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TSE教育ホットライン

Vol.372「連載第十三回「歴史の中の市場と証券」」

江戸時代の市場経済を考える背景として貨幣制度は重要です。以前も少し話しましたが、戦国期までは、貨幣として、中国産の様々な銅貨が各地で利用されていました。
各地の大名にとっては、銅貨間の交換レートを決めたり、どの銅貨を利用するかを決めたりするのも重要な経済政策だったのです。要するに、各地で様々なバリエーションの貨幣が流通する状況が江戸時代の前にあったわけです。

戦国後期の16世紀には、西国では石見の銀山を中心に大量の銀が産出されるようになり、銀が大きな債権債務の決済に利用されるようになります。
一方で、東国では伊豆の土肥金山等を中心に金が大量に産出し、金が決済の中心になっていきます。
江戸幕府は、各地に貨幣制度が存在した歴史的背景を踏まえて、東西に(厳密に東西に分かれるわけではない)分かれた銀、金の決済通貨圏をみとめた貨幣制度を確立していきます。
これが三貨制度と呼ばれる制度で、西の銀、東の金、少額決済のための銅貨といった三種の金属貨幣が用いられ、その交換が市場を通じて行われました。銅貨について追記すると、江戸期初期に3代将軍家光の指示によって、寛永通宝という銅貨が政策流通します。これは、皇朝12銭以来途絶えていた国産銅貨の復活でもありました。

江戸時代を通じて、最も大きな物流の流れは大坂と江戸間だったわけですが、大坂と江戸では決済通貨が銀と金で異なる為、両替が前提となり、その業者である両替商という金融業者も登場します。
両替商にも様々な規模がありましたが、大坂や江戸で豪商と呼ばれる者のほとんどが、この両替商を兼ねていました。
これらの豪商は、大坂や江戸に本店・支店を構え、大坂~江戸間の取引において、実際に重い金貨や銀貨を移動させることなく、帳面上の残高を“手形”と呼ばれる紙片によって決済する機能を提供していました。

ちなみに、当たり前の話ですが、銅貨を含めて金属貨幣は希少な金属で造られているので、現在の我々のように、充分な量の金属製の貨幣が存在するわけではなく、貨幣という物質そのものが余っていないのが普通でした。
そのため、商売においては商業上の債務と債権を巧みに清算することで貨幣の移動を極力惜しんでいたことに加え、庶民はモノをツケで買って、期日に一度に清算するのが日常でした。
私たちが現在「預金通帳」等で使用している「通帳」という言葉は、こういったツケを記録した帳面(通い帳)に由来していると言われています。

(金融リテラシーサポート部 石田 慈宏)

<先生のための冬休み経済セミナー>開催のお知らせ

今年、4年ぶりに、東証にて中学校・高等学校の教員や教育関係者の方を対象とした経済セミナーを開催します。
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※先着順での受付となりますので、ご興味ある方はお早めに!ご担当教科に関わらず奮ってご参加ください。

1.開催日程
2023年12月29日(金)9:50~14:25
※大納会は15時より希望者見学

2.方法等
方法:対面限定
人数:先着100名様(予定)
会場:東京証券取引所ビル 1階 プレゼンテーションステージ

詳細は下記をご参照下さい。

【東証マネ部!】今月の注目記事!!

今回はタイプの異なる2つの記事をご紹介します。

▼教員経験を持つ作家の乙武洋匡氏が金融教育の最前線を追っていく【乙武先生!金融教育、見にきてください】シリーズの記事です。
今回は、ゲーム感覚で金融について学べる「ライフサイクルゲーム」を開発した第一生命を訪問しました!
20年近く金融教育を続けてこられているご担当者の声も是非ご確認ください。

▼物価、支出、収入、さらには通勤の機会費用なども加味して、どこが一番安価に暮らせるかを調査した記事です。
リモートワークの普及で地方移住に注目が集まったこともあり、具体的に算出してみました。
先生方にはリモートワークは縁遠いものかもしれませんが、
みなさんがお住いの都道府県は何位かぜひチェックしてみてください!授業のネタにも使えるかも!?

最近の株式市場の動向

10月になり、朝晩は少し寒い日もありますが、とても過ごしやすい穏やかな日が続いているように思います。こんな時期には、積極的に外出するのも良いかもしれませんね。

今回は先月9月以降の東京株式市場の動向について、簡単に市況を振り返ってみます。

2023年の9月の株式市場は、月の初めは、米国での労働需給の緩和が見られた雇用統計を受けて、利上げが更に行われるとの見通しが遠退いたことや、香港株式市場の上昇など好感されて、東京市場は続伸商状となりました。
中旬になると、TOPIXが1990年7月以来となるバブル後での高値を更新したものの、米国ハパウエルFRB議長が、年内に0.25%の追加利上げの実施を示唆したため、下落基調となり、それまでの上げ幅を縮小しました。
月末にかけては、原油高を背景として、米国での金融引き締めが長期化するとの見方から、更に下落基調が続き、前月末終値を小幅に下回って終わりました。
10月になっても、米国での利上げ観測の動向に影響を受けて、東京市場でも値動きの大きな相場展開となっています。

先月9月1か月間について、TOPIXで見た下落率は-0.37%、
上昇した主な業種は、鉱業、銀行、石油株で、下落した主な業種は、精密機器、サービス、空運株でした。

また、昨年末からの比較では、9月末のTOPIXで見た上昇率は+22.8%、
上昇した主な業種は、鉱業、鉄鋼、輸送用機器株で、下落した業種はありませんでした。

次号以降も、学校の授業等で参考にしていただけたら幸いです。