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Vol.300 上場会社分析シリーズ(第3弾)小さな種が世界を支える

昨今のスーパーでは季節を問わず様々な野菜が並んでいます。
これからの季節にはトマトやナス、キュウリといったみずみずしい夏野菜が目立つ時期となりました。
食卓に並ぶ野菜も元を辿れば種や苗に遡ることになりますが、
今回はこうした種・苗を開発・生産し供給する種苗業界、種苗メーカーに注目します。

一般社団法人日本種苗協会による調査(「種苗産業におけるバリューチェーン構築の取組み」2014年5月15日)によると、
世界の種苗市場の規模は約3兆円、日本国内では2,000~3,000億円と推定される一方、
種苗は用途に応じて「穀物用」、「野菜用」、「花き用」に分かれ、
とりわけ日本の種苗メーカーは他の海外メーカーと比べて野菜用種苗に強みを持っているとのことです。

ここでは東証上場会社である種苗メーカー「株式会社サカタのタネ」を紹介します。
会社の本業により得た利益である「営業利益」は、
2014年度決算:4,779百万円→同2015年度:7,317百万円→同2016年度:7,702百万円と好調に推移しています。
こうした流れを反映してか、株価も2015年5月末2,189円→2016年5月末2,635円→2017年5月末3,535円といった値動きとなっています。

同社の決算資料である「決算短信」によると種の国内需要は頭打ちの一方で、
新興国を中心に野菜種子・花種子の需要拡大が続いていると言います。
事業別のセグメント情報にもとづくと、「海外卸売事業」の売上は2014年度以降、
売上全体の半分以上を占めるようになり、同事業の営業利益も2016年度には2年前と比べ、47%増となっています。

地域別の販売も中国やインドをはじめとするアジア地域に加え、北米や欧州においても売上を伸ばしており、
品目別でも利益率の高いブロッコリーやニンジンを中心とした野菜種子が堅調に推移しているとのことです。

日本国内においては人口減少という厳しい局面を迎える一方で、世界的には新興国を中心に人口は増加傾向にあり、
食料需要の高まりは続くとする見方が多いようです。
また、欧米をはじめとする先進国においては、以前取り上げた魚介類同様、
健康への関心の高まりなどを背景に野菜食へのニーズは強いと同社では指摘しています。

「地球規模での人口増加」や「新興国の成長」、「先進国におけるライフスタイルの変化」といった動きのなかで、
食糧問題はグローバルな重要課題であることは言うまでもありません。

品種改良により生産性の高い品種の開発は同社にも期待されるところであり、顧客ニーズの変化を敏感にとらえ、
より豊かな社会の実現に向けた製商品やサービスの提供に取り組んでいる日本企業の姿が同社の動向からも見えてきます。

(金融リテラシーサポート 斎藤 史貴)