取引内容の審査(売買審査)

以下の取引事例は、東京商品取引所(以下「TOCOM」という)で実際に制裁その他の措置を行った事例です。

事例1 寄付板合わせにおける『作為的な価格操作』

市場取引参加者であるX社のディーラーAは注文受付時間帯に異なる複数値段に売指値注文を発注し、Aが発注した最も安い値段の注文が寄付板合わせにおいて約定数量が最大となる値段となっていました。
Aは、寄付板合わせ直前(寄付板合わせ1秒前)に発注している注文のうち最も安い値段にあった注文をすべて取り消し、寄付板合わせの約定数量が最大となる値段が直前の値段より大幅に上昇しました。
その結果、Aが発注していた残りの注文は、直前の値段より高く約定し、その後の下落局面で約定した取引を手仕舞い(買戻し)し、差益を得ました。

事例1に係るTOCOMの判断

Aは、当該取引の他、過去1ヵ月間においても同様に、注文受付時間帯での注文発注及び寄付板合わせ直前で注文を取り消す行為を複数商品にわたって複数回行っており、一連の注文取消行為のほとんどで価格変動が生じ、一部の取引においてAは利益を得ていました。
TOCOMは、Aの一連の行為を客観的に見て、実際の価格変動の発生、行為の反復継続性、利益の享受等を総合的に勘案した結果、当該行為はTOCOMの信頼性を損なう、取引の信義則に違反する行為であると判断し、業務規程違反として、X社に対し制裁(過怠金の賦課)を行うとともに、X社に再発防止のための取引監視の徹底等の業務改善を命じました。

事例2 寄付板合わせにおける『作為的な価格操作』

市場取引参加者X社のディーラが、寄付板合わせ直前、複数値段に予め発注していた売指値注文のうち、一部の注文を取り消し、その結果、寄付板合わせの最大約定枚数となる値段が取消し前の値段より大幅に上昇し、寄付板合わせでは、当該ディーラが発注していた残りの売注文が、この大幅に上昇した値段で約定しました。当該ディーラは、その後約定した取引を手仕舞い(買戻し)しました。
TOCOMにて調査を行ったところ、当該ディーラは過去にも同種の行為を多数回にわたり繰返し行っていることが判明しました。

事例2に係るTOCOMの判断

TOCOMは、これら一連の行為を客観的に見て、実際の価格変動の発生、行為の反復継続性、利益の享受等を総合的に勘案した結果、当該行為はTOCOMの信頼性を損なう、取引の信義則に反する行為であると判断し、業務規程違反として、X社に対し制裁(過怠金の賦課及び取引停止を併課)を行うとともに、X社に再発防止のための取引監視の徹底等の業務改善を命じました。
取り消されることになる注文を一定時間板画面に掲げることは、他の市場参加者に市場の状況を誤解させる可能性があり、市場の信頼性を損なうおそれがあります。そして注文の取消しが他の多くの市場参加者が対応しようがないタイミングで行われたことから、TOCOMは、取引の信義則に反する行為であると判断しました。また、TOCOMよりX社に対しては以前にも同種の行為に対して注意を行っていたという事実もあります。