多少下落しても、この水準を割り込むことはないだろう」といった相場観を利益に変えることが可能です。つまり、ピンポイントに上昇か下落かを当てなくてもいい戦い方ができるということです。しかも、動きがない相場でも利益を上げることが可能になります。

日経平均株価が22,500円前後の場面です(図表1)。チャートを見てみると、22,000円でいったん支えたものの、上昇の勢いはありませんし、しかも数日前に上値23,000円で抑えられていることから、上がっても23,000円を超えるのは難しいだろうという判断ができそうです。いずれにしても、大きな動きは望めそうにありません(低ボラティリティー)。

図表1 日経225先物チャート(2017年10月~11月)

この時、権利行使価格23,000円のコール(C23000)を売るという取引をします。受取プレミアムは130円(実際は1,000倍の13万円を受け取ります)でした。SQ値(特別清算数値)が23,000円を越えなければこの13万円が確定的な利益となります。権利行使価格23,000円に受取プレミアム130円を加えた23,130円が損益分岐点、それを超えると損失です。(図表2)

図表2 C23000売り1枚のSQ損益グラフ

下がればもちろんのこと、動かなくても、また多少上がっても23,130円までならば利益となり得るポジションです。今、この瞬間から上昇するか下落するかを予想する戦い方と比べれば、相当に「ざっくり」な相場観でよい戦い方です。

しかしながら、図表2を見てもわかるとおり、23,130円を超えて上昇した場合、その損失は無限大です。資金に限りのある個人投資家は安易にオプションを売るべきではありません。

そこで、その外(23,000円よりも上の権利行使価格のコールオプション)を買って損失を限定することを考えます。

図表3 C23000売り+C23250買い(=クレジットスプレッド)の損益グラフ

売るコールオプションの権利行使価格23,000円よりも上の権利行使価格、例えば23,250円のコールオプション(C23250)を買えば、図表3のように、損失側のグラフが水平に折れ曲がってそれ以上の損失になりません。C23250は75円で取引されていましたので75円を支払います。C23000を130円で売りますから、差し引き55円が手元に残ります(受け取り)。このような受け取りの状態を「クレジット」といいます。このように権利行使価格をずらした売りと買いのポジションで受け取りになるものを「クレジットスプレッド」といいます(売りと買いのポジションで「支払い=デビット」になるものは「デビットスプレッド」)。

もちろん、外のコールオプションを買った分、C23000売り単体よりも受け取りは少なくなりますので、予想通り23,000円以下で満期を迎えた場合の利益は少なくなりますが、あらかじめ損失が限定されており、その金額もはっきりしていますので安心です。売りでこつこつと稼いでも、一発のドカン(いわゆる「こつこつドカン」)ですべてを失い退場に追い込まれる個人投資家も少なからずいるようです。個人投資家は売り単体で勝負するのではなく、買いで必ずヘッジをかけておくべきだと思います。

図表4 C23000売り+C23250買い(=クレジットスプレッド)SQ結果

SQ値は22,590円でしたのでC23000は無価値となりました。よって売って受け取った130円は満額利益です。C23250も当然ながら無価値ですので、支払った75円が満額損失です。よって差し引き55円(実際は1,000倍の55,000円)の利益ということになります。

ところで、下側も22,000円を割りそうにない(図表5)と予想するならば、上側と同じ発想で、「多少押すことはあっても22,000円を割ることはないだろう」という相場観を実現するポジションをとることが可能です。権利行使価格22,000円のプットオプション(P22000)を売ればよいのです。

図表5 日経225先物チャート(2017年10月~11月)

P22000はこのとき170円で取引されていました。売れば170円を受け取ることができます。多少下落しても22,000円を割り込まなければ170円が利益となります(17万円の利益)。大変ざっくりとした相場観でも利益になりうるのです。ただ22,000円から受取プレミアム分170円を引いた21,830円が損益分岐点であり、それ以下に下落すると損失はどんどん膨らんでいくことになります。(図表6)

図表6 P22000売り1枚のSQ損益グラフ

コール側と同様、売っているプットオプションよりも外(下)の権利行使価格のプットオプションを買うことで損失を限定できます。例えば250円外(下)のP21750を買うことにしましょう。115円で取引されていましたので115円を支払います。P22000を売って170円を受け取りますが、P21750を買って115円支払いますので差し引き55円の受け取り(クレジット)です。プットクレジットスプレッドの完成です。

図表7 P22000売り+P21750買いSQ損益グラフ

利益額はオプション買いの支払いがあるために売り単体よりも少なくなりますが、損失は限定されます。図表7のとおり、21,750円以下になっても損失は一定(損失限定)です。

図表8 P22000売り+P21750買い(=クレジットスプレッド)SQ結果

P22000は無価値ですので、受け取った170円が確定的な利益となりました。P21750も無価値ですので支払った115円がすべて損失。差し引き55円(実際は1,000倍の55,000円)の利益です。

上と下の両側でクレジットスプレッドを仕掛ける「コンドル」

では、これらコールサイド、プットサイドを両方とも仕掛けたらどうでしょうか。図表9のチャートをみれば、上は23,000円付近で大きなひげが観測されますし、目先22,000円で支えた形になっています。上は23,000円を超えそうもないですし、下は22,000円を割ることもなさそうです。

図表9 日経225先物チャート(2017年10月~11月)

そこで上側のC23000~C23250クレジットスプレッドと下側P22000~P21750クレジットスプレッドを併せてセットするのです。そうすれば、「上は23,000円、下は22,000円の間におさまるだろう」という相場観をポジションに反映させることが可能になります。上がるか下がるかではなく、満期における着地を「幅」(ここでは1,000円幅)で予想するわけです。

図表10 C23000~C23250クレジットスプレッド+P22000~P21750クレジットスプレッドSQ損益グラフ

SQ値が22,000円から23,000円の範囲にあれば上下コール・プット両方からの受け取り満額の110円の利益になります(最大利益11万円)。大きく上がっても大きく下がっても、コールサイド、プットサイドどちらか逆側のポジションは必ず利益となりますので、最大損失は片方だけだった場合よりも少なくなります(最大損失14万円)。

このポジションは最終の損益グラフの形が、コンドルが飛んでいるような姿をしていることから、「コンドル」(※)とよばれます。

※ すべてコール(あるいはすべてプット)で構築するものが原則形態とされます(本文のポジションはC21750買い+C22000売り+C23000売り+C23250買いというポジションと全く同じです)。コールスプレッド+プットスプレッドで構築するコンドルは特に「アイアンコンドル」とよばれることがあります。

オプションを4つも使うので、ポジションを組成するのが大変かもしれませんが、勝率が高く、損失も限定されていることから、個人投資家向けの戦略といえましょう。

最後になりますが、今回のコンドル戦略は4つもオプション使う、組成するのが難しいポジションですので、そのポジションの組成・取引の仕方の一例をご紹介したいと思います。

なお受け取りのポジションですので証拠金が要求されますが、損失が限定されていますので、最大損失額を超えて要求されることはありません(相場が大きく崩れても、証拠金が膨らむこともありません)。

手仕舞いですが、最終的にSQを通過させるならば何もすることはありません。大変ではありますが、途中決済ももちろん可能です(途中決済する場合は、売り玉だけが残らないように必ず売りのポジションから手仕舞いましょう)。

内側に収まれば勝ち、外に大きく動いたら負け、という二者択一的な戦い方ではなく、相場の動きに合わせて、近づいてきた方のクレジットスプレッドのポジションを外に逃がしたり(=いったんポジション決済してさらに遠い権利行使価格でクレジットスプレッドを組みなおすこと)、逆側を押し込んだり(=利益になっている側はポジションの利益を確定させ、さらに内側にクレジットスプレッドを組みなおすこと)するなど、ダイナミックにポジションを調整する(=着地の幅をずらす)という手法も取れます。

このようにオプションは、株やFX、先物では実現できない相場観を利益に変える手段を提供してくれます。オプションを利用することでこれまで収益機会とはならなかった相場でも収益を上げることが可能となるのです。

<講師紹介>
守屋 史章 氏
オプショントレード普及協会 代表理事
宮崎県出身。慶應義塾大学法学部法律学科卒、同法学研究科修士課程修了。個人投資家として企業数社に投資し、ビジネスオーナーを務める傍ら、証券などへの投資をも手掛ける。投資におけるオプション取引を普及させることを目的に、金守遼太氏と共同でオプショントレード普及協会を設立。短期トレーディングから長期運用まで幅広い投資ニーズをかなえる資産運用を研究している。「オプションについて話せる仲間が見つからない」という孤独になりがちな投資の研究と意見交換を行える会員制のメンバーシップを中心に、個人投資家目線だからこその目からウロコの独創的アイデアと分かりやすい解説で、「わかる」「できる」をサポートする。