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2022/12/20 東証OSE SMBC日興証券株式会社に対する処分等について

 

東京証券取引所及び大阪取引所は、SMBC日興証券株式会社(以下「同社」という)に対して、下記のとおり処分を行うとともに、業務改善報告書の提出を請求しましたので、お知らせいたします。

内容

東京証券取引所における処分

  • 2023年1月16日から同年1月20日までの間、エクイティ本部の自己勘定による当取引所市場における有価証券の売買(ただし、処分公表日以前の既往の契約の履行に伴う売買等、当取引所が個別に認めたものを除く)の停止
  • 過怠金3億円の賦課
  • 上記処分は、東京証券取引所取引参加者規程第34条第2項に基づく。
  • 加えて、同規程第19条第1項の規定に基づき、業務改善報告書の提出を請求。
  • 本件は、日本取引所自主規制法人の審議結果に基づき決定したもの。

大阪取引所における処分

  • 戒告
  • 上記処分は、大阪取引所取引参加者規程第42条第1項に基づく。
  • 加えて、同規程第17条第1項の規定に基づき、業務改善報告書の提出を請求。
  • 本件は、日本取引所自主規制法人の審議結果に基づき決定したもの。

理由

  1. 上場株式の相場を安定させる目的をもって、違法に買付け等を行う行為

    同社は、10銘柄の上場株式について、ブロックオファー取引(以下「BO」という)における売買価格の基準となるBO執行日の終値等が前日の終値に比して大幅に下落することを回避し、その株価を一定程度に維持しようと企て、金融商品取引法(以下「金商法」という)施行令第20条(安定操作取引をすることができる場合)に違反し、各株式の相場を安定させる目的をもって、一連の指値による買付け及び買付けの申込み(以下「本件行為」という)を行った。
    本件行為は、金商法第159条第3項に違反するものと認められる。
    また、本件行為は、同社において、不公正取引を牽制・防止するための売買審査態勢や、法令遵守の徹底や適切な業務運営を確保するための経営管理態勢が不十分であることに起因し、行われたものであると認められる。
  2. 売買審査態勢の不備

    同社は、同社の売買動向監視システム(以下「システム」という)において、株式会社東京証券取引所等が定める基準に準拠して抽出された取引について売買審査を行い、その結果、法令等の違反につながるおそれがあると認められた場合、当該取引を行った顧客等(自己取引を含む)に対して、当該取引の内容や当該顧客等の過去の取引状況等に応じ、ヒアリングや注意喚起などの対応(以下「措置」という)を行うこととしている。
    こうした中、本件行為が行われた10銘柄のうち、8銘柄については、システムにおいては、不公正取引の疑いがある取引として抽出されているが、同社が措置を行う基準は、複数日にわたって行われる取引を対象として設定されており、本件行為のように、銘柄ごとに1立会日のみで行われるような取引は、システムにより抽出されても措置の対象とならない。
    また、同社は、BOの対象銘柄については、自己取引を一切禁止していない。加えて、ブロックトレード等の特定のイベントについては、システムによる抽出の有無にかかわらず、売買審査(以下「イベント審査」という)を行っているが、BOについては、自己取引で終値に関与するインセンティブが働くなど、ブロックトレード等と同様のリスクがあるにもかかわらず、イベント審査の対象としていない。
    こうしたことから、本件行為については、いずれの取引についても措置は行われなかった。

    上記の状況から、同社の自己取引に係る売買審査態勢には不備があるものと認められ、これは、金商法第40条第2号の規定に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第12号に該当するものと認められる。

    なお、上記の状況は、同社において自己取引のリスク等に対する認識が不十分だったことに加え、同社経営陣が、売買審査の件数が増大しているにもかかわらず、それに見合ったシステムの高度化や売買審査体制の整備を行ってこなかったことに起因するものと認められる。
  3. BOに係る業務運営態勢の不備

    同社は、BOの執行に際し、買い手顧客に対して、事前に購入の意思の確認等を行っているが、その際、同社営業員の相当数は、BOの執行日について、買い手顧客が推知可能な内容の説明を行っている。このような状況は、BO執行日に空売りを企図する顧客に対し、その機会を与え、空売りを誘発する一因となっているものと認められる。
    同社は、BO導入(2012年)の検討段階から、買い手顧客におけるBO銘柄の空売りが当該銘柄の価格形成を歪めるものとの懸念を有していたが、BO執行日に係る買い手顧客への情報提供のあり方等について、同社内で適切に議論されることがないまま、BO業務を開始していた。
    また、その後、同社においては、実際にBO執行日における対象銘柄の株価下落に直面し、価格形成に関する懸念など問題提起が行われているが、これに対する有効な対策が講じられてこなかった。

    上記のような同社のBOに係る業務運営状況は、市場の公正性を損なうおそれがあり、金商法第51条に規定する「業務の運営に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であるとき」に該当するものと認められる。

    なお、上記の状況は、同社において、自己のビジネスの業務推進を優先させ、同社のBOの問題点を改善する意識が希薄であるなど、市場のゲートキーパーとしての自覚に欠けていたことや、ビジネスのリスクや課題を適切に把握し、商品性の見直し等の実効的な対策を行うための態勢が不十分であったことに起因するものであり、同社においては、適切な業務運営を確保するための経営管理態勢において不備があるものと認められる。
  4. 銀行と連携して行う業務の運営が不適切な状況

    有価証券関連業を行う金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限る)は、当該金融商品取引業者又はその親法人等若しくは子法人等による非公開情報の提供について、あらかじめ発行者等の書面又は電磁的記録による同意がある場合等を除き、当該金融商品取引業者の親法人等若しくは子法人等と当該発行者等に関する非公開情報を受領又は提供してはならないとされている。
    しかしながら、同社は、2021年1月から同年10月にかけて、親法人等である株式会社三井住友銀行との間において、法人顧客から情報共有の停止を求められていること又は情報共有の同意を得ていないことを認識しながら、当該法人顧客に関する非公開情報の授受を複数回にわたって行い、これを同社内で共有していた。

    同社における当該行為は、金商法第44条の3第1項第4号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第153条第1項第7号に規定する行為に該当するものと認められる。

    なお、上記行為は、同社役職員が、銀証間で情報の授受を行ってはならないことを認識しながら、案件獲得という同社の利益を優先したものであり、同社執行役員自らが非公開情報の受領や社内関係者への情報共有に関与している状況も認められるなど、銀証連携ビジネスの推進にあたり、同社として法令等遵守意識が希薄であることに起因するものであると認められる。

お問合せ

株式会社東京証券取引所 株式部取引参加者室
電話:03-3666-0141(代表)