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TSE教育ホットライン

Vol.335 連載企画第六回「金融リテラシーと投資行動との間の因果関係②」

日本人の金融リテラシーと資産形成に関する国際比較に関する論点考察
第六回は「金融リテラシーと投資行動との間の因果関係②」です。


前回までは、各国の金融リテラシー水準とその国民の投資行動との比較としてよく挙げられる、金融資産全体におけるリスク性資産(株式や投資信託など)の割合比較を紹介しました。その上で、日米を比較すると、家計における金融資産の内訳の違いを金融リテラシー水準で説明するのは難しいのではないか、と申し上げました。

今回は、より多くの国をみながら、金融資産の内訳の違いと、金融リテラシー水準との関係性の有無について考えていきます。


具体的に、各国の家計における金融資産の内訳をみてみましょう。

イギリス  :(現金預金)23.9%(投資信託・株式・出資金)15.9%(保険)55.4%
アメリカ  :(現金預金)12.3%(投資信託・株式・出資金)47.5%(保険)32.5%
日本    :(現金預金)51.5%(投資信託・株式・出資金)16.5%(保険)24.5%
スウェーデン:(現金預金)13.8%(投資信託・株式・出資金)46.2%(保険)36.6%
ギリシャ  :(現金預金)60.9%(投資信託・株式・出資金)39.6%(保険) 3.8%
韓国    :(現金預金)43.1%(投資信託・株式・出資金)20.4%(保険)25.2%
イスラエル :(現金預金)21.0%(投資信託・株式・出資金)18.8%(保険)45.1%
ドイツ   :(現金預金)39.2%(投資信託・株式・出資金)21.7%(保険) 30.2%

各国の金融リテラシーと家計における現預金比率の関係を単純に比較すると、アメリカやスウェーデンから、金融リテラシーが高いと現金預金率は低くなるという仮説はいえるかもしれません。

しかしながら、ただ素直に、各国様々だというのが正しい見方だと思います。アメリカやスウェーデンの株式などへの投資比率の高さや、ギリシャや日本の現金預金率の高さを、金融リテラシー水準だけで説明するのは困難でしょう。このような家計における金融資産の内訳は、各国の経済制度や経済環境の背景があり、さらに、そういった背景を形作った歴史的な経緯の違いが大きいと考えるべきです。

例えば、日本は欧米に比べ、株式会社制度に関する歴史がかなり浅く、またイギリスとドイツでは、資本調達が銀行主体か市場主体かの違いがあります。このことから、日本人のリスク回避性向を、日本の文化や歴史的な背景と切り離し、単純に金融リテラシー教育の問題と言い切るのは難しいと思います。


次回は、金融リテラシーだけが原因でないというならば、日本の家計は、なぜこのような資産の振り分け方を選択(ポートフォリオ選択)するのか、という理由について考えていきたいと思います。


(金融リテラシーサポート部 石田 慈宏)

記事紹介「株価の仕組みはどう教える?」

東証が実施している、子どもたち向けの金融経済教育について、朝日新聞EduAに取り上げてもらいました。
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朝日新聞EduA
「株価の仕組みはどう教える? 子どもへの経済・金融教育のポイントは 東証に聞く」
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