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Vol.299 上場会社分析シリーズ(第2弾)スマホに見るBtoB企業の活躍!

私は多くの大学で就活講座の講師を担当しています。
そのため、色々な大学のキャリアセンター(就活課)の担当者の方や学生の皆さんと話す機会も必然的に多くなります。
今年も就職戦線は売り手市場と言われ、内定は昨年より速いペースで出されているとのことです。

ところで、実際の多くの学生の志望企業はどうなっているでしょうか。
結論から申し上げると、BtoC(Business to Consumer)といわれる消費者を相手とした商売をしている会社を志向する傾向が強いと思われます。
普段製品を購入し、コマーシャルを見ているので社名を知っており、親しみもあるためだと思います。

一方、BtoB(Business to Business)の会社は宣伝もしませんし、自ら製品を購入しないため存在自体に気づいていないようです。
ただし、日本には多くのBtoBの素晴らしい会社が多数存在します。
今回はそうした会社に焦点をあて解説をしてみたいと思います。

株価は会社に対する市場における全世界の投資家の投票による評価だと言えます。
株価に会社が発行する株式数をかけたものを「時価総額」といいます。まさに会社の価値ということになります。

日本で最も時価総額の大きい会社はどこでしょうか。最も稼いでいる会社です。
答えはトヨタ自動車です。同社の時価総額は約20兆円です。
ちなみに世界一はアップルで80兆円です。2社の共通点は大きな利益をあげていることです。

アップルといえばiPhoneが代表的なヒット作ということになりますが、
利益拡大の背景にはiPhoneの急速な普及やiPad・Macなど多数のベストセラーをもっていることによります。
このことは皆さんも日常から感じられていると思います。

しかし、トヨタ自動車やアップルだけで高性能な自動車やiPhoneができるでしょうか。答えは「NO」です。
iPhoneの様々な部品は誰が供給しているのでしょうか。具体的な会社の名前をあげることができますか?
あげられないとすると理由はBtoBだからです。

彼らは消費者をターゲットとしていないため宣伝もしていません。日本にはスマホの部品を供給する優秀な会社が存在します。
例えば、スマホのなかに入っている電子部品は「京セラ、TDK、日本電産、日東電工、村田製作所、アルプス電気、ローム、ソニー」といった会社が供給しています。
2年ほど前の調査によると、スマホの電子部品の40%が日本製という報告もあります。
スマホ市場の拡大によりこれら電子部品メーカーは業界において圧倒的な地位を誇るとともに、しっかり稼いでいます。

村田製作所は電気を蓄えたり放出したりする電子部品であるコンデンサーなどを供給していますが、
業績を見るとリーマンショックのあと赤字になりましたが、
2016年3月期の本業から稼いだ利益を示す「営業利益」は2,754億円と最高益を更新しました。
業績に連動するかたちで同社の株価も2008年10月の2,640円から2015年7月には22,220円の最高値をつけました。

なんと株価は約7年で8.4倍です。
時価総額も2017年6月23日現在3.8兆円で第25位にランクインしています。
村田製作所というと昔の社名という感じがしますが、逆にこの会社の伝統や誇りを感じます。

以上のように、1つの大型製品が存在している場合、最終製品だけに目を向けるだけではなく、
製品のなかの部品はどこが生産し供給しているのか、スマホの周辺の産業で成長しているものはないのか、
探求する姿勢が大切だと思います。それにどこの会社かを調べていくと思わぬ発見があります。

株式学習ゲームは単に会社を選ぶのではなく、
注目されている製品・サービス⇒関連業界・会社⇒周辺業界・会社という手順で進めていくと、
参加する生徒さんたちの経済への関心を喚起するとともに、社会や経済の視野を広げることが期待されます。
これからは1問1答方式の穴埋め問題だけではなく、実社会とのつながりをもつ実践的な教育がますます必要になってくると思います。
まさに経済は生きた教材です。その達成には先生方の探求心も必要だと思います。

私ども東京証券取引所はそうした先生方をご支援して参りたいと思っています。
ご希望とあれば株式学習ゲームの導入授業の出張サービスもいたしますし、
授業の展開方法も一緒に相談しながら進めていきたいと思っています。
出張授業などにご関心のある先生はご連絡ください。

(金融リテラシーサポート部 白橋 弘安)