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3-1.上場会社とは①~上場審査とは~

「上場」とは企業が発行する株式を証券取引所で売買できるように、証券取引所が資格を与えることをいいます。上場によって、企業は円滑な資金調達が可能となるほか、社会的信用や知名度の向上といったメリットがあるとされる一方で、上場を維持するためのコストの増加や社会的責任の増大といった新たな負担も生じることとなります。
上場により株式は、日本中はもとより世界中の投資家が売買を行う対象となるため、証券取引所では投資家を保護する立場から、その株式が様々な投資家が売買を行う対象としてふさわしいかどうか(適格性の有無)について審査(上場審査)をおこなっています。

上場を希望する企業は証券取引所に申請を行い、証券取引所が定める基準に適合しているか審査が行われることとなります。
証券取引所が定める基準(上場審査基準)には、上場する株式数や株主数、利益の額といった数値などで形式的に定められた基準(形式基準)と、企業内容などの情報を適切に発信することができる状況にあるかどうか、事業を公正かつ忠実に遂行しているかどうかといった基準(実質基準)があります。

※東京証券取引所ではプライム市場、スタンダード市場、グロース市場に市場が分かれており、それぞれの市場の特徴に応じて、満たすべき基準が異なっています。

形式基準の主な内容(プライム市場の場合)

株式の流動性

株式が限られた株主にのみ所有され、取引される株式の量(流通量)が少ないと、株価が乱高下しやすくなり、投資家に不測の損害を与える可能性があることから、株式数や株主数に基準を設けています。

■上場時に株主数が800人以上であること
■上場時の流通株式数が20,000単位以上であること
■上場時の流通株式時価総額が100億円以上であること
■流通株式数が上場株券等の35%以上であること

企業の財政状態・収益力

会社が上場した後も、収益を増やして業績を伸ばすことで、株主に利益を還元できるかどうか、財務の健全性が求められます。

■ 純資産が50億円以上あること
■ 最近2年間の利益の額の総額が25億円以上であること、または売上高100億円以上かつ時価総額が1,000億円以上であること

実質基準の主な内容

企業の継続性及び収益性

企業として継続的に事業を営み、かつ安定的収益基盤を有しているか確認を行います。

■事業計画がビジネスモデルの特徴やライバル会社の状況など、事業環境等を踏まえて適切に作成されているか
■仕入・生産・販売といった事業活動が、上場後においても安定的に行われるか

企業経営の健全性

事業活動に強い影響を与える立場にある大株主や取締役との関係において、事業を公正かつ忠実に遂行しているか確認を行います。

■大株主や取締役などとの取引等を通じて、本来株主に還元すべき利益を不当に供与または享受していないか
■取締役などの構成に偏りがあることで、特定のグループに有利な判断がなされるなど、企業の適正な意思決定に支障が生じていないか

企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性

事業活動を適切かつ継続的に運営するために必要となる仕組みや内部管理体制が社内で適切に整備され、有効に機能しているか確認を行います。

■事故や不正、誤りが起こらない仕組みが組まれているか
■社内ルールが整備され、守られているか

企業内容の開示の適正性

株価に影響がある情報を、投資家に対して適切に公表することができる体制が整備されているか確認を行います。

■株価に影響を与える企業情報を適切に管理してタイムリーに公表することができる体制が整えられているか
■公表される資料において、会社の状況、特に投資家の投資判断に影響を及ぼす可能性のある内容を、適切に記載できているか

上場とは?上場審査とは?