IR活動に関するインタビュー
株式会社ティーケーピー
遊休不動産をシェアリングすることで社会に新たな価値を創造する株式会社ティーケーピー(以下、TKP)。「再生」をキーワードに、使われなくなったオフィスビルなどを会議・研修・イベントといったビジネスシーンの場として活用するビジネスモデルで成長してきました。信用力・ブランド力を高め、持続的な成長を促すため、2017年に東証マザーズ市場(現グロース市場)に上場。四半期ごとの継続的な開示を基本に、経営陣自らが事業構造や意思決定の背景、中長期の成長ストーリーを一貫して語り続ける姿勢が社内外から高い信頼と評価を集めています。
「IRは社長のロマン」と語り、自らが積極的に投資家と向き合う代表取締役社長の河野貴輝さんに、同社のIR方針や特徴、事業成長においてIRが果たす役割について聞きました。
IR活動の目的・方針
投資家との対話の積み重ねがIRの本質
—IRに取り組む目的を教えてください。
目的はTKPの認知や企業価値を向上させることにあります。投資家に当社をよく知ってもらわなければ、市場で正しく評価していただくことはできず、直接市場で資金調達することもできません。上場している以上、IRは非常に重要な活動だと考えています。
—新規上場(IPO)当時の活動方針をお聞かせください。
上場時には主幹事証券会社と連携しながら、情報開示を行っていました。IR説明会にも自ら登壇し、あわせてメディア出演もしました。特に個人投資家に注目されるIRを意識し、認知を広げていくことを重視していました。
—海外IRについてのお考えや実施状況はいかがですか。
時価総額が一定規模を超えてからは、海外IRにも取り組んできました。香港、シンガポールを皮切りに、その後はニューヨークやロンドンでもIRを展開しています。海外IRは特別な施策というより、上場企業として自然に行うべき活動だと考えています。
—社長にとって、IRとはどのような活動でしょうか。
IRは、過去の数字を説明する仕事ではなく、会社がどこを目指し、どのような考え方で経営をしているのかを伝える行為だと考えています。短期的な業績だけでなく、中長期の方向性や意思決定の背景を含めて説明し、投資家と対話を重ねていくことが、IRの本質だと思っています。
社内体制
経営陣と一体で推進するIR体制
—現在のIRを推進する社内体制はどのようになっていますか。
当社のIR活動はCOOの管轄のもとで進めています。IR担当とCOOを含む経営陣および関係部署との連携が非常に密であるため、社内横断の強いチームとして機能しています。私自身もIRの重要性を強く認識しており、経営と現場が常に同じ目線で市場と向き合えるよう、日々コミュニケーションを図っています。経営陣との距離が近いことは当社の大きな強みであり、一貫性のあるメッセージを迅速に資本市場へ届けることが可能になっています。IRは当社にとって欠かせない戦略領域であり、今後も必要な体制強化を継続しながら、投資家の皆さまとの建設的な対話を重ねていきたいと考えています。
—社内の人的リソース以外で、御社のIRを支えるリソースはありますか。
IR支援会社やIRコンサルティング会社、各種データベースなどを活用し、外部パートナーと専門性を共創する形でIR体制を強化しています。また、AIツールの活用も進めており、議事録作成など効率化できる業務は効率化することで、IR担当者がより本質的な業務に時間を割ける環境づくりを行っています。加えて、外部で開催されるIRセミナーや勉強会への参加を積極的に促し、担当者の知見やスキル向上につなげています。
—現在はどのようなIR活動をされていますか。また、IPO当時と変化した点も教えてください。
当社では、「四半期ごとの決算資料の開示」「四半期ごとの説明会の定期開催」「個人投資家向け説明会」「英文開示」「海外IR」を軸にIR活動を行っています。あわせてIR支援会社も活用しながら、取り組みの改善を継続しています。基本的なIRの枠組みはIPO当初から一貫して継続していますが、事業の広がりや投資家層の変化を踏まえ、その時々で求められる情報の内容や伝え方は見直してきました。IRの「型」は大きくは変えずに、中身をアップデートし続けています。
IR活動の特徴
数字と事業の方向性を一体で伝えるIR
—御社のIRの特徴はなんでしょうか。
当社のIRの特徴は、数字だけを説明するのではなく、事業の中身や考え方をあわせて伝える点にあると考えています。四半期決算資料でもまず業績と事業トピックスをコンパクトにまとめ、そのうえで決算概要、事業概況、戦略アップデート、出店状況、成長投資といった流れで構成するなど、投資家が短時間で全体像と重点ポイントを把握できるよう意識しています。また、結果としての数字だけでなく、その背景や事業の動き、意思決定の考え方をできる限り説明しています。短期的な業績と中長期の方向性を切り離さず、一体として伝えることを意識しています。
—IRを行ううえで重視されていることはありますか。
都合のよいストーリーを作らないことです。情報はできる限り開示し、その情報をどう判断するかは投資家に委ねるという姿勢を大切にしています。個人投資家、機関投資家、それぞれ見方が違うのは当然であり、材料をそろえたうえで判断してもらうことが、IRの基本だと考えています。
—IRを推進していく中で経営陣の役割はどういったことでしょうか。
経営陣、とりわけ社長の役割は、会社の方向性や考え方を自分の言葉で伝えることだと思っています。過去の数字を説明するだけであれば、資料を読めば分かりますが、なぜその判断をしたのか、どこを目指しているのかといった点は、経営陣自身が語る必要があります。期待を形成し、投資家と対話することが、経営陣に求められるIRの役割だと考えています。
外部評価と課題
事業の可視化と一貫した情報開示
—御社は日本証券アナリスト協会の2025年度ディスクロージャー優良企業(新興市場銘柄)に選定されました。どういった点が評価されたのでしょうか。
まず経営陣が一貫してIRに関与し、継続的に情報発信を行っている点が挙げられると考えています。四半期ごとの決算説明会を継続して開催し、自らが事業の方向性や意思決定の背景を説明してきたことが、「経営陣のIR姿勢」という観点で評価いただいていると受け止めています。また、決算説明資料において、業績の推移だけでなく、セグメント別の収益構造やKPI、出店状況など、事業の中身が分かる形で情報を整理している点も、分かりやすさにつながっていると考えています。
—経営の透明性向上に向け、どのような点に注力してきましたか。
経営の透明性向上に向けては、事業構造をできるだけ分かりやすく示す「事業の可視化」、決算説明資料などの構成や開示内容を継続的に整理する「開示の一貫性」、そして経営陣自らが事業環境や戦略の背景を説明する「直接発信」の3点に注力してきました。これにより、事業の動きや収益構造、将来の方向性を投資家に理解されやすくなり、短期業績と中長期の価値創造を結びつけて伝えられるようになったことが、今回の評価にもつながったと受け止めています。
—2019年に続いて2度目の受賞です。今回との違いや変化を教えてください。
初受賞の際には、経営陣のIRへの姿勢や、決算説明会・資料の分かりやすさ、公平かつ迅速な情報開示、ガバナンス情報の開示など、上場企業としてのディスクロージャーにおける基本的な体制や姿勢の構築が評価されたと認識しています。
一方、今回の受賞では、そうした基盤を維持・強化しながら、ESGや人的資本といった非財務情報を含めた中長期の価値創造ストーリーの開示へと評価の軸が進化したと受け止めています。特にESG関連の開示分野において高い評価をいただいており、2019年以降に継続してきた取り組みの成果が表れてきたものと考えています。
—改善点や課題についてお聞かせください。
事業領域が広がってきたことで、会社の全体像や強みをいかに分かりやすく伝えるかは、常に課題だと感じています。情報は可能な限り開示していますが、細かく説明しすぎると、かえって投資家が全体像をつかみにくくなることもあります。また、当社の事業は単純な業種分類に当てはめにくく、不動産セクターとして見られることで、本来の事業内容が十分に伝わっていないと感じる場面もあります。事業の広がりをどう整理して伝えていくかは、重要な課題だと認識しています。
—この課題に対して工夫されていることはありますか。
ビジネスモデルをできるだけ分解して伝えることを常に意識しています。また、ホームページにビジネスモデルや収益構造の理解促進のための動画コンテンツを掲載し、積極的に情報発信をしています。加えて、投資家とのIR面談の中で出た疑問点等は、整理したうえで決算説明会資料へ反映するなど、開示内容の改善に活かしています。
事業の展望とメッセージ
IRをとおして会社の未来を投資家と共有
—今後の事業展望と、その中でIRが果たす役割、重要性についてのお考えをお聞かせください。
当社はこれまで、「再生」を軸に遊休不動産を活用しながら事業領域を広げてきましたが、今後も特定の領域に固定されるのではなく、社会や市場の変化に応じて新たな価値を生み出し続ける企業でありたいと考えています。単一の事業モデルに依存すると、いずれ限界がきます。だからこそ、再生という考え方を軸に、柔軟に事業を進化させていくことが重要だと思っています。
その中でIRの役割は、単に過去の数字を説明することではありません。3年後、5年後、10年後にどのような企業でありたいのか、その方向性や意思決定の背景を市場に伝えていくことがIRの本質だと考えています。経営は将棋や囲碁のように、環境の変化に応じて次の一手を打ち続けるものですが、その途中経過を投資家にきちんと説明していくことが重要です。IRは、会社の未来を共有していくための対話の場だと考えています。
—グロース市場を目指す、またすでに上場している会社にIR活動についてのアドバイスやメッセージをお願いします。
私は、「IRは社長のロマン」だと思っています。IRは通知表のように、今の成績を評価される場だと受け止められがちですが、本来は将来どう成長していくのか、その道筋を伝えるためのものです。新興市場の企業にとって大切なのは、数字の説明だけでなく、この会社を応援したいと思ってもらえる投資家、いわばファンをつくることだと考えています。IRは単なる情報開示ではなく、投資家との対話を通じて企業価値を高めていくための重要な活動です。ぜひ前向きに取り組んでほしいと思います。