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4-3.自主規制とは③~考査~証券会社のチェック~

投資家が証券会社に委託した株式の注文や証券会社自身による株式の注文は、証券取引所に集められ、証券取引所において各証券会社の売り注文と買い注文を付け合わせることによって取引が成立します。

このため、証券取引所では、各証券会社に対して、他の証券会社や投資家に迷惑をかけるような証券会社ではないこと、投資家が安心して注文を出すことのできる証券会社であることを確認するため、何段階ものチェックを行うとともに、不適切な証券会社に対して処分や改善指導を行います。
証券取引所では、以下の各項目に記載する証券会社に対するチェック等のことを総称して考査といいます。

1.取引資格の取得審査

証券取引所における取引を行っていない証券会社も含め、世界には数多くの証券会社があります。証券取引所は、新たに証券取引所における取引への参加を希望する証券会社に対して、証券取引所が定める基準に適合しているかどうか審査を行います。

東京証券取引所の取引資格取得基準

(1)形式基準(証券会社の場合)

 ・「資本金」の額が3億円以上であること。
 ・「純財産額」が5億円以上であり、かつ、資本金の額を上回っていること。
 ・「自己資本規制比率」が200%を上回っていること。

(2)実質基準

 ・健全な経営の体制であること。
 ・取引所における取引を公正かつ円滑に受注、執行、受渡決済できる体制を構築していること。
 ・適切な内部管理態勢を整備していること。

2.オフサイト・モニタリング ~書面等による継続的監視~

証券取引所における取引を行っている証券会社は、毎月、証券取引所に対して、前月の経営状況や証券取引所以外での売買も含めた取引状況について書面で報告することになっています。また、証券会社は、他の証券会社に事業を譲渡しようとする場合、社長などの役員を変更する場合、証券会社自身の財産に大きな変化があった場合などには、その都度、証券取引所に対して、書面での申請、届出又は報告を行うことになっています。
証券取引所では、提出された書面のチェックや書面を基にした聞き取り調査を行うことで、他の証券会社や投資家に迷惑をかけるような証券会社ではないこと、投資家が安心して注文を出すことのできる証券会社であることを、継続的に監視しています。
証券取引所では、次の項目で説明する実地考査(オンサイト・フィールドワーク)との対比上、これらの継続的な監視をオフサイト・モニタリングといいます。

3.実地考査

証券取引所は、証券取引所における取引を行っている証券会社に対して、少なくとも3年に1回の周期で、毎年、25~30社程度、立入検査を行っています。証券取引所では、これを実地考査といいます。
実地考査を行う考査人員数や考査日数は、証券会社の業務内容や規模に応じて、異なります。実地考査チームは、対象となる証券会社の特性に適合する専門知識を有した4人~15人の考査員によって、その都度、編成され、2週間~4週間の間、証券会社の本社や支店の会議室に常駐して、証券会社が使用している各種システムや保管していなければならない書類等を実際に確認しながら、担当者や役員への聞き取り調査を行い、その証券会社や役職員が法令や諸規則に違反していないか、証券会社自身が定めている手続どおりに業務を遂行しているかなどについて、チェックします。

4.処分及び注意喚起

実地考査などの結果、証券会社が法令や諸規則に違反する行為を行っていたことが判明した場合、証券取引所は、その証券会社に対し、違反の内容に応じて、取引資格の取消し、証券取引所における売買等の停止又は制限、過怠金(罰金)の賦課及び戒告などの処分を行います。ただし、違反の内容が、処分を行うほどではない場合には、改善を求めるための勧告や注意喚起などの措置を行います。

証券取引所の自主規制業務とは