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TSE教育ホットライン

Vol.364「連載第五回「歴史の中の市場と証券」」

●市場経済と座

新しく生まれた市場と市場経済は、現代の私達が市場と言う言葉に対して思い描くような平和で友好的な場所とはかなり異なった様相でした。
そこはどちらかと言えば弱肉強食的な世界で、暴力が幅を利かせ、力任せに自分の思う様に取引しようとする者の世界でもありました。

武装した者が市場を闊歩し、いざこざは絶えません。
これでは、さすがに、必要な物資の交換がままならないため、商人は市場で「集団」を作っていきます。
そうした集団は同じ商品やサービスを行う業者同士で結成され、他の集団の横暴を暴力で排除する一方で、集団内部をも暴力で統制し、市場に必要な一定の秩序を創り出していきます。
この集団を「座」といいます。
座が座として成り立つには移動特権等をもつ神人等の認可・保護が必要で、神人等は大寺社に帰属していますから、座は自然と、大寺社の保護・支配を受ける事になりました。

商業・市場を寺社が支配したのは、移動特権を握っていたからだけではなくて、商売に必要な信用を、信仰が補完/代替していたことが挙げられます。
「売る」(ウル)という言葉には「裏切る」という言葉と共通する意味があった[※] とされるように市場とは信用ならない場所だと考えられていましたが、そこに神様達の権威を持ち込み、裏切れば天罰・神罰が下るという事で、商業上の信用を確保していたと考えられています。

そのため、市場の具体的な場所の多くが交通の要衝にある寺社の管轄内でした。
市場におけるもめ事は市場における神人等による寄沙汰(よりさた)によって裁かれ、王朝権力側は関与しませんでした。
こうして、日本には政治権力を握る王朝政権と市場経済を支配する寺社宗教勢力という二つの勢力が併存するような体制が出来て、そのまま政治的な権力側が王朝政府から鎌倉・室町といった中世の武家政権へ移行していきます。

[※]安野眞幸「日本中世市場論」名古屋大学出版(2018年)より

(金融リテラシーサポート部 石田 慈宏)

【東証マネ部!】今月の注目記事!!

金融入門者向けの本って、見つけづらい…? はじめて学ぶお金の話『10歳から知っておきたいお金の心得』

文筆家・書評家の三宅香帆さんが選んだお金に関する本を紹介する連載の第一弾として、「10歳から知っておきたいお金の心得」を紹介してもらいました。
10歳からというのがハードルが低くていいですね。
子ども達に教える際に使える一冊になるのはもちろんのこと、金融初心者の大人にもじゅうぶん満足できる本だと思います。
こちらの記事はサイトの読者アンケートで非常に反響が大きかった記事でもありますので、ぜひ読んでみてください。

最近の株式市場の動向

今年も早いもので節分も過ぎ、徐々に春が近づいて来ているように思います。
今回は先月1月以降の東京株式市場の動向について、簡単に市況を振り返ってみます。

2023年1月の株式市場は、月の初めは、日銀が一段と金融緩和を縮小するとの見方がある中、米国の雇用統計の数値がそれほど伸びず、米国での金融引き締めが長期化するとの観測が後退したことから、株価は一進一退で推移しました。
その後、月中ごろには、日銀が大規模金融緩和策の維持を決定したことや、日本政府が新型コロナウイルス感染症の感染症法上の扱いを「5類」へと移行を進めることなどが好感され、上昇基調となりました。
月末にかけては、FRBの利上げ縮小観測を受けて、米ナスダック市場で株価が上昇したことなどから、東京株式市場も大幅高となりましたが、日本国内企業の決算に対する見方が悪化し、伸び悩みとなって終わりました。
そして2月になってからも、水準を維持したまま概ね横ばいで推移しています。

先月1月1か月間について、TOPIXで見た上昇率は+4.42%、
上昇した主な業種は、鉄鋼、電気機器、機械株で、下落した主な業種は、医薬品、海運、水産・農林株でした。

次号以降も、定期的に配信します。学校の授業等で参考にしていただけたら幸いです。