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Vol.301 今月の東京株式市場の動きを振り返って!
今月7月の東京株式市場は、月初に、東京都議選で自民党が大敗し、国政の先行き不透明感が指摘される中、
6月の日銀短観で大企業の業況判断が市場予想を上回る内容となり、
金融株など景気敏感株が買われたものの、原油安や北朝鮮を巡る地政学的リスクが高まると共に、
米6月雇用統計公表や独ハンブルクでのG20サミットを前にして手控えられ、軟調地合いとなりました。
その後、良好な雇用統計の結果を受けた米国株式市場の上昇や、外為市場での円安進行などから、
買われるものが多く堅調地合いとなり、TOPIXは年初来高値を更新しましたが、
中旬には、円安傾向が一服したことや、米FRB議長の緩やかな利上げ姿勢を受けて
米長期金利が低下したことから円高が懸念され、自動車、銀行株などが売られて、伸び悩みとなる一方、
NYダウと米ナスダック総合指数が史上最高値を更新したことや、
日銀の金融緩和継続などを好感して、一進一退に推移しました。
月末にかけては、円高の進行が懸念されるものの、欧米株式市場の上昇に加え、
好業績期待銘柄が注目されてTOPIX が更に年初来高値を更新するなど、上昇基調で推移しています。
まず、今月の東京株式市場で特に注目されたのは、米国の雇用統計の公表でした。
米労働省が7日に発表した6月の雇用統計(非農業部門)は、雇用者数が前月比で22万2,000人増え、
増加幅は市場予想(17万人程度)を上回り、4ヵ月ぶりの高水準となりました。
東京株式市場でも、公表日後の週明け(10日)には、株価が前週末から大きく反発しました。
このように、米国の雇用統計が注目されるのは、
全米30万社以上の企業や事業所を対象に雇用者数の増減が調べられた数値で、
米国の景気動向を敏感に反映すると言われているからです。
米国企業は、業績が悪化すると日本企業よりは比較的簡単に一時的な解雇をします。
そして業績が回復してくると、すぐに再雇用する傾向があります。
早い段階で、雇用者数が増減するので、米国景気を反映しやすいと考えられています。
また、その数値の変化についても20万人が一つの目安とされ、
今回の様な2ヵ月ぶりの20万人を超えて雇用者数の増加は、大きく注目されます。
当月初めの当メールマガジン(Vol.298 2017/7/3号)でお送りしましたように、
米国は、GDP(国内総生産)の約7割が個人消費といわれており(日本の個人消費は約6割)、
個人が安定してお金を使える状況、つまり雇用の安定性は、米国経済の景気の動向を知る上でとても重要な指標であり、
米国の中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)も、金融政策の決定にあたり、この「米国雇用統計」を非常に重要視しています。
同時に米国は世界のGDP全体の約20%を占めており、その景気動向及び金融政策は世界の経済に大きな影響力を持ちます。
従いまして、雇用情勢とともに物価・賃金などの動向が、米国の政策金利の決定に影響を与え、
それが日米の金利差の拡大につながり、更なる円安圧力が生じることになります。
円安は、日本の外需型企業の業績に大きく影響して、株価の変動要因となることから、
毎回の公表が市場関係者の注目を集めますし、新聞等にも大きく取り上げられます。
次に注目されたのが、ドイツのハンブルクでG7(日・米・英・独・仏・加・伊)をはじめ、
EU(欧州連合)、ロシア、新興国を含む計20ヵ国首脳が集まって討議が行われたG20サミットでした。
7日に開幕し、8日に閉幕した今回のG20(20ヵ国・地域首脳会議)は、
「保護貿易主義との闘いを続ける」と明記された首脳宣言を採択しましたが、
トランプ米政権に配慮して、不公正な貿易慣行に対して対抗措置を取ることを容認しました。
加えて、地球温暖化対策での米国と他国との姿勢の違いが浮き彫りになるなどして、
G20を中心にした国際協調の枠組みに不調和の兆しが見えてきている可能性も指摘されています。
東京株式市場では、直前までは注目されていましたが、
結果については大きく問題視はされなかったものの、大きな成果があったとも受け止められなかったようです。
あと、今後の日本経済を予想する上では、21日に内閣府がまとめた2017年度の経済財政白書が注目されます。
白書では、日本経済は、2012年11月以降緩やかな景気回復が続き、戦後3番目の長さとなっている。
労働市場では人手不足が目立つが、名目賃金の伸びが小さく、
デフレを脱却し安定的な物価上昇が見込まれる状況には至っていない。
持続的成長には、働き方改革を進め、生産性を向上させる取り組みが必要と指摘しています。
他国と比べて、経済成長率では見劣りするものの、日本経済もしばらくは安定した「低空飛行」が続くのかもしれません。
(金融リテラシーサポート部 鈴木 深)