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2024/10/01 東証OSE 三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社及びモルガン・スタンレーMUFG証券株式会社に対する処分等について
三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社(以下「MUMSS」という。)及びモルガン・スタンレーMUFG証券株式会社(以下「MSMS」という。)に対して、株式会社東京証券取引所及び株式会社大阪取引所が、下記のとおり処分を行うとともに、業務改善報告書の提出を請求しましたので、お知らせいたします。なお、本件は、日本取引所自主規制法人の審議結果に基づき決定したものです。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社
1. 内容
東京証券取引所における処分
- 過怠金4,000万円の賦課(東京証券取引所取引参加者規程第34条第1項第8号に基づく)
大阪取引所における処分
- 戒告(大阪取引所取引参加者規程第42条第1項第10号に基づく)
2. 理由
(1)銀証間における不適切な顧客情報の共有等
ア 銀証間における不適切な顧客情報の共有等
金融商品取引法(以下「金商法」という。)第44条の3第1項第4号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令(以下「金商業等府令」という。)第153条第1項第7号において、有価証券関連業を行う金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限る)は、当該金融商品取引業者又はその親法人等若しくは子法人等による非公開情報の提供について、あらかじめ発行者等の書面又は電磁的記録による同意がある場合等を除き、当該金融商品取引業者の親法人等若しくは子法人等と当該発行者等に関する非公開情報を受領又は提供してはならないとされている。
しかしながら、MUMSSの役職員は、親法人等である株式会社三菱UFJ銀行(以下「MUBK」という。)、親法人等であるMSMSとの間において、法人顧客から情報共有を禁止されていること又は情報共有の同意を得ていないことを認識しながら、当該法人顧客に関する非公開情報の授受を少なくとも13回にわたって行い、これをMUMSS内で共有していた。また、MUBKから受領した一部の非公開情報については、MUMSS代表取締役副社長(当時)自らが受領するとともに、当該非公開情報を利用して、引受契約の締結にかかる勧誘を行っている状況も認められた。
イ 法人関係情報の管理態勢不備
金商法第40条第2号に基づく金商業等府令第123条第1項第5号において、金融商品取引業者は、法人関係情報に係る不公正な取引の防止を図るために必要かつ適切な措置を講じなくてはならないとされている。
しかしながら、上記アのとおり、MUMSSの役職員は、MUBK及びMSMSとの間で不適切な法人関係情報の授受を少なくとも13回にわたって行っていた。
また、社内規程に基づく適切な管理を行わないなど、法人関係情報の不適切な管理も少なくとも16件認められた。
MUMSSにおける上記アの行為は、金商法第44条の3第1項第4号に基づく金商業等府令第153条第1項第7号及び第8号に規定する行為に該当するものと認められる。
また、MUMSSにおける上記イのような状況は、金商法第40条第2号に基づく金商業等府令第123条第1項第5号に該当するものと認められる。
(2)登録金融機関による有価証券関連業の禁止を看過・助長したうえで不適切に金融商品取引契約を締結している状況
ア 登録金融機関による有価証券関連業の禁止を看過・助長したうえで不適切に金融商品取引契約を締結している状況
MUMSSは、前回検査において、MUMSSからMUBKに対して引受交渉を依頼し、MUBKが引受シェアの交渉を行ったともとれるような営業日報の記録が認められるなど、MUBKが法令上禁止されている有価証券関連業務を行うことを誘発しかねない状況が認められる旨の指摘を受けていた。この際、MUMSSは、MUMSS担当職員に対する聞き取りを中心とした事実関係の確認のみにとどまり、メール等の検証やMUBKに対する確認を行うことなく、単に誤解を招く記載であったなどと結論づけていた。この結論を前提に、社内に対して営業日報に不適切な記載を行わないよう注意喚起が行われ、MUBKが引受交渉を行っていた旨の事実関係が営業日報に記載されない状況となっていた。このような中、以下のような事実関係が確認された。
① MUMSS役職員は、少なくとも4回、MUBKが法令違反に該当し得る有価証券の引受けに係る交渉を行っている状況につき、MUBKから報告を受けるなどして把握していたにもかかわらず、MUMSSコンプライアンス部門に対して当該行為を報告・相談していないほか、MUBKの行員に対し、当該行為を止めるよう注意や警告をすることなく、この状況を看過・助長したうえで金融商品取引契約を締結した。
② MUMSS職員は、少なくとも3回にわたり、MUBKの行員に対し、引受交渉を要請するなど、MUMSS職員からMUBKに対して不適切な働きかけを行っていた。
③ MUMSS職員は、MUBKが本来行うことができない引受業務を行っていること、MUBKが所定の契約条件の融資を行う場合の最低条件としてMUMSSの引受シェアを引き上げてほしい旨の抱き合わせ勧誘を行っていること、及び、MUBKにより所定の契約条件の融資が行われていることを知りながら、顧客との間で引受契約を締結した。
イ 不適切な銀証連携を防止するための内部管理態勢が不十分な状況
MUMSSは、前回検査において、MUBKが法令上禁止されている有価証券関連業務を行うことを誘発しかねない状況及びモニタリングが不十分な状況であった旨の指摘を受けており、改善策として、不適切な銀証連携の防止などをテーマとした研修の実施やモニタリングの強化に取り組んでいた。
しかしながら、MUMSSコンプライアンス部署によるモニタリングが不十分であったことから、MUBKにおいて多数の法令違反行為が行われている状況を全く把握していなかったほか、MUBKによる法令違反行為が行われていた疑義のある事象少なくとも1件をモニタリングで検出していたにもかかわらず、グループ全体のコンプライアンスを担当する部署と連携し、必要な対応策を講じるなどの然るべき対応をすることを怠るなど、MUBKの法令違反行為を看過していた。
このようなMUMSSの対応状況は、不適切な銀証連携を防止するための内部管理態勢が不十分であったと認められる。
MUMSSにおける上記のような状況は、金商法第51条の「公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき」に該当するものと認められる。
また、上記行為ア③については、金商法第44条の3第1項第2号で禁止されている行為に該当する。
なお、上記のような状況は、MUMSS経営陣において、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループがグループ会社間の営業連携やこれに伴うグループ収益の拡大を掲げる中で、MUBKがグループ収益の確保に向けて、法令で禁止されている引受交渉等に自ら関与するリスクの認識が希薄であったことにより発生したものと認められる。
上記(1)(2)の行為は、グループ連携に係る適正な内部管理態勢を構築・運用する責務を負っている経営陣が、その責務に照らして求められるべき認識を持たず、上記の不適切行為の発生を未然に防止するために必要な内部管理態勢を構築していないなど、経営陣によるガバナンスが十分に発揮されていないことに起因するものであり、MUMSSにおいては、適切な業務運営を確保するための経営管理態勢に不備があるものと認められる。
モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社
1. 内容
東京証券取引所における処分
- 過怠金1,000万円の賦課(東京証券取引所取引参加者規程第34条第1項第8号に基づく)
大阪取引所における処分
- 戒告(大阪取引所取引参加者規程第42条第1項第10号に基づく)
2. 理由
ア 銀証間における不適切な顧客情報の共有等
金商法第44条の3第1項第4号に基づく金商業等府令第153条第1項第7号において、有価証券関連業を行う金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限る)は、当該金融商品取引業者又はその親法人等若しくは子法人等による非公開情報の提供について、あらかじめ発行者等の書面又は電磁的記録による同意がある場合等を除き、当該金融商品取引業者の親法人等若しくは子法人等と当該発行者等に関する非公開情報を受領又は提供してはならないとされている。
しかしながら、MSMSの職員は、親法人等であるMUMSSとの間において、法人顧客から情報共有を禁止されていること又は情報共有の同意を得ていないことを認識しながら、当該法人顧客に関する非公開情報の受領を少なくとも3回にわたって行い、これをMSMS内で共有していた。また、MUMSSから受領した非公開情報を利用して引受契約の締結にかかる勧誘を行っている状況も認められた。
イ 法人関係情報の管理態勢不備
金商法第40条第2号に基づく金商業等府令第123条第1項第5号において、金融商品取引業者は、法人関係情報に係る不公正な取引の防止を図るために必要かつ適切な措置を講じなくてはならないとされている。
しかしながら、上記アのとおり、MSMSの職員は、MUMSSとの間で不適切な法人関係情報の受領を少なくとも3回にわたって行っていた。
また、本来であれば、法人関係情報を認識した段階で登録手続などの適切な管理を行うべきところ、MSMSにおいては、幹事指名の内諾までは登録手続を行わないという不適切な取扱いが多く確認されているなど、法人関係情報の不適切な管理も少なくとも30件認められた。なお、30件の不適切管理のうち、登録が1月以上遅延している事例が11件認められている(最大遅延は9月以上)。
コンプライアンス部門は、職員の情報登録時の情報取得経緯等を確認する段階で、登録遅延及び登録漏れの疑いを認識し得たにもかかわらず、今回検査において登録遅延及びその疑いを指摘されるまで、いずれも検出できていない状況にあるなど、法人関係情報のモニタリング態勢に不備が認められた。
MSMSにおける上記アの行為は、金商法第44条の3第1項第4号に基づく金商業等府令第153条第1項第7号及び第8号に規定する行為に該当するものと認められる。
また、MSMSにおける上記イのような状況は、金商法第40条第2号に基づく金商業等府令第123条第1項第5号に該当するものと認められる。
上記ア、イの行為等は、MSMS職員が、親法人等から顧客の非公開情報の受領をしてはならないことを認識しながら、案件獲得というMSMS、MUBK及びMUMSSの利益を優先したものであり、銀証連携ビジネス等の推進にあたり、MSMSとして法令等遵守意識が希薄であることに起因するものであって、MSMSにおいては法令等遵守態勢に不備があるものと認められる。
また、経営陣において、日本の法令等の遵守のために必要かつ実効性の伴うモニタリング態勢や、法令等遵守意識の教育指導態勢など、顧客に関する非公開情報及び法人関係情報の取扱いに係る内部管理態勢を十分整備していないことに起因するものであり、MSMSにおいては、適切な業務運営を確保するための経営管理態勢に不備があるものと認められる。
お問合せ
株式会社東京証券取引所 株式部取引参加者室
電話:03-3666-0141(代表)