天然ゴムの需給解説(2025年10~12月)

中国の需要鈍化と東南アジアの天候不順


マーケットエッジ株式会社
代表取締役 小菅 努

■需要:好調だった2024年の反動で失速

天然ゴム研究会(IRSG)が発表した「Rubber Statistical Bulletin」によると、2025年10~12月期(Q4)の世界天然ゴム需要は、10月が前年同月比6.0%減の126.7万トン、11月が同2.3%減の128.6万トン、12月が同5.2%減の123.8万トンとなった。天然ゴム相場は安定していたものの、需要は3ヵ月連続で前年同月比マイナスとなった。

世界天然ゴム需給

天然ゴム需要(月)

ただし、これは3ヵ月連続で130万トンを上回った2024年10~12月期が好調だったことの反動減と言える。2023年10~12月期と比較すると、10月は0.7%減だったが、11月は4.9%増、12月は0.6%増となっており、この時期としては通常の需要規模だったといえる。

天然ゴム需要(前年同月比)

2024年4月、中国政府は景気対策の一環として、主に新エネルギー車(NEV)への買い替えを対象に、年末まで最大1万元(8月には2万元に引き上げ)の補助金を交付する制度を発表した。25年も買い替え補助金は継続したが、25年半ば以降は予算制約から補助金の縮小や停止を発表する動きが相次いだ。さらに景気減速による個人消費環境の悪化もあって自動車市場が失速し、ゴム需要も抑制する展開になった。10月には中国政府が第15次5ヵ年計画(2026~30年)において、戦略的新興産業から電気自動車(EV)を除外するなど、EVの過剰生産問題への対応を始めたことも、ゴム需要には逆風になった。

中国 天然ゴム需要(月)

2026年も買い替え支援策の枠組みは維持されたが、政策支援の規模は縮小され、さらに消費環境が一段と悪化するなか、自動車市場を取り巻く環境は厳しさを増している。2026年5月時点で、新車販売台数は8ヵ月連続で前年同月比マイナスとなっている。国内販売の不振を輸出でカバーすることも難しくなっている。イラン戦争による世界経済の混乱の影響も指摘されている。

中国 新車販売台数(月)

中国以外では、インドは自動車・二輪車の販売が2024年に続いて25年も好調に推移し、新車用のみならず買い替え用タイヤ市場も底堅さが目立った。25年9月に物品・サービス税(GST)の簡素化が発表され、小型車の税率が28%から18%に引き下げられたことも、10~12月期のゴム需要にとって追い風になった。タイでは、2024年と比較すると25年の国内自動車販売台数は回復した。しかし、輸出の鈍化傾向が目立ったことから、10~12月期の自動車・タイヤ市場は強弱まちまちの展開となった。

天然ゴム需要(月)

■供給:天候不順の影響で生産量は抑制

2025年10~12月期(Q4)の世界天然ゴム生産は、10月が前年同月比1.8%減の150.6万トン、11月が同2.2%減の151.7万トン、12月が同5.5%減の151.1万トンとなった。需要と同様に、生産も3ヵ月連続で前年同月比マイナスとなった。

天然ゴム生産(月)

天然ゴム生産(前年同月比)

11~12月にかけて、タイ南部を中心に豪雨が発生し、洪水、地滑り、鉄砲水などの気象災害が発生した影響で、タッピング(ゴム樹液の採取)が困難になったことに加えて、集荷、加工、輸出など、広範囲にわたって混乱が報告された。また、年末にかけては、インドネシアやマレーシアなどにも混乱が広がり、特にインドネシアについては、老木の植え替えの遅れ、パーム油などへの転作といった構造的な生産能力の抑制要因も指摘されている。
一方、コートジボワールは安定した増産基調にあり、11月と12月にはインドネシアの生産規模を上回った。輸出を未加工のカップランプから、高付加価値のブロックラバーへ切り替える動きが続いているが、大きな混乱はみられなかった。
カカオ相場が急落した影響で、カカオ以外の農産物に対する農家の生産意欲が高まったことも、天然ゴムの生産拡大を後押しした。ただし、前年と比較すると需要抑制の影響で天然ゴム価格も前年を下回っているため、大規模な増産には至らなかった。

天然ゴム生産(月)

■需給バランス:供給過剰幅は前年同期よりも拡大

2025年10~12月期の天然ゴム需給バランスは、合計で74.3万トンの供給過剰となった。前年同期の71.2万トンから、供給過剰幅は若干拡大している。7月以降は、おおむね季節トレンドに沿う形で供給過剰が発生している。

総生産が453.5万トン(前年同期は468.3万トン)だったのに対し、総需要が379.2万トン(同397.2万トン)となった。生産・需要ともに前年前期比でマイナスになったが、需給バランスでは、やや供給過剰圧力の強さが目立った。

天然ゴム需給バランス(月)

天然ゴム需給バランス(月)

■在庫:国内、中国ともに抑制されている

日本取引所グループ(JPX)発表の天然ゴム(RSS)指定倉庫在庫は、2025年12月末時点で2,114トンとなった。24年12月末の2,846トン、23年12月末の5,916トンを下回っている。なお、26年6月10日時点では5,470トンまで回復している。

JPX天然ゴム(RSS)指定倉庫在庫

上海先物取引所(SHFE)の天然ゴム在庫(On Warrant)は、2025年12月末時点で9万3,930トンとなった。24年12月末の14万6,180トン、23年12月末の16万5,220トンを下回っている。なお、26年6月18日時点では15万1,510トンまで回復している。

SHFE天然ゴム在庫

■参考、データ出所
・International Rubber Study Group(IRSG) 「Rubber Statistical Bulletin」
・日本取引所グループ(JPX) 「ゴム(RSS)市場指定倉庫入庫、出庫及び在庫集計」
・上海先物取引所(SHFE) 「Shanghai Futures Exchange Warehouse Stocks Weekly」
・中国自動車工業協会(CAAM)のデータは、各種報道より集計

(関連動画)天然ゴムの基礎知識シリーズ