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TSE教育ホットライン

Vol.382「連載第二十三回「歴史の中の市場と証券」」

大坂堂島米市場についていろいろお話ししてきましたが、最後に、この市場を利用していた一般の投資家についてお話します。
大坂堂島米市場と言えば蔵名前を含めた仲買人や、両替商達の活動が思い浮かびますが、例えば正米(しょうまい)市場は委託注文が大部分で、その委託者は全国の富裕な商人でした。
これらの商人達は商業を通じて手元に資金が蓄積されるわけですが、現代と違って、それらの資金の運用先が多様にあったわけではありません。
江戸期の現金は希少な金属であり、それが根本的な原因で通貨そのものが、常に、絶対的に不足しているわけですから、幕府や各藩は各地の富商達からこういった現金を回収する強い経済的インセンティブを持っていたと言えます。
ですから、商人たちには、なるべく現金を手元に置きたくないというインセンティブが働いていたわけです。そこで彼らが目を付けていたのが米切手での運用でした。

本格的な投機家もいました。例えば、酒田の大富豪本間家の本間宗久は、酒田の米市場での帳合米(ちょうあいまい)取引で本間家の資産を大きく拡大させています。
勿論、すべての商人が本間宗久のように投機的利益を狙っていたわけではなく、基本的に大坂堂島米市場はボラティリティを押さえる仕組みが働いていますから、
単に現金資産の移し替え先として安全であったという面もあったのではないかと思われます。
大坂堂島米市場はこういった最終的な資金の“引受先”まで含めると、希少な(金属である)通貨を米との交換と言う仕組みを通じて、商業資本として滞留させずに循環させる一つの大きなエコシステムであったことがわかります。

また、帳合米市場は米価の先物市場として理解されていましたから、例えば、多くの小作人を抱える農家のなかには、
米の収穫量と米価の不確実性による農家経営のリスクを回避のためのヘッジとして大坂堂島米市場を利用していた事例もあることが確認されています。

(金融リテラシーサポート部 石田 慈宏)

『おしごと年鑑2024』発刊のご案内

朝日新聞出版社制作の『おしごと年鑑』が今年度も発刊されました。

今回の私たちのテーマは、「株式の『違法な取引』に目を光らせる仕事って?」です。
インサイダー取引や株価操作といった、違法な取引をチェックする「売買審査」業務を紹介しています。
この業務を担当する売買審査部の社員の声等、当グループならではの話も盛り込まれています。


『おしごと年鑑』は、全国の小学校や中学校を中心に約72,000部が寄贈されており、
私たち日本取引所グループをはじめ、120テーマの仕事内容が紹介されています。

また、ワークシートや各学年教科対応表等、授業でもご活用いただけるような情報が
『おしごと年鑑』の紙面・Webサイト共に載っていますので、是非ご覧ください。
そして授業にご活用いただけますと幸いです。


JPX Webサイトに2017年度以降の当グループの掲載内容をまとめています。

【東証マネ部!】今月の注目記事!!

様々なところで聞かれるようになった「金融リテラシー」という言葉。
「学生に読んでほしい お金の攻略本」を1月に出版された大阪公立大学・北野友士准教授に、
本の内容を全6回に分けて「金融リテラシー」とは何かを記事で解説していただきました。第1回で紹介するのは、大学生の身近なお金についてです。

近年、就学前の幼児を対象にした「お金」に関するドリルが各社から出版されています。
書店で一度は見たことある、くもん出版からは2022年12月に『シールたっぷりレッスン 5さいからできる おかね』が発売されました。
ドリルの企画・制作を担当された担当者に、「シールたっぷり」というコンセプトを掲げた理由や子どもが楽しみながら学べる工夫について聞きました。

最近の株式市場の動向

今年も暑い夏になりました。夏バテなどで体調がすぐれない方も多いことと思います。どうぞご自愛ください。
また、局地的な降雨も多く、雨の降り方もこれまでとは違ってきたように感じています。
これからは、台風の多い時期となります。引き続き、事前の備えが必要となりますね。

では、今回は今年7月以降の東京株式市場の動向について、簡単に市況を振り返ってみます。

2024年7月の株式市場は、月の初めは、米国での経済指標の発表を受け、今後の景気に対する弱気な見方から、FRB(連邦準備理事会)による早期の利下げ期待が高まり、幅広く買われて続伸しました。
中旬では、米国の中国に対する半導体に関する規制を嫌気した、韓国や台湾の株式市場での下落などから、東京市場でも反落商状となりました。
月末にかけても、米マイクロソフト社のOSのシステム障害を背景とした米国株式市場での株価の下落や、バイデン氏の撤退報道を受けた米大統領選の不透明感などから、
東京株式市場でも売られて、大きく下落しましたが、
月末には銀行株や半導体関連株が買われる場面もあって、若干値を戻しました。

8月になると、東京株式市場は、日米の金利差を背景とした外国為替相場の変動や、米国の経済指標を受けての景気の先行き不安などから、
大幅下落となった後、また大きく値を戻すなど、これまでになく株価が大きく動く展開となっています。

先月7月1か月間について、TOPIXで見た上昇率は+0.55%、
上昇した主な業種は、医薬品、建設、不動産株で、下落した主な業種は、輸送用機器、電気・ガス、非鉄金属株でした。

また、昨年末との比較では、7月末のTOPIXで見た上昇率は+18.08%、
上昇した主な業種は、保険、銀行、石油石炭株で、下落した業種は、空運、陸運株でした。


学校の授業等で参考にしていただけたら幸いです。

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