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Vol.332 連載企画第三回「日本と諸外国との金融リテラシー水準の比較」

日本人の金融リテラシーと資産形成に関する国際比較に関する論点考察
第三回は「日本と諸外国との金融リテラシー水準の比較」です。


日本と諸外国との金融リテラシー水準について、S&P(スタンダード&プアーズ)が行った調査結果を元に考えます。2014年に行われたS&P GLOBAL FINLIT SURVEYを見てみましょう。(スタンダード&プアーズ・レーティング・サービス・グローバル・ファイナンシャル・リテラシー調査)この調査では、次の4つの質問を、世界およそ140か国、計15万人の成人に対して行いました。
調査についての詳細はこちら


【設問1】リスクの分散
お金があるとしましょう。お金を1つの事業や投資に投入するのと、複数の事業や投資に投入するのと、どちらがより安全ですか?
[1つのビジネスまたは投資:【複数の事業または投資】:分からない:無回答]

【設問2】インフレーション
次の10年で、買うものの価格が2倍になるとします。あなたの収入も2倍になった場合、今日購入できる量と比べて、購入できる量はより少なくなりますか、同じですか、それとも多くなりますか?
[より少なくなる:【同じ】:より多くなる:分からない:無回答]

【設問3】金利
100米ドルを借りる必要があるとします。 105ドルか、100ドルに3パーセントを足した金額、どちらが返済金額が少ないですか?
[105米ドル:【100米ドルに3%を加えた金額】:分からない:無回答]

【設問4】複利
銀行に2年間お金を預け、銀行が年利15%を付けたとします。銀行は2年目には、1年目よりも多くの金額を口座に入れますか、それとも1年目と同じ金額ですか?
[【多くの金額】:同じ:分からない:無回答]

普通口座に100米ドルを預け、銀行が年利10%を付けたとします。5年後、全くお金を引き出さなかった場合、口座にはいくら入っていますか?
[【150米ドルより多い】:150米ドル:150米ドルより少ない:分からない:無回答]

※【】が正答


本調査結果では、4つの設問中、3つ以上正解した人を「金融リテラシーがある」と定義しています。日本の成人における「金融リテラシーがある」人の割合は43%です。調査国全体では、平均36.7%、中央値35%、最大71%、最小13%です。

調査したおよそ140か国のうち、「金融リテラシーがある」人が50%以上だったのは25か国です。最も割合が高かったのは、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンで71%です。ほか、主な国では、英国67%、オーストラリア64%、米国57%、韓国33%、中国28%となります。また、OECD(経済協力開発機構)加盟国以外では、シンガポール59%、ブータン54%、ボツワナ52%、ミャンマー52%、が50%以上です。

日本の成績は上位に位置するものの、北欧3国や欧米と比較すると相対的に低く、東アジア諸国と比べると相対的に高いといえそうです。

また、選択肢の書き方と結果にも特徴があるといえます。設問自体は簡単な計算問題ですが、回答の選択肢が、日本人が慣れている数値ではなく、言葉になっています。この要素が、日本が欧州等に比べて正答率が低い一因になったのかもしれない、と推察されます。また、韓国、中国という同じ東アジアの国の正答率が、日本と同程度に低いというのも特徴的な結果です。

この調査結果のみでは、日本の金融リテラシーは相対的に低い、と簡単に結論つけるのは難しい気がします。実は、世界で行われている金融リテラシーに関する調査は、ほぼ同じような設問形式で、結果も非常に似ています。日本の金融リテラシーが低いという様々な指摘は、このような設問形式での調査結果であることを、まず知っておく必要があります。

次回は、日本の機関が行った金融リテラシーに関する調査結果を見ながら、テスト手法によっては、日本の結果が低くなるという指摘について紹介したいと思います。


(金融リテラシーサポート部 石田 慈宏)

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