金の需給解説(2026年4~6月)
総需要は前年同期比で横ばい、金ETFは売り越しに転じるも
■底堅かった2026年4~6月期の金需要
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が発表した「Gold Demand Trends:Q2 2026」によると、2026年4~6月期(Q2)の世界金総需要(OTC取引等を含む)は1,268.9トンとなった。前年同期の1,268.6トンとほぼ横ばいとなった。LBMA金価格は1~3月期に記録した過去最高値の1オンス=4,872.9ドルから値下がりしたが、前年同期比では37.4%上昇の4,506.3ドルと急伸した。高値の金価格に対する需要側の適応が進んでいる。
■需要:投資需要が減少も、中銀の需要が底堅い
4~6月期の金総需要(OTC取引等を含む)は前年同期比ほぼ変わらずの1,268.9トンとなった。内訳は宝飾が12.4%減の310.3トン、テクノロジーが2.2%増の80.4トン、投資が46.1%減の262.2トン、公的部門(中央銀行など)が62.4%増の288.9トンとなっている。また、OTC取引は91.1%増の327.1トンとなった。
宝飾は低迷が続いた。価格高騰によって消費者が購入量を減らす傾向が続いている。消費者は比較的価格が安い軽量の宝飾品を志向したほか、インドでは古い宝飾品を売却して新しい宝飾品を購入する動きも強かった。また、中国では加工コストの低い投資商品へ人気がシフトする動きも指摘されている。インドでは金輸入関税が6%から15%まで引き上げられた一方、中国は宝飾品よりも投資商品に有利な税制となった。4~6月期としては、パンデミックが発生した2020年以来の低水準にとどまった。ただし、金宝飾品に対する支出額は堅調に推移しており、宝飾品市場の「量」と「金額」の乖離が拡大した。
投資は、地金・コインが前年同期比2.7%減の307.1トン、上場投資信託(ETF)が44.8トンの売り越し(前年同期は171.1トンの買い越し)となった。地金・コインは1~3月期に476.8トンと驚異的な水準まで拡大していたが、4~6月期は金価格が調整局面入りし、短期的な価格見通しが悪化したことが、需要を抑制した。ただし、4~6月期の需要規模としては、概ね長期トレンドと一致しており、特に強くもなく、弱くもない水準となった。一方、ETFは2024年4~6月期以来の売り越しになった。月次では、3月に続いて6月も大規模な売り越しとなった。特に、北米では米連邦準備制度理事会(FRB)のタカ派スタンス、インフレ懸念を背景とした実質金利の上昇やドル高が、金保有の機会コストを高めた影響が指摘されている。
ただし、4~6月期はOTC取引で前年同期比91.1%増の327.1トンが報告されている。これは2020年10~12月期以来の高水準となる。1~3月期の243.7トンに続いて、地金・コイン、ETFといった投資需要の区分には計上されない大規模な需要が、主にアジア地域で報告されている。投資分野で、アジア投資家の影響力の拡大を象徴する動きと言える。
公的部門は、1~3月期に56.5トンと低迷したが(前回発表の243.7トンから下方修正)、4~6月期に288.9トンと盛り返した。4~6月期としては過去最高となる。中央銀行を対象とした最新の調査では、回答者の89%が今後1年で世界の金準備高が増加すると予想している。準備資産の分散、地政学的リスク、金融市場の不確実性に対するヘッジなどの認識が維持されている。主な購入国はポーランド(51トン)、中国(33トン)、ウズベキスタン(16トン)、カザフスタン(15トン)などで、常連国の購入が目立った。一方、1~3月期はトルコが中東情勢緊迫化を受けて金を売却し、スワップ取引でも売り越していたが、4~6月期は4トンの売却にとどまった。スワップ取引の未決済残高も、80トン超から約60トンまで減少した。ただし、経済難が続くロシアは22トンを売却した。
■供給:鉱山生産高止まりも、リサイクルが落ち込む
4~6月期の金総供給は前年同期比変わらずの1,268.9トンとなった。内訳は、鉱山供給が同2.3%増の942.8トン、リサイクル供給が同5.9%減の326.1トンとなっている。
鉱山生産量は前年同期比1.9%増の965.6トンとなり、4~6月期としては過去最高となった。前期の901.3トンも上回っている。カナダ、チリ、ブルキナファソ、ガーナなどの増産が目立った。金価格高騰に伴う新規・拡張事業の稼働が各国で報告されている。
鉱山ヘッジ残高は22.8トン減少した。これで10四半期連続の減少になる。引き続き、金価格が現在よりも大幅に低かった局面で締結されたヘッジ契約の解消が続く一方、ヘッジポジションの再構築、プットオプションへの転換も報告されている。
リサイクル供給は、低調だった。1~3月期の373.8トンからも減少している。1~3月期は金価格の高騰がリサイクル供給の拡大を促していたが、4~6月期は金価格が調整局面入りしたことで、供給が抑制された。インドと中国では、古い宝飾品を下取りに出して、新しい宝飾品を購入する動きが報告されている。欧米ではリサイクル処理能力の制約が緩和されたが、価格低下の影響の方が大きかった。一方、中東情勢の混乱に伴ってインフレ率や失業率が上昇したにもかかわらず、消費者が金を売却する兆候はみられなかった。

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