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Vol.307 上場会社分析シリーズ(第5弾)ヨーグルト

今年度もインフルエンザ等の発生により、医療機関が混み合うニュースが見受けられたところですが、
失くしてからその大切さに気づくものの一つに「健康」があります。
昨今、「健康」をキーワードとした様々な商品やサービスをテレビ・新聞・インターネット等で目にするところです。
こうした「健康」志向の高まりのなかで、我々消費者も触れる機会が多い食品メーカーに注目します。

今回は、東証上場会社である乳製品メーカー「明治ホールディングス株式会社」を紹介します。
同社は牛乳・乳製品や菓子などを扱う株式会社明治(旧明治製菓及び旧明治乳業)と、
医療用医薬品事業を担うMeiji Seikaファルマ株式会社、により構成されています。

同社の取扱商品の一つであるヨーグルトは、
家庭はもちろん学校給食などでも古くから馴染み深い食品の一つです。
とりわけ近年においては、病気になってから治療するのではなく、
予防の観点から体に好影響を与える生きた菌や生きた菌を含む食品等を体内に取り込み、
善玉菌を増やして健康を守ろう、という「プロバイオティクス」と呼ばれる考え方が浸透しつつあります。

現在、同社をはじめとする乳製品メーカー各社では、
自社が保有する乳酸菌から健康に高く寄与することが期待される菌を選び出し、
その商品化に注力しているとされ、様々な機能を有した商品が店頭に並んでいます。
同社においても、免疫力が高まることが期待される「R‐1」など
「明治プロビオヨーグルト」として製造・販売されています。

また販売価格についても、他社のプロバイオティクスヨーグルトと同じように、
これまでのヨーグルトよりも高めに設定されていますが、
スーパーやコンビニエンスストアでは一定規模の売り場を確保する光景も見られるなど、
消費者による健康意識や予防意識の高まりから、こうした商品への関心も強いものと考えられます。

さて、同社の本業により得た利益である「営業利益」は、
2015年3月期決算:515億円 → 同2016年3月期:777億円→ 同2017年3月期:883億円と好調に推移しています。
こうした流れを反映してか、株価も2015年5月末に7,080円であったところから
2016年8月には10,930円をつけた後、今年に入っても8,000円~9,000円台で推移しています。

同社の決算資料である「決算短信」における事業別のセグメント情報を見ると、
プロバイオティクスヨーグルト等で構成される「発酵デイリー」の売上は
2015年3月期の4,794億円から2017年3月期には5,447億円に伸長し、同事業の営業利益も
2015年3月期の283億円から2017年3月期には517億円と約83%増となっています。

営業利益が増加する背景には、売上の増加とともにコスト削減が考えられ、
同社「決算短信」では店舗での売場作りや生産効率化といった分析がなされています。
一方、セグメント情報に記載されている「プロバイオティクスヨーグルト」の売上高は、
2015年3月期の872億円から2017年3月期には1,196億円へと約37%増加するなど、
高価格商品とされながらも、同じ食品セグメントで挙げられている同社主力商品のなかでも高い伸びを示しています。

この20年あまり、日本国内においては「モノやサービスの価格が上がらない」、「価格の高い商品・サービスは売れない」という状態が続いてきました。
その一方、近年では今回のような「プロバイオティクスヨーグルト」に加え、「エコカー」などのように「健康」や「環境」といったキーワードを背景に、
「欲しいモノやサービスであれば価格が高くても購入する」という動きも指摘されています。
「健康」や「環境」といったキーワードに見られるとおり、需要は我々が日々営む社会の変化の中で新たに生まれており、
企業においても常に社会の変化を敏感に見出し、新たな付加価値を備えた商品やサービスの提供に向けた取り組みを続けているところです。