個⼈投資家による個⼈投資家のためのオプション取引講座

日経225先物・オプション基礎講座デルタ編②-3オプション+日経225miniデルタニュートラル

3.オプション+日経225miniデルタニュートラル

オプションを売買し、そのオプションのデルタを消すのに必要なminiを売買する

最初に見たロングストラドル(ATMのコールオプションとプットオプションの両方を買うというポジション)は、例えば上記【図表15】のようなタイミングでC26125を買って、P26125を買えば組成でき、V字のグラフが出来上がります。

実は、これは日経225先物(ラージ)あるいは日経225miniで合成することができます。

先物とオプションの関係において非常に重要な性質として、先物ラージ1枚(mini10枚)のロングは同じ権利行使価格のコールオプションの買いとプットオプションの売りにより合成できるという特徴があります。

ということは、「コールオプションの買いは、先物ラージ1枚(mini10枚)買いとプットオプションの買い」という形で合成でき、「プットオプションの買いは先物ラージ1枚(mini10枚)売りとコールオプションの買い」という形で合成することができることになります。

C26125とP26125を両方買うポジションは、P26125を「先物ラージ1枚(mini10枚)売りとC26125買い」で合成すれば、結局、C26125を2枚買って、先物ラージ1枚(mini10枚)売りという形に変形できるのです。

C26125をプットオプションと先物で合成すれば、C26125は「先物ラージ1枚(mini10枚)買いとP26125買い」で合成できますので、このC26125買いとP26125買いのロングストラドルは、P26125 2枚買いと先物ラージ1枚(mini10枚)買いという形にも変形できることになります。

【図表16】のうち上のデータはC26125を2枚買って日経225miniを10枚売った場合のポジションデータ、下のデータはC26125とP26125を両方買っているロングストラドルのポジションデータです。

いずれもデルタはほぼ消していますから0に近いことは明らかですが、それ以外の数字を見比べても、ガンマやベガやセータの数値がほぼ一緒であることがわかるかと思います。

完全に合成できているわけです。

ということは、
およそ、あるオプションのポジションをとってそのオプションのデルタを日経225miniで消せば、常にこのようなレンジトレード(相場が動くか動かないか、を取引するというボラティリティトレード)ができるようになるということを意味します。

例えば、上記【図表17】のような場面で、C26750(デルタ+0.301)を買ってデルタニュートラルのポジションを作ってみようと考える場合には、日経225miniを3枚売ればよいことが分かります。
そうすればデルタがきれいに消えます。

右側のグラフの緑のカーブがポジションを組んだ時のグラフですが、ちょうど今デルタニュートラルにしましたから、おわんの底にあって、そこに接線を引くと傾きがありせん。
すなわち、その瞬間では日経平均が上がっても下がって利益が出ない状態です。

ただ満期においては、最終的に青のV字グラフになりますから、相場変動が小さければ損失になります。
上は27,330円を超えてくれば利益になりますし、下は25,400円を割り込めば利益になるということで、これからの相場が、オプションが織り込んでいる損益分岐点を超えて大きく動くだろうと思うときにこのポジションを取ればよいということになります。

もちろん予想に反し、オプションが織り込んでいたレンジ内(上記グラフの損失になる部分)に留まった(オプションが株価変動量を過大評価していた)場合は負けということになります。

このようにオプションを売買して日経225miniでデルタをニュートラルにすることで、上がっても下がっても利益が出る可能性があるポジションを作ることができます。

デルタを取り出すことは、このように原資産の方向性のリスクを取らないためにデルタを消すために行うのです。
そして、そうすることで、「原資産が上がるか下がるか」という形のリスクの取り方(デルタトレード)から、「原資産が、オプションの想定しているレンジを超えて動くか動かないか」という新しいリスクの取り方(ボラティリティトレード)ができるようになったわけです。

もちろん、上がるか下がるかの予想が難しいのと同様に、動くか動かないかの予想も難しい、ということは言うまでもありません。

ところで、とあるオプションを取引し、日経225miniを使ってデルタをうまく消すと言っても若干グラフ(最終損益図)に違いが出てきます。

例えば上記【図表18】左側のグラフのようにデルタ-0.3のプットオプション(ここではP25500)を買って日経225miniを3枚買ったポジションは、現在の水準よりもやや左側に最大損失のV字の頂点(最下点)が来ています。

上記中央のグラフのようにデルタ+0.5(ATM)のオプションを使って日経225miniを5枚当てればきれいなV字となって左右対称の形になります。

デルタが+0.3のコールオプションを買って日経225miniを3枚売るポジションですと、V字の頂点が現在の水準からやや右側に寄ります。

よってプットオプションを使えばいいのかコールオプションを使えばいいのかは、自分の相場観により、レンジが左側に寄るのか、右側に寄るのかを自分なりに考えてどちらを使うのか考えます。

ちょうどど真ん中でやりたければATMのオプションを使えばきれいなV字になります。

デルタを消すという発想は、ロングストラドルタイプのようなV字(オプション売りの場合は逆V字)を作り出すため(レンジトレードを行うため)にとどまらず、様々な意図からオプションを複数用いたポジションを作り、最終的にデルタが出てきたら、日経225miniを当ててデルタのリスクを調整し、さらにそれ以外のオプションのリスクバランスをコントロールして戦うといった形に昇華することになります。

例えばP25500を買ってC26750を売ると、デルタが全部で-0.6になりますので日経225miniを6枚買うことでデルタを±0にする。
そうするとその瞬間傾きが0のポジションが出来上がります。

しかも、その他のオプションリスクも相当程度小さくしたポジションになっています。一体このポジションがどのような意図で組まれているかについては、ここでは説明しませんが、このようにリスクを極限まで小さくしつつも、新しいリスクの取り方、リスク指標自体の変化の仕方を利益かえるといった面白い戦い方ができるようになります。

このようにオプション取引は、まずは原資産の変動の方向性リスクを消すことから始まるといっても言い過ぎではないかもしれません。そしてオプションのデルタを正確に消すために日経225miniがあると言ってもよいかもしれませんね。

今回のポイントは、デルタをニュートラルにして、一体何をしているか、ということです。

これは、上がるか下がるかを予想する戦いから脱却して、日経平均がレンジよりも大きく動くか動かないかを予想する戦い方ができるようになることを意味します。
レンジトレード、株価の変動量をトレードするのでボラティリティトレードといってもいいでしょう。

オプションが織り込んでいる株価変動量と、実際の株価変動量はどちらが大きいのか、どちらが小さいのかを考えます。

レンジの外に行くことを予想すればデルタニュートラルのオプション買いで攻める。
レンジ内を予想するのであればオプションを売ってデルタニュートラルにすればいいのです。

その組み合わせとしてATMでプットとコールを両方買えばロングストラドル、両方売ればショートストラドルです。
その外のオプションの買いや売りでヘッジするのがバタフライとなります。

ATMではなくコールとプット両方のOTMを使った戦略はストラングルといいます。
レンジ内に収まると考える場合はショートストラングル、レンジの外に行くと思えばロングストラングルです。

さらに外側にオプションを買えばコンドルになります。

そして究極的にはオプションを売ったり買ったりして出てきたデルタを日経225miniでヘッジするという形も取れます。
日経225miniが存在している理由として、オプションのデルタを消すためにあると考えていいかもしれません。

このようにデルタニュートラルにすることで、満期型で考えたときには、相場が動くか動かないかをトレードできることをぜひ理解していただきたいと思います。

そして、動くか動かないかだけではない、新しいリスクの取り方にもつながっていきます。


次は日経225先物・オプション基礎講座デルタ編③です

関連動画はこちら!

25先物オプション基礎講座②相場に翻弄されない、上がるか下がるかだけではないトレード戦略

★シミュレーターで練習!
「リスクパラメータ:デルタとは」
「基本戦略:デルタ・ヘッジ」

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<講師紹介>

守屋 史章(もりや ふみあき)氏
オプショントレード普及協会 代表理事
宮崎県出身。慶應義塾大学法学部法律学科卒、同法学研究科修士課程修了。個人投資家として企業数社に投資し、ビジネスオーナーを務める傍ら、証券などへの投資をも手掛ける。投資におけるオプション取引を普及させることを目的に、金森雅人氏と共同でオプショントレード普及協会を設立。短期トレーディングから長期運用まで幅広い投資ニーズをかなえる資産運用を研究している。「オプションについて話せる仲間が見つからない」という孤独になりがちな投資の研究と意見交換を行える会員制のメンバーシップを中心に、個人投資家目線だからこその目からウロコの独創的アイデアと分かりやすい解説で、「わかる」「できる」をサポートする。