リスク管理への取組み

市場運営者としてその公共的な役割を果たし、企業価値を持続するためには、堅実かつ安定的に業務を運営する体制を維持することが必要不可欠です。日本取引所グループ(以下、「JPX」という)では、そうした観点からリスク管理に取り組んでいます。

リスク管理の全体像

リスク管理体制

JPXは、システム障害リスク、訴訟リスク、清算参加者破綻時の補償等リスク、事務過誤のリスクなど、事業上様々なリスクを抱えています。これらのリスクに対応するため、社外取締役を委員長とする「リスクポリシー委員会」及びCEOを委員長とする「リスク管理委員会」を設置し、JPXで定めた「リスク管理方針」に従って、未然防止の観点からリスクの認識と対応策の整備・運用を行うとともに、リスクが顕在化あるいはそのおそれが生じた場合には、早期に適正な対応をとる体制を整えています。

「リスクポリシー委員会」においては、事業年度毎にJPXが重点的に対応すべきリスクを「重要リスク」として特定し、その結果を「包括的リスク管理ステートメント」として取りまとめ、取締役会に提言します。JPXでは、策定された「包括的リスク管理ステートメント」をもとに、未然に「重要リスク」等への対応を行うことで、リスクの発現可能性を低減させるとともに、リスクが顕在化した際には機動的な対応を行います。また、重大事故発生時には、統括的な状況把握、早期解決に向けた指揮などが「リスク管理委員会」によって行われる体制となっており、経営陣へと必要な情報が漏れなく、迅速に入る体制が整備されています。

リスク分類

リスク区別 リスクの例
事業環境・事業戦略リスク 景気変動、法規則、人口動態変化、技術革新、投資家動向、論調リスク、事業選択の失敗
事故・災害リスク 大地震、台風、津波、伝染病、テロ、社会インフラの停止、火災・事故
システムリスク ハードウェアのキャパシティ不足、アプリケーションエラーのリスク
法的リスク 業務上の法令違反、取引先の契約不履行、反社会勢力との関係を持つリスク
財務リスク 財務報告の信頼性が損なわれるリスク、資金不足、預金等の資産を毀損するリスク
人的リスク 人員不足、社員の労働災害や健康被害等の発生リスク
情報セキュリティリスク 情報漏えい、不正アクセス、コンピューターウイルス侵入リスク
事務リスク 業務手続ミス、判断ミス等のリスク
関係会社リスク グループ会社において発生するリスク
レピュテーションリスク 社員の言動や第三者の言動等による社会的な評価の低下リスク
債務引受業に係る信用リスク及び資金流動性リスク 清算参加者の破綻等により、損失が生じるリスク
その他リスク 上記以外のリスク

重要リスク

JPXでは、事業年度毎に当社グループにおける重要リスクを特定(※)し、当該リスクに対して必要な対応を予防的に行うことでリスクの発現をコントロールするとともに、リスクが顕在化した場合にも機動的な対応が可能となるような管理を行っています。

  • JPXのリスク管理では、①内部環境に潜在するリスクについて、JPX全社を挙げての洗い出し及び②外部環境に潜在するリスクについて、地政学リスクなどの幅広な観点から経営陣も交えて議論を実施し、それらの結果に基づいて、重要リスクの検討を行っています。検討段階では数多くのリスクが検出されていますが、JPXにて精査を行い、それらのリスクのうちから、発現した場合の影響度、発現頻度を踏まえて、事業年度毎にJPXとして最も注意すべきと認識しているリスクを重要リスクとして定義し、重点的に予防的な対応を実施しています。

主要な重要リスク

リスク事象
リスクシナリオ
JPXグループの事業継続・事業運営等に影響を及ぼすリスク 広域災害等の発生に伴い、社会インフラが被災し、電力供給等が正常に行われなくなり、事業継続が困難になるリスク
当社システムがサイバー攻撃を受け、市場運営等に影響を及ぼすリスク
国内・国外の経済・政治イベントにより、短期的に為替相場が急変し、マーケットの乱高下が発生し、システムのキャパシティが逼迫することにより、売買継続が困難になるリスク
新型ウイルス感染症の感染拡大により、社員の通勤困難、感染者の発生等が生じ、市場運営等に影響を及ぼすリスク
当社システムのソフトウェア等の障害により、市場運営等が困難になるリスク
ESG課題等を始めとしたサステナビリティ推進への対応不足により、当社グループの市場インフラに対する信認・支持が低下するリスク
JPXグループの業績・財務面等へ影響を及ぼすリスク 欧米等の主要経済圏における政治・経済情勢の変化により、中長期的に市況が低迷することによる取引が減少するリスク
清算参加者の破綻等によりJPXグループの財政状態に影響を及ぼすリスク