原油の需給解説(2026年4~6月)

供給ショックと需要ショックが同時発生

2026年8月
マーケットエッジ株式会社
代表取締役 小菅 努

■中東情勢緊迫で、2026年上期は大規模な供給不足が発生

石油輸出国機構(OPEC)が発表した「Monthly Oil Market Report August 2026」によると、世界石油需要は2025年の日量1億0,516万バレル(前年比で日量132万バレル増)に対して、26年は日量1億0,574万バレル(同58万バレル増)となる見通しだ。

一方、世界の石油供給は2025年の日量1億0,478万バレルに対して、26年1~3月期は1億0,310万バレル、4~6月期は9,725万バレルにとどまった。3月以降、イラン戦争による大規模な供給障害が発生した影響もあり、1~3月期には日量289万バレル、4~6月期には586万バレルの供給不足が発生した。

世界石油需給

■需要:価格高騰と供給ショックで、需要見通しも悪化

OPECによると、2026年の世界石油需要は前年比で日量58万バレル増の日量1億0,574万バレルが予想されている。中東情勢が不安定化する前の2月時点では138万バレル増が見込まれていたが、その後は急激な原油・石油製品価格の高騰、供給障害の発生を受けて、需要見通しが大幅に下方修正された。経済協力開発機構(OECD)加盟国が日量4万バレル減の日量4,591万バレル、OECD非加盟国が日量61万バレル増の日量5,982万バレルと、引き続き新興国・途上国が需要拡大をけん引する見通しだが、需要見通しの下方修正の大半を占めているのも新興国・途上国になっている。

世界石油需要(見通し)

中国とインドに関しては、需要の伸びがほぼ止まる見通しへ修正されている。中国は4月以降、石油製品の需要が前年同月比マイナスになっている。価格高騰、交通量の減少、電気自動車(EV)の普及によって、特にガソリンとディーゼルの落ち込みが顕著になっている。インドでは、中東からの調達難や価格高騰を受けて、ナフサと液化石油ガス(LPG)の需要が落ち込んでいる。一方、ガソリンとディーゼルの需要はほぼ横ばいになっている。前年比で中国は日量9万バレル増、インドは日量6万バレル増が見込まれている。

四半期別では、1~3月期が日量1億0,598万バレル、4~6月期が日量1億0,311万バレル、7~9月期が日量1億0,618万バレル、10~12月期が日量1億0,766万バレルと予想されている。4~6月期に前年同期比マイナスに落ち込むものの、年後半は緩やかな需要回復が想定されている。

2026年世界石油需要 前年比(見通し)

なお、国際エネルギー機関(IEA)は「Oil Market Report August 2026」において、2026年の世界石油需要が前年比で日量160万バレル減と、大きな落ち込みを予想している。4~6月期に日量490万バレル減と大きく落ち込んだ後、7~9月期は日量280万バレル減まで減少幅が縮小し、10~12月期に日量58万バレル増と増加に転じる見通しになっている。主に燃料価格の高騰の影響が指摘されているが、2027年は日量240万バレル増と回復に向かう見通しが示されている。

■供給:湾岸諸国で大規模減産も、6月以降は減産縮小

OPECによると、OPECプラスの産油量は2025年10~12月期の日量4,299万バレルに対して、26年1~3月期は日量3,990万バレルまで急減し、4~6月期は日量3,431万バレルまでさらに減少している。イラン戦争の勃発でホルムズ海峡が封鎖され、湾岸諸国からの供給が大幅に落ち込んだ。6月に米国とイランが停戦で合意したことで、6月の産油量は回復したが、4月と5月の落ち込みを相殺することはできなかった。25年10~12月期に対して、26年1~3月期は日量309万バレル減、4~6月期は日量868万バレル減となった。

OPEC産油量(現加盟国)

一方、非OPECプラス諸国の産油量は2025年の日量5,420万バレルに対して、26年は日量5,484万バレルまで増加する見通しだ。全体で日量64万バレルの増産見通しだが、ブラジルが日量41万バレル増、米国が日量35万バレル増、カナダが日量11万バレル増、アルゼンチンが日量10万バレル増と、米州(北米+南米)が増産の中心になると予想されている。26年1~3月期の日量5,451万バレルに対して、4~6月期が日量5,418万バレル、7~9月期が日量5,508万バレル、10~12月期が日量5,557万バレルと、年後半にかけて緩やかな増産が見込まれている。原油高が増産を促す一方、大規模な増産加速までは想定されていない。

2026年非OPECプラス石油供給 前年比 (見通し)

米ベーカーヒューズによると、2026年8月14日時点の米石油リグ稼働数は、前年同期比43基増の455基。2025年8月以降は410基前後でほぼ横ばいに推移していたが、26年5月下旬以降に増加傾向が強まっている。2025年5月以来の高水準に達しており、米国の原油増産・輸出拡大を支援している。

米石油リグ稼働数

■在庫:2026年上期にOECD商業在庫は急減

OPECによると、OECD加盟国の商業在庫は、2025年末の28.40億バレルから、26年4月は27.56億バレル、5月は27.56億バレル、6月は27.29億バレルと総じて減少傾向にある。25年6月の27.89億バレルと比較すると、前年同月比で0.60億バレル少ない。また、過去5年平均を0.26億バレル下回っている。上期は各国の戦略石油備蓄放出が行われたが、商業在庫も大きく取り崩されている。

IEAは、世界の石油在庫が戦争開始後、7月までに累計4億1,000万バレル、平均で日量270万バレル減少したと報告している。2026年7~9月期に日量180万バレルの供給不足になるものの、年末までには供給過剰に転じるとの予想を示したが、需給見通しを巡るリスクは依然として大きいとしている。

OECD商業在庫(四半期末)

※過去に公表された数値は、見直し等により修正されている場合があります。本資料のグラフは、修正後の数値を反映しています。

■参考、データ出所
・OPEC 「Monthly Oil Market Report August 2026」
・IEA 「Oil Market Report August 2026」
・Baker Hughes 「North America Rig Count 08/14/26」

(関連動画)原油の基礎知識シリーズ