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Vol.297 上場会社分析シリーズ(第1弾)日本の食卓を支える漁業・水産業(後編)

前回掲載しました「日本の食卓を支える漁業・水産業(前編)」では、マルハニチロ株式会社に注目し、
我が国における魚の消費量が減少傾向にある一方、海外での魚の需要が高まるなか、同社がここ数年利益を順調に伸ばし、株価も上昇している旨をお伝えしました。
今回配信する後編では、同社が利益を伸ばしてきた要因を決算発表資料などから読み解いていくところから始めたいと思います。

同社が公表した決算資料である「決算短信」の事業別の「セグメント情報」を見ると、同社の事業内容は、
「漁業・養殖」(漁業、養殖、水産資源の調達)、
「商事」(水産物、畜産品の調達・販売)、
「海外」(水産物、加工食品の販売、すりみ等の生産・販売)、
「加工」(冷凍食品、缶詰、フィッシュソーセージ、ちくわ、デザート等の製造・販売)、
「物流」(冷凍食品の保管及び輸配送)から構成されています。

営業利益の推移を見てみると、「海外」部門が世界的な水産物と加工食品の需要拡大を受け、
オーストラリアや北米における数量増加とニーズの高まりによる販売価格上昇により同部門の営業利益は2年前と比べ約45億円(130.6%)増加となりました。

「商事」部門も主要魚類の価格が高値圏にあるほか、円高により販売商品の調達コストが下がり、
2年前と比較して約37億円(98.3%)の増加となったことが営業利益の増加の要因として説明されています。

一方、「加工」部門の営業利益についても、2年前と比べ約71億円増と増加傾向にあります。
背景には、総菜など調理済み食品を自宅で食べる「中食」や、自宅で一人で飲食する「個食」が進んでいることがあげられ
冷凍チャーハンなど家庭用食品分野が好調に推移していると指摘されています。

昨今では女性の社会進出など共働き世帯や、単身者・高齢者世帯の増加により、調理の手間がかからず、価格も手頃なことから、
「中食」や「個食」分野の市場規模も拡大しているとされています。
さらに、業務用加工食品も順調に売上を伸ばしており、コンビニエンスストアや介護食への販売増加に加え、
「人手不足を背景に手間がかからない調理」への需要が高まっている外食産業においても、これらの需要が高まっているとされています。
近年、魚介類に対する世界的な需要の高まりを受けて、原材料価格の高騰や水産資源の管理強化への対応が必要だとする指摘も見られます。
国レベルでの交渉・協議はもとより、養殖技術や加工技術分野での研究開発など、
同社をはじめとする同業各社や様々な関係者による取組み・工夫が進められているとの報道もよく見聞きされるところです。

日本国内における「高齢者や単身者世帯の増加や女性の社会進出」、「中食・個食といった食生活の変化」、
「海外の食に対するニーズの変化」といったライフスタイルの変化と結びつけて会社の動向や業績を理解することは
経済を学ぶための良い教材になります。株式学習ゲームにおいても漠然と銘柄選びをさせるのではなく、
社会・経済などの変化を考えさせたうえで個別の会社を選択させることで教育効果を高めていくことができると考えられます。

「TSE教育ホットライン」では、今後も様々な業界について上場会社を題材に皆様に解説して参ります。

以 上

(金融リテラシーサポート部 斎藤 史貴)