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TSE教育ホットライン

Vol.333 連載企画第四回「金融リテラシー調査手法等についての留意事項」

日本人の金融リテラシーと資産形成に関する国際比較に関する論点考察
第四回は「金融リテラシー調査手法等についての留意事項」です。


山口 勝業氏(※1)の論文「日本人の金融リテラシーはそれほど低くない!?」を見てみましょう。(行動経済学 第12巻大会特別号 2019)

この中で山口氏は、金融リテラシー調査結果の分析について、設問の書かれ方や各国の採点方法により、バイアスが混入している事を指摘しています。


例えば、日米の正答率に大きな差が出ているのは、複利の計算を問う設問です。


表2「質問①複利(5年)の文面の日米比較」(※2抜粋)

(日本)設問18 
100万円を年率2%の利息がつく預金口座に預け入れました。それ以外、この口座への入金や出金がなかった場合、1年後、口座の残高はいくらになっているでしょうか。利息にかかる税金は考慮しないでご回答ください。
回答(  )万円(正答率68.6%)

(日本)設問19 
では、5年後には口座の残高はいくらになっているでしょうか。利息にかかる税金は考慮しないでご回答ください。
[【110万円より多い】:ちょうど110万円:110万円より少ない:上記の条件だけでは答えられない:わからない](正答率43.6%)

(米国)設問6
預金口座に年利2%で100米ドルを預けたとします。5年後お金を引き出した場合、口座にはいくら入っていますか?
[【102米ドルより多い】:102米ドル:102米ドルより少ない:分からない:無回答](正答率72%)

※【】が正答


ここで比較している日本の調査とは、金融広報中央委員会によって行われた「金融リテラシー調査 2019年」です。OECDや米国FINARAによる調査と比較可能な形にして行われました。

複利についての設問の比較ですが、日本の設問では、正答率はおよそ70%でした。この設問は、単純に単利の結果を計算させるものでした。

一方、米国の設問では、実はこの単利の計算問題を扱っていません。米国で聞いているのは、2%の金利の時に預けたお金が5年後に102万円より増えているか、の質問です。日本では前述の計算問題に加え、5年後に110万円より増えているか、とも質問しています。

つまり、米国の質問は複利を扱っているとは言い難く、日米の回答結果にはほぼ差が無いのではないか、むしろ、計算を求めている日本の設問の方の難度が高いのではないか、と山口氏は指摘しています。(単純な単利の計算ですらおよそ3割が答えられないのは、金融リテラシーの問題ではなく計算能力の問題であるとも指摘しています)


他にも、投資先の分散についての設問や、複利の「72の法則」の回答率を日米で比較すると、むしろ日本の方が高いという結果が出ています。

また、米国国内にて行われるFINRAによる調査結果を見ると、米国全体では、金利の比較が出来ているのは3割程度であり、日本より金利計算能力が高い、という結果は得られているとは思えないのです。


こういった国際的な調査結果は、調査手法によりバイアスがかかってしまうことは、仕方がない面があるため、受け止める側が注意をするべきです。

日本の金融リテラシーが低い、と調査結果だけで単純に理解するのは疑問を感じます。しかし、前回紹介したS&Pの調査のように、北欧やオーストラリアでは圧倒的に高い正当率を示しています。金融リテラシーが非常に高い一部の国があり、日本はそうではないという認識は間違っていないとも思います。

では、金融リテラシーのレベルは、具体的に何に影響すると考えられているのでしょうか?次回から、そのお話へ入っていきたいと思います。


(※1)イボットソン・アソシエイツ・ジャパン(株)取締役会長、一橋大学大学院経営管理研究科経営管理専攻金融戦略・経営財務プログラム非常勤講師

(※2) 詳しくは、以下のURLを参照してください
詳細はこちら

(金融リテラシーサポート部 石田 慈宏)

学生投資連合USICと藤野英人氏によるWebトークライブを開催!(2020/09/04)

大学に「投資サークル」という活動があるのをご存じでしょうか?これまで、学校では学ぶ機会が少なかった「金融リテラシー」について、大学生の皆さんが定期的に勉強会を開いているもので、2000年頃から次第に活動が盛んになってきました。

そして、2008年2月に「学生に金融を学べる場」と「企業に学生とのつながり」を提供し「学生の金融リテラシーを向上させること」を通じて「学生から金融大国に」を理念として活動する、各大学の投資サークル連合である「学生投資連合USIC」が産声を上げました。

学生投資連合USICでは、主に3つの活動を柱として、大学間での交流を行っています。
①企業勉強会:協賛頂いている企業様と合同でUSICに加盟している学生向けに勉強会を主催。
②IRコンテスト:毎年末にサークルごとにチームを形成し、指定された企業様のIRプレゼンを行い競い合います。USIC主催イベントの中で最も規模の大きいものとなっています。
③金融情報誌SPOCK:USICが発行している学生目線で作成されている情報誌で、多数の企業や加盟している団体に対して無料で配布をしています。

こうした、各大学の「投資サークル」が大学の枠を超えて活動している団体が、学生投資連合USIC(Union of Student Investment Clubs)です。

ただ、今般のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の拡大が影響し、こうした学生たちの学びも、オンライン勉強会の開催など、感染が拡大しない形でのイベント開催に向け様々な挑戦をされています。

このような背景から、私ども東京証券取引所・金融リテラシーサポート部では、学生たちの金融リテラシー向上を支援したく、JPXアカデミーにもご尽力をいただいている、レオス・キャピタルワークス株式会社・代表取締役会長兼社長・最高投資責任者(CIO)の藤野英人氏をお迎えし、「教えて藤野さん!『投資で世の中は変えられる?』」と題した、Webトークライブを以下のとおり実施します。

「投資なんて全然わからない」という学生さんや、「そもそも学校で教わる機会がなかったので聞いてみたい」という一般の皆様もご参加いただけるWebセミナーとして開催します。「大学生のこのような活動を見てみたい」という教職員の皆さんや、「大学生の活動を覗いてみたい」という中高生の生徒の皆さんの参加も歓迎します!

【開催日時】2020/09/04 (金)18:30~20:00頃
【開催地】オンライン(Zoomオンライン)

【テーマ】JPXアカデミーオンライン講座【特別編】(Webトークライブ)学生投資連合USIC×藤野英人氏「教えて藤野さん!『投資で世の中は変えられる?』」
【ゲスト】
・レオス・キャピタルワークス株式会社 代表取締役会長兼社長・最高投資責任者(CIO)藤野 英人 氏
・学生投資連合USICの皆さん

【参加費】無料
【定員】LIVE中継500名(先着申込順)
 ※定員になり次第、締め切らせていただきます。
 ※事前に受講用URL をメールにてお送りいたします。
 ※開始時間になりましたらWebサイトよりアクセス(参加URLをメールでお送りします。)して、閲覧ください。

【お申込み】(外部サイトPeatixからのお申込みとなります。)
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【開催詳細】
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【問合せ先】
 金融リテラシーサポート部・JPXアカデミー事務局
 academy@jpx.co.jp

記事紹介「歴史的な視点で経済や市場を学ぶ」

弊社Webサイト「東証マネ部!」の記事を紹介いたします。

証券やデリバティブ商品を売買できる市場(しじょう)。
その仕組みができた背景や、経済にどのような役割を果たしているのか等について解説いたします。
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2020/08/15(土)公開

【第3回】永代供養(長期のお弔い)の費用は長期の運用で賄った?(前編)
【第3回】永代供養(長期のお弔い)の費用は長期の運用で賄った?(後編)