天然ゴムの需給解説(2026年1~3月)

減産期の供給不足も、需要低迷で不足幅は縮小


マーケットエッジ株式会社
代表取締役 小菅 努

■需要:欧州を中心に世界的に減速

天然ゴム研究会(IRSG)が発表した「Rubber Statistical Bulletin」によると、2026年1~3月期(Q1)の世界天然ゴム需要は、1月が前年同月比4.4%減の122.8万トン、2月が同7.8%減の104.3万トン、3月が同6.8%減の126.4万トンとなった。天然ゴム相場は、中東戦争の混乱に伴い不安定化したものの、総じて底堅く推移した一方、需要は6ヵ月連続で前年同月比マイナスとなった。

世界天然ゴム需給

天然ゴム需要(月)

2026年1~3月期合計は353.4万トンであり、前年同期の377.2万トンを6.3%下回った。中国自動車市場の減速に加えて、北米と欧州で交換用タイヤの需要が低迷した。また、工業生産活動や貨物輸送が減速したこと、サプライチェーン全体で在庫調整の動きが活発化したことが、天然ゴム需要を抑制した。中東での戦争によるエネルギー高や物流の混乱も、需要の下押し要因になったとみられる。

天然ゴム需要(前年同月比)

中国は、好調な輸出でも国内自動車市場の落ち込みを補えなくなった影響が大きい。1~3月期の自動車販売は前年同期比5.6%減だが、国内販売は20.3%減、輸出は56.7%増となった。新エネルギー車(NEV)の買い替え支援策が概ね終了したことに加えて、消費環境の悪化もあり、中国自動車市場は減速した。

中国 天然ゴム需要(月)

大型車向けの全鋼ラジアルタイヤは比較的底堅く推移したが、乗用車向けの半鋼ラジアルタイヤの減速が目立った。また、先行き不透明感からタイヤメーカーが原材料在庫の積み増しに慎重になり、在庫調整を進めたことも、需要を抑制したとみられる。輸出は好調を維持したため、タイヤ向けゴム需要の大幅な落ち込みは回避されたが、それでも伸び悩みが鮮明になった。

中国 新車販売台数(月)

中国以外では、インドが2025年10~12月期の弱含みが続いている。自動車市場が大きく減速したわけではないが、交換用タイヤ需要が鈍化したこと、貨物輸送の減速に加えて、中国と同様にサプライチェーン全体で在庫調整を進める動きも、ゴム需要を抑制した。一方、タイでは中間需要の鈍化が報告されており、ゴムシート、ラテックスなどの需要が前年同期比でマイナスになった。ゴム価格の上昇もあり、加工業者は原料調達に慎重になり、在庫の消化を優先したことも、ゴム需要を抑制した。また、1~3月期は欧州市場の減速が目立った。乗用車向けタイヤ需要は堅調だったが、ゴム使用量が多いトラック・バスなどの大型車向け需要が落ち込んだ。政治・経済環境の先行き不透明感の影響が指摘されている。

■供給:季節要因と天候不順で減産が進む

2026年1~3月期の天然ゴム生産は、1月が前年同月比2.5%減の128.4万トン、2月が同0.1%増の100.8万トン、3月が同0.8%減の75.5万トンとなった。2025年10~12月期に続いて、前年同月比マイナスとなる月が目立った。1~3月期合計は304.8万トンであり、前年同期の308.5万トンを1.2%下回った。

天然ゴム生産(月)

天然ゴム生産(前年同月比)

1~3月はウインタリング(落葉期)に入り、減産期を迎え、季節トレンドに沿う形で減産が進んだ。タイに関しては、南部は全体的に豪雨傾向が目立ち、タッピング(ゴム樹液の採取)作業が妨げられた。また、豪雨の影響が比較的小さかった地域では高温・乾燥傾向によって樹液の分泌が抑制されたとみられる。天然ゴム価格は比較的底堅く推移したため、農家の生産意欲は弱くなかったが、季節要因に加えて天候不順の影響で、生産は伸び悩んだ。徐々にエルニーニョ現象発生への警戒感が高まったが、1~3月期時点ではまだエルニーニョ現象は先行きのリスク要因にとどまった。インドネシアもタイ同様に減産傾向が強かったが、天候不順に加えてパームオイルへの転作、作付面積の減少、老木の植え替えの遅れなど、構造的な問題の影響も大きいとみられる。特にスマトラでは、天然ゴムと比較して採算性が高く、労働者の負担が小さいパーム油への転作が加速しているとみられる。

一方、コートジボワールは安定した増産傾向が続いており、5ヵ月連続でインドネシアの生産量を上回った。インドネシアとは逆に、作付面積の増加、成熟樹が増加したことによる収量拡大などの影響が大きいとみられる。アジア主要国の生産の伸び悩みを補完する主要生産国としての地位が一段と高まった。

天然ゴム生産(月)

■需給バランス:需要ショックが供給不足の幅を抑制

2026年1~3月期の天然ゴム需給バランスは、合計で48.6万トンの供給不足となった。前年同期の68.6万トンから、供給不足幅は縮小している。例年、減産期の2~6月を中心に供給不足になる季節傾向にあるが、今年も2月から供給不足に転じた。

総生産が304.8万トン(前年同期は308.5万トン)だったのに対して、総需要が353.4万トン(同377.2万トン)となった。生産・需要ともに前年同期比マイナスになったが、需要の減少幅が相対的に大きく、季節要因に基づく供給不足幅を抑制した。

天然ゴム需給バランス(月)

天然ゴム需給バランス(月)

■在庫:3月末の国内在庫は前年同期を上回る

日本取引所グループ(JPX)発表の天然ゴム(RSS)指定倉庫在庫は、2026年3月末時点で4,746トンとなった。25年3月末の4,074トンを上回る一方、24年3月末の9,395トンを下回っている。なお、8月30日時点では2,397トンまでさらに減少している。

JPX天然ゴム(RSS)指定倉庫在庫

上海先物取引所(SHFE)の天然ゴム在庫(On Warrant)は、2026年3月末時点で12万5,410トンとなった。25年3月末の20万0,250トン、24年3月末の21万1,960トンを下回っている。なお、9月18日時点では14万3,080トンまで増加している。需要低迷によって供給不足幅は縮小しているものの、日中の流通在庫は依然として低水準にあり、供給ショックに対する価格感応度は高い状態が続いている。

SHFE天然ゴム在庫

※過去に公表された数値は、見直し等により修正されている場合があります。本資料のグラフは、修正後の数値を反映しています。

■参考、データ出所
・International Rubber Study Group(IRSG) 「Rubber Statistical Bulletin」
・日本取引所グループ(JPX) 「ゴム(RSS)市場指定倉庫入庫、出庫及び在庫集計」
・上海先物取引所(SHFE) 「Shanghai Futures Exchange Warehouse Stocks Weekly」
・中国自動車工業協会(CAAM)のデータは、各種報道より集計

(関連動画)天然ゴムの基礎知識シリーズ