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TSE教育ホットライン

Vol.363「連載第四回「歴史の中の市場と証券」」

●貨幣経済と市場経済

墾田永年私財法とともに、律令国家を完全に崩壊させたのが、各地が中央に送らなければならない物資を銭の形で納めてよいとする代納銭制度です。
古代から日本では7世紀後半の富本銭から始まって、和同開珎(皇朝十二銭)と、国家が銀貨・銅貨を製造していました。
しかしながら、日本の独自貨幣は、実は皇朝12銭が造られた10世紀初頭で一度途絶え、それ以降、中国銅貨が日本で用いられることになり、平清盛の頃には大量の宋銭が流通するようになっていきます。

こうして貨幣制度が徐々に浸透していくことと、各地に自給的な経済が立ち上がり、その中心にある各地の市場が神人や寄人に結ばれて行くことは、一つのセットになっています。

律令制度、つまり、指令経済では物資(資源)の移動は命令によって行われたわけです。

しかし、その根幹の生産手段、つまり土地支配の実態が失われて命令が意味を持たなくなった後、いったいどのようにして物資が移動したのでしょうか?
それは簡潔に言えば、利益を求めて物資が移動するようになったということになります。

各地には自給的な経済体制があり、必要なものに過不足があれば、交換すれば良いわけです。
その交換は、各地の市場において売買という形で行われ、そうした売買は物資の移動により利益を得る商人によって行われ、売買は物々交換ではなく、主に貨幣で決済されました。
(稀少金属で出来ている貨幣が充分にあったわけでは無いので、決済が貨幣だけで足りたわけではないのですが、その話は別途いたします。)

一方で貨幣は物資そのものを移動させるより簡便であり、また交換の自由度が高いので、物資そのものを中央とやり取りするのではなく、銭に替えるというのは、送る側受け取る側双方にメリットがありました。
代納銭制度はこうして生まれます。
利益を求めて物資が移動し、必要な物資は市場で貨幣によって得ることができる。
まさに、貨幣経済の浸透と市場経済がセットになっていったのです。
律令制度はこれによって完全に消滅することとなります。

(金融リテラシーサポート部 石田 慈宏)

【東証マネ部!】今月の注目記事!!

金融リテラシー調査から見えた「若者の投資の考え方」

金融広報中央委員会が実施した「金融リテラシー調査」の結果と、そこから見える若者の投資に対する考え方について考察した記事です。
金融教育が金融リテラシーに紐づくという裏づけがあり、世間のニーズがあるにもかかわらず、実際に金融教育を受けた人の割合はまだまだ少ないのが実情です。
それを受けて、学校教育においては、複数の教科をまたがって広く金融に触れていくことが大事であると専門家は語っています。

「現状、高校では家庭科と公民の授業で金融教育を取り入れていますが、複利の話は数学にかかわる部分です。
数学ができる人ほど金融リテラシーが高いという研究もあるので、数学の授業で投資を扱うのもいいでしょうし、社会科でSDGsや環境問題を扱う流れでESG投資についても教えられるかもしれません。あらゆる教科と金融のつながりを意識した展開も必要でしょう。」

詳細はぜひ記事をご覧ください。

株式学習ゲームリニューアルに関するお知らせ

「株式学習ゲーム」ウェブサイトのデザインを2023年3月中旬に全面リニューアルします。
※操作方法に変更はありません。
リニューアル後にまた告知を行いますのでお待ちください!

最近の株式市場の動向

新年となりましたが、東京株式市場は引き続き先行きの見通せない状況が続いています。
今年は卯年です。
証券界では、「うさぎは跳ねる」で、今年は株価が上がる年としています。
昨年は、年間で4年ぶりに株価が下落したことから、ますます株価の上昇が期待されています。

そこで、今月から東京株式市場の動向について、定期的にリポートさせていただきます。
今回は簡単に、昨年一年間の市況を振り返ってみます。

昨年の上半期は、国内での新型コロナウイルス感染症拡大や米長期金利の上昇などを受けて大幅安で始まり、2月にはロシアがウクライナに軍事侵攻したことから世界同時株安の流れとなりました。
その後、円安が進行したことなどから、輸出関連株を中心に幅広い業種で買われて上昇に転じましたが、欧米によるロシア制裁強化の動きに加え、中国景気悪化懸念の高まりから反落、そして、日本政府の水際対策緩和や米主要株価指数の上昇などを好感する中、欧米での金融引き締めから世界景気の悪化懸念が高まり再び急落しました。

そして下半期では、参院選での自民党の大勝や円安進行などを好感して上昇した後も、米利上げペースの鈍化観測による円安の進行などから上昇基調が続きましたが、世界的なインフレ懸念に加え、欧米での金利上昇懸念から大きく下落しました。
しかしその後、欧米の利上げペース鈍化観測、日本での水際対策の緩和や円安進行から大幅反発となり、さらに米景気指標などを好感して、大きく上昇しました。
年末にかけては、米景気の悪化懸念や、一転して円高基調となったことなどから下落する中、日銀が想定外の金融緩和策修正を発表したことを受け、さらに下落しました。

昨年上昇した主な業種は、鉱業、銀行、保険株で、下落した主な業種は、電気機器、サービス、精密機器株でした。

次号以降、定期的に配信します。
学校の授業等で参考にしていただければ幸いです。