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Vol.302「株式学習ゲーム」を考える~原油価格に注目した投資対象(銘柄)の選択について

我々東京証券取引所では日本証券業協会と共同で「株式学習ゲーム」を
中学生~大学生まで提供しており、年間35,000名に利用していただいている。
今回はこの利用方法についてもあわせて考えてみたい。

石油は我々の生活の様々な場面で利用されており、原油価格の変動は日常生活に影響を与えます。
身近なところではガソリン・灯油・電気代が頭に浮かびます。
また、石油は素材・燃料として利用されているため日用品や運輸の価格にも関係しています。

それでは原油価格の変動により影響を受ける業界にはどのようなものがあるでしょうか。

【原油価格の下落で恩恵を受ける業界】
石油を利用して製品を製造する化学、タイヤ、製紙など、燃料として利用する空運、陸運、海運、
発電用重油として利用する電力などの業界のコストダウンにつながり各社の業績にプラスに働きます。

【原油価格の上昇で恩恵を受ける業界】
販売価格が上昇するため資源開発、石油精製、商社、資源開発が活発になるためプラントといった業界にメリットがあります。

原油価格の動向が広範な業界や会社に影響しますね。
株式学習ゲームにおいては生徒に自由に銘柄を選択させる方法もありますが、
生徒の間で共通の情報がないため互いの理解や関心の程度が低いということがあると思います。
今回の「石油」のように大きな1つのテーマを設定し、
原油価格の動向、関連業界の調査⇒影響の仕方の考察⇒個別会社の順で
調べさせたうえで銘柄の選択をするというのも進め方の1つだと思います。
原油価格もこの20年間で1バーレル10ドルから150ドルまで大幅な変動をしています。
この変動要因を合わせて調べさせるのも授業に広がりができると思います。

ところで総合商社といえばどんな会社が思い浮かびますか。
5大総合商社といえば三菱・三井・住友・丸紅・伊藤忠です。
「ラーメン」から「ミサイル」までという言葉が一時総合商社のたとえになっていたくらい、
様々な商品を取り扱っています。そんな総合商社も時代の変化に伴い、
以前は輸出・輸入の取引の仲介・売買で利益を上げていましたが、近年は投資会社の側面が強くなっています。

資源であれば、鉱区の採掘権を買い採掘した資源を販売するというビジネスです。
以前は仕入価格に一定の利益を上乗せする商売であったため価格の変動による影響は限定的でしたが、
現在のビジネスの方法では採掘コストはある程度決まっていますので、
以前にくらべ市場価格の変動が業績にストレートに影響することになります。

そのため、原油をはじめ多くの資源価格が大幅に上昇した時期は大きな利益を計上していましたが、
逆に大きく下落した2016年3月期には三菱商事や三井物産が上場後はじめて赤字に転落しました。
2017年3月期は資源価格がいくぶん回復したため両社の業績は回復しています。
一方、資源ビジネスに対する依存度が低く、
ファッション・食品・コンビニなどの生活消費関連事業に注力していた
伊藤忠は2016年3月期には利益ではじめて業界トップになりました。
伊藤忠の株価はリーマンショック後の376円から2017年8月には1787円まで上昇し4.7倍になっています。
同じ業界にあっても、収益構成の違いによって大きく業績がかわり
株価の動向も違うということを生徒に理解させることも大切なことだと考えます。


(金融リテラシーサポート部 白橋 弘安)